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空き家対策が日本経済の国際競争力を向上させる理由 - 玉木潤一郎(経営者)

日本経済の国際的な競争力低下が懸念されている。日本の労働生産性は、2018年はG7(先進7カ国)で最下位、OECD加盟36カ国中でも21位に甘んじており、スイスのビジネススクールIMDによる63カ国を対象にした「世界競争力ランキング」でも30位の低位だ。

生産性ばかりか、少子高齢化でこれまで労働の主力だった生産年齢人口(15~64歳)そのものが今後の日本で減少していくのは明白である。生産性をあげると同時に少子化対策も無視できない。内閣府は「新たな少子化対策の推進」と銘打って働き方改革など出生率向上のための方策を打ち出しているが、今のところ少子化には歯止めがかかる兆しはほとんど無い。

しかし筆者は、いま地方で問題になっている空き家対策への取り組みが上手くいけば、出生率の向上にもつながるのではないかと考えている。

■地方行政が「わが街」に人を呼び込む施策

2015年に施行された「空家等対策の推進に関する特別措置法」(以下「空き家特措法」)では、地方行政が空き家への立ち入り調査をすることや、倒壊の恐れがある住宅を特定空き家に認定して、最終的には行政代執行による除却(解体して撤去すること)することも可能にしている。

空き家特措法は、特に地方ではよく誤解されがちだが、「わが街に人を呼び込んで空き家を利活用しよう!」というポジティブな法ではない。前述のように、管理されていない危険家屋などを行政が指導・勧告したり除却できるように定めているに過ぎない。

なぜなら国が問題にしているのは、実はある1種類の空き家のみであるからだ。

空き家は大きく4種に分けられており、
(1)二次的住宅(別荘など)
(2)賃貸用の住宅(貸アパートなど)
(3)売却用の住宅(売りに出しているもの)
(4)その他の住宅
がある。この中で国が問題にしている空き家は(4)のみである。

(1)~(3)の空き家は人が住んでいなくても何らかの形で管理されているため、倒壊や火災など目前の深刻な危険度は低い。そのため国はよりリスクの高い(4)の空き家を地方行政の判断で除却できるよう定めた。

しかし実際に地方行政が強制的に空き家を除却した事例は極めて少ない。放置されて倒壊の危険がある荒れ果てた空き家であっても、どこかに所有者はいる。定められた手順と協議を経たとしても、強引に解体すれば後々どのようなトラブルになるかわからない。そんなリスクを冒してまで除却に踏み切るのは行政として簡単なことではない。

その難度の高さから、おそらく今後も行政代執行による空き家の撤去はあまり増えない可能性が高い。

■地方における空き家対策

その反面、地方行政では空き家特措法の趣旨と関係なく、地域に人を呼び込んで空き家に住んでもらおうという地域活性化や移住促進などに前向きだ。なぜなら地方にとっては(1)~(3)の空き家増加も重大な問題であるからだ。

たとえば筆者の住む静岡県の空き家率は16.3%(H25)で、全国の空き家率13.5%を上回る。空き家が増えれば税収が減少するのは当然であり、経済に影響する。たとえば夕張市が破綻した2007年は空き家率が33%であったし、一般に地方行政の財政破綻は空き家率30%がデッドラインだとされる。

地方における空き家率は、危険家屋であるか否かを問わず自治体の財政破綻につながるバロメーターであるといえる。危険な住宅を除却すればそれでいいというものではないのだ。

具体的な取り組みとしては、都内に住む若い夫婦などに地域の特性をPRして移住を促すことで世帯数増をはかる。もちろん仕事が無ければ生活も成り立たないので、企業の誘致など働き先を確保する経済面での施策も必須となる。

■地方の取り組みがもたらす効果

だが、ここで一つ落とし穴がある。良く考えてみて欲しい。そもそも国内で人が移住すれば、国全体の空き家を減らすことにはつながらない。A県からB県に移住すれば、B県の空き家が減るかわりA県に空き家が1件増えるだけだ。

同様に、地方がそれぞれ人を呼び込むこんでも国全体のレベルでは経済の国際競争力向上につながることは無い。なぜなら世帯が移住したからといって労働力が増えるわけではないからだ。

しかし地方が人を呼ぶための施策は、出産や育児にダイレクトに寄与するものが多い。特に若い家族に対して地方住まいの良さや出産・育児の際のメリット、子育てに適した住環境や保育園の整備、そして税制の優遇などを打ち出している地域が見られる。つまり移住だけではダメだが、出産・子育て環境の充実による出生率向上まで改善されるなら期待が出来る。逆に言えばそこまでやらなければパイの奪い合いで疲弊するだけだ。

そして若い夫婦を呼び込もうというこの施策は、日本全体に波及する可能性がある。なぜなら隣の県が取り組んで人口が増えたのであれば、自分の県でもやってみようと考えてもおかしくないからだ。

大半の保育所や幼稚園、小中学校は県立や市立であり国立ではない。住環境に関わる都市計画や区画整理も地方自治体の裁量範囲が大きい。国がもたついている少子化対策は、国政よりも生活に近く小回りが利く地方の方が取り組みに適しており、効果も直接的だ。

出産・育児・就学への支援を地方市町が競うように発展させれば、極論すると国内のほとんどの地域が出産・子育てに適した街になり得る。そして空き家対策がそのムーブメントを起こすきっかけになり得るのではないか。なぜなら地方自治体が世帯数を増やしたいという動機と一致しているからだ。

今後地方における空き家対策への取り組みが拡大すれば、風が吹いて桶屋が儲かるように少子化問題解消に寄与する可能性を秘めている。そして生産年齢人口が増加すれば、生産性を向上させること以上に日本の国際経済競争力に影響すると筆者は考える。

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