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介護せず親の年金を使い込む中年息子の身勝手 "ひきこもりのひとりっ子"が危ない

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親の介護にカネをかけず、自分のために使ってしまう

 具体的にはどのようなものなのでしょうか。Sさんはこう言います。

 「ほとんどがお金絡みの問題です。ひきこもりの人は無収入ですから、親御さんの蓄えや年金によって生きているわけです。親御さんが元気なうちは、その管理を親御さんがしていますが、要介護になって銀行に行けなくなったり認知症の症状が出たりということになれば、財布は息子の手に移る。そうなるとお金は親御さんの介護サービスにではなく、自分のために使う搾取が始まるわけです」

※写真はイメージです(写真=iStock.com/BBuilder)

 介護保険による介護サービスの利用者負担は現状では、原則1割。親御さんの要介護度や状態によって負担率は異なりますが、在宅介護にかかる費用は平均すると月額3万円前後といわれています。オムツ交換や生活援助のホームヘルパーに来てもらったり、昼食や入浴のサービスが受けられるデイサービスを利用したりして、そのサービス料が実質30万円かかったとしても負担は3万円で済むわけです。

 どんな介護サービスを受けられるかはケアマネジャーが決めます。利用者本人の心身の状態を見た上で、必要と思われるものを組み込んだケアプランを作成し、ご本人や家族(子)の了解を得てサービス提供が開始されます。しかし、ひきこもりの息子が介護する場合、こうした介護サービスに出費するより自分自身のために使いたいと思う人が少なくないのだそうです。Mさんが語ります。

 「たとえば入浴サービスです。要介護度が重くなって、自宅での入浴が難しくなった方も、1日おきぐらいには温かい湯に入って体を洗ってもらって、サッパリしたいと思うんです。それによってリラックスしたり血流が良くなったりすることで体の状態が好転する可能性もある。そこで、私たちケアマネは訪問入浴サービスやデイサービスを組んだプランを考えるわけですが、息子の方は、そんなことにお金を使いたくない。『親の体は自分が濡れタオルで拭くから、ケアプランから外してくれ』などと言って拒絶するんです」

 このように介護の専門家であるケアマネジャーが必要と考えたサービスをどんどん削っていく。受け入れるのは最低限の介護用ベッドのレンタル代だけ、というケースもあるそうです。

 「サービスを断る分、自分でケアをすれば問題はないのですが、とてもやっているとは思えない。体を拭くのはごくたまにという感じですし、オムツ交換もせいぜい1日に1回という人が多い。ほとんど介護放棄状態といっていい。親御さんは劣悪な状況に置かれているわけです」(Tさん)

「これまで散々面倒迷惑をかけた親に対する情はないのか」

 親の年金に頼る生活ですから出費は抑えたいという気もわからないではないですが、節約すれば介護サービスにまわすお金は捻出できるはずです。

 「でも、節約しているようにはとても見えません。たとえば食事。親御さんと自分の分を自炊すれば出費は抑えられるはずですが、そうした形跡は一切なく、コンビニの弁当とかを食べていますしね。また、最新のスマホを持っている人もいました。自分がしたいこと、欲しいものを優先して出費しているんです。そんな姿を見ていると、『これまで散々面倒迷惑をかけた親に対する情はないのか』と言いたくなりますよね」(Tさん)

※写真はイメージです(写真=iStock.com/stockstudioX)

 劣悪な状況に置かれた親御さんは、心身ともに弱っていきます。寿命も縮まるのではないでしょうか。子は年金を頼りに生活しているのですから、親子の情はともかく親御さんには長く生きてもらわなければ困るのは百も承知のはずです。ところが、日々衰えゆく親のことより自分のこと優先、という人ばかりだといいます。

 「我々ケアマネを悩ませるひきこもりの人には、そういう当たり前の判断力が欠落している人や、常識の通じない人が多いですね。目に余るケースの場合は、地域包括支援センターや行政など多方面から説得を試みますが、それも強制力はなく、改善されることが少ないのが実情です」(Tさん)

 以上の事例は、現場をよく知るケアマネジャーであるTさんら3人が実体験に基づき証言してくれたものですが、ひきこもりの人が介護の担い手になっている家庭の3割ほどが、似たような状況に陥っていると思うと暗澹たる気持ちになってしまいます。

 「8050問題」は介護の現場でもさまざまな悲劇を生んでいるのです。

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相沢 光一(あいざわ・こういち)
ライター
1956年生まれ。月刊誌を主に取材・執筆を行ってきた。得意とするジャンルはスポーツ全般、人物インタビュー、ビジネス。著書にアメリカンフットボールのマネジメントをテーマとした『勝利者』などがある。
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(写真=iStock.com)

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