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いま何をすべきか

数日来、脱法ドラッグの話題が集中し、意見を求められることが続いているので、改めて、現時点での私の考えをまとめて書いておきます。

メディア関係者のなかには、「今こそ対策の切り札を投入すべき」という思いが強まっているようで、しきりに「対策強化」「包括規制」という言葉が飛び交っています。たしかに対策を強化すべきタイミングですが、でも、皆さんが期待する「切り札」は、今のところ、見つかっていないのだという点を見落としては、議論が空回りしてしまします。
いま、世界の先進国は押し並べて脱法ドラッグ問題に悩んでおり、各国では様々な対策がとられてきましたが、問題を一気に解決できた先例はなく、いまだに対策を模索し続けているのが現状です。

多くの方が期待を寄せている包括規制についても、これだけで問題が解決できる手段ではあり得ません。
英国は2009年に合成カンナビノイド類に対する大掛かりな包括規制を導入しました。当時把握されていた多数の合成カンナビノイドを6グループに分類し、その基本構造を持つ物質はすべて規制対象とするという徹底したやり方でした。しかし、この方法も間もなく破られてしまったのです。規制対象とした6グループのどれとも異なる、新タイプのものが続々登場し始めたのです。包括規制は、たしかに有力な手段だと思います。しかし、その効果は、新規薬物の登場にいくらか先手を打つことができるといったもので、新たに登場してくる薬物を監視し、指定対象に加えていく作業をとめるわけにはいきません。
また、販売店に対する規制を強化した例もあります。たとえばアイルランドでは、ヘッドショップで脱法ドラッグを供給することを徹底的に禁じる政策をとり、わずか半年ほどの間に店舗数は激減し、存続した少数の店舗では脱法ドラッグ類の販売をしなくなりました。ところが、国内に出回る脱法ドラッグは減らなかったのです。外国に籍を置く業者が、インターネット販売を強化してアイルランドの需要をカバーしてしまったといいます。業者のなかには、会社の所在地を外国に移してインターネット販売を始めたものもあるそうです。
アメリカでは、連邦レベルの規制に加えて、州ごとに規制策が講じられています。各州では、次々に出現する新規薬物に対して、規制対象に指定する作業が続けられ、包括的な規制策を採用する州も少なくありません。ところが、中毒管理センターへの通報は相変わらず続いており、バスソルト(いわゆるケミカル系ドラッグ)では増加ペースにいくらか歯止めがかかりましたが、脱法ハーブに関しては以前よりむしろ増加しています。

一気に問題を解決する手段はない・・・これを前提に対策を組み立てていくことが、いま求められているわけです。

そのなかで、目下の[短期目標]として、私が提唱するのは、

1、執行力の強化


現行の法令さえきちんと守られない現状を容認していては、今後、どのような制度を導入しても、机上の空論に終わっていまいます。店舗やインターネット上の販売業者に対し、繰り返して立入調査や指導を行うことが、すべての基本だと思います。

2、情報提供と啓発


厚労省は、脱法ドラッグの販売行為そのものが、薬事法が規定する無承認医薬品の販売にあたる違法行為であるとして、こうした商品を「違法ドラッグ」と呼んできました。ところが、現状では、指定薬物に指定されないものに関しては、一切の規制が及ばないという解釈がまかり通っています。脱法ドラッグとは何か、その危険はどこにあるのか、丁寧な情報提供や啓発が早急に求められます。

3、指定の前倒し


これまで、わが国で販売される脱法ドラッグは、たいてい欧米で人気を獲得した製品でした。その意味では、先行市場を分析し、危険性の高い新規薬物が出回ったら即座に指定の措置をとることができるわけです。
さらに、新規物質観測の国際ネットワークに参加するなど、欧米の情報を共有する手段を講じることも、検討されてよいでしょう。

[中・長期目標]
短期的な対策を展開しながら、同時に、包括指定を含めた、より効果的な規制策を検討していかなければなりません。
包括指定を導入するためには、いくつか技術的な課題もありますが、とかく後追いに終始してしまう対策を先手に切り替えるために、有効な策であることは間違いありません。

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