- 2019年08月01日 16:46
【読書感想】ウイグル人に何が起きているのか 民族迫害の起源と現在
2/2 この本のなかで、1976年生まれのカザフスタン人、オムル・ベカリさんの証言が紹介されているのです。
オムルさんは、2017年3月から約8か月間、新疆ウイグル自治区カラマイ市郊外の農村にある「再教育施設」に収容されたのち、奇跡的に生還したのです。
尋問のあとは、洗脳だった。いわゆる「再教育施設」に収容され、獣のように鎖でつながれた状態で3ヵ月を過ごした。小さな採光窓があるだけの12平方メートルほどの狭い部屋に、約50人が詰め込まれた。
弁護士、教師といった知識人もいれば、15歳の少年も80歳の老人もいた。カザフ人やウズベク人、キルギス人もいたが、ほとんどがウイグル人。食事もトイレも就寝も”再教育”も、その狭く不衛生な部屋で行われた。
午前3時半に叩き起こされ、深夜零時過ぎまで、再教育という名の洗脳が行われる。早朝から1時間半にわたって革命歌を歌わされ、食事前には「党に感謝、国家に感謝、習近平主席に感謝」と大声でいわされた。
さらに、被収容者同士の批判や自己批判を強要される批判大会。「ウイグル人に生まれてすみません。ムスリムで不幸です」と反省させられ、「私の人生があるのは党のおかげ」「何から何まで党に与えられました」と繰り返す。
「『私はカザフ人でもウイグル人でもありません。党の下僕です』。そう何度も唱えさせられるのです。声が小さかったり、決められたスローガンを暗唱できなかったり、革命歌を間違えると真っ暗な独房に24時間入れられたり、鉄の拷問椅子に24時間鎖でつながれるなどの罰を受けました」と当時の恐怖を訴える。
さらに、得体の知れない薬物を飲むように強要された。オムルは実験薬だと思い、飲むふりだけをして捨てた。飲んだ者は、ひどい下痢をしたり昏倒したりした。食事に豚肉を混ぜられることもあった。食べないと拷問を受けた。そうした生活が8ヵ月続いた。115㎏あったオムルの体重は60㎏にまで減っていた。
「同じ部屋に収容されていた人のなかから毎週4、5人が呼び出されて、二度と戻ってきませんでした。代わりに新しい人たちが入ってきます。出て行った人たちはどうなったのか」
常時警官に見張られ、また被収容者同士も相互監視を強いられた。寝るときは、同じ部屋の3分の1の15人ほどが起きて、残りの被収容者の寝ている様子を監視させられた。拷問に慣れ、痛みも感じなくなり、このまま死ぬのだと、絶望していたという。
オムルさんはカザフスタンで旅行ビジネスの仕事をしていて、仕事で近くに来たついでにトルファンの実家に立ち寄ったところ、突然、武装警察がやってきたのだそうです。
この本には、厳しい監視のなかで、息をひそめるようにして生活しているウイグルの人たちの様子が描かれています。
彼らは、著者がお金を落としても、拾ってすぐに届けてくれる「善良な」人々です。
ただし、それは「少しでも疑われたり、当局の目に留まったりすれば、強制収容所行きになるので、品行方正にふるまうしかないから」でもあります。
この問題に対して、西欧諸国には批判の声も大きいのですが、中国側は「国内問題」として取り合わない、という状況が続いています。
なんのかんの言っても、「強い国」に介入したり、圧力をかけたりするのは難しいし、国連には中国の経済援助を受けている国は少なくありません。
ちなみに、これほどウイグル人への弾圧がひどくなったのは、2014年にウルムチ南駅で起きた爆破テロ事件が、習近平国家主席を狙ったものだったとみなされているからだと言われています。
自分が狙われたからといって、その民族全体にここまでのことをしなくても……と思うのですが、個人的な怨恨から、独裁的な権力を持った人が暴走するのは珍しいことではなさそうです。
条例(脱過激化条例)は、いかにももっともらしいことをいっているように聞こえるが、分かりやすくいえば、ムスリムであるウイグル人が普通に信仰の自由を行使して、ムスリムの習慣にのっとった結婚や葬儀や子供の教育を行ったり、豚肉を食べることを拒否したり、ベールを被ったり髭を蓄えたりすれば、過激化しているとのレッテルを貼られ、再教育施設送りになり、財産を没収される、ということだ。
大学や研究機関でイスラムの伝統文化、歴史を研究することも、ウイグル人同士で集まって暮らすことも、ウイグルの伝統にのっとって幼馴染や子供のころから決まっている許嫁との結婚もすべて条例違反と言いがかりをつけられるし、地元当局による漢族との共生結婚や、漢族居住地域への強制移住や出稼ぎ斡旋にも抵抗できない。
抵抗すれば条例違反になり、再教育施設送りになる、ということだ。
ウイグル人が本来もつ伝統、文化、習俗、歴史の全否定、ウイグル人の信仰、イデオロギー、価値観をすべて中国の特色ある社会主義核心価値観に塗り替えなければ、再教育を施されるということである。
読んでいると、なんでこんなことをするのか、と暗澹なる気持ちになるのです。
アメリカは、このウイグル問題について、中国を強く批判するようになってきました。
ただそれは、人権擁護というだけではなくて、この問題が経済的にライバルとみなすようになった中国を批判するための「武器」になりうる、という意図もありそうです。
とはいえ、そういう「外圧」がなければ、どうしようもない、それも、アメリカのような強国からの圧力でなければ、というのも事実なんですよね。
まずは、知ることから。
いまの日本に住んでいる僕にとっては、知ることの次の段階というのは、なかなか思いつかないのだけれども。
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