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ディズニーの人魚姫役や『007』主役に黒人女性を抜擢し賛否 ― やりすぎ?それとも必要?

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共同通信社/Getty Images

人魚役に黒人起用で「ディズニーを台無しにした」

文学作品やコミック、テレビ番組、ミュージシャンの人生などが映画化される時、「イメージにぴったり」と思えるときは意外と少なそうだが、最近、米英の映画の中の意外な配役が大きな話題となった。

7月上旬、デンマークの児童作家アンデルセンの童話「人魚姫」をディズニー映画が「リトル・マーメイド」として実写映画化することになり、主人公アリエル役にアフリカ系アメリカ人の米歌手ハリー・ベイリー(19歳)を起用した。

ベイリーは2018年のグラミー賞の最優秀新人賞にノミネートされたデュオ、クロイ&ハリーの一人。

「リトル・マーメイド」はすでに同じくディズニーの手によってアニメ映画化(1989年)されており、この中でアリエルは赤い髪、白い肌、青い目の白人として登場する。

実写での黒人女優の起用に、ツイッターではファンが不満を表明した。「ディズニーを台無しにした」、「アリエルに全然似ていない」、「(人種の)多様性を達成したいなら、別の新しい映画を作ればいい」など。

新「007」に英黒人女優を大抜擢

数日後、今度は、架空の英スパイ、ジェームズ・ボンドが活躍する「007」シリーズ最新作「BOND25」に黒人女優ラシャーナ・リンチ(31歳)が抜擢されたと報道された。ボンドのコードネーム「007」を引き継ぐという。

Getty Images

当初の報道では、リンチが「新ボンドになる」というニュアンスで広がったため、セクハラや性的犯罪に声を上げる女性運動「♯MeToo」がここまできたのかと多くの人を驚かせた。著名映画の主人公の性まで変えてしまうとは、しかも、これまでは白人であったのに、今度は黒人になってしまうとは、と。「政治的公正(political correctness)」を実践するために、ここまでする必要はあるのか、という声も出た。

以前に007シリーズに出演したことがある米黒人女優トリーナ・パークスは、イギリスの左派系大衆紙「デイリー・ミラー」の取材の中で、原作者のイアン・フレミングは「ボンドを男性として書いた。女性ではない」と指摘した。

黒人女性が主役を演じることの効果は?

「リトル・マーメイド」の監督ロブ・マーシャルは、アリエル役の女優を選ぶのに苦労したという。しかし、ベイリーの歌声や若さ、純粋さ、誠実さなどが「アリエルに最適」と最終判断を下した。

一方、自分自身が赤毛であることでいじめを受けてきたという英ジャーナリストのソフィー・ウィルキンソンさんは、黒人女性たちが「ヘイト犯罪や社会の不平等による困難」の標的になりやすい、と指摘する(左派系高級紙「ガーディアン」、7月5日付)。

「教育現場では脇に追いやられ、雇用を拒絶され、雇用されても賃金は他の人種あるいは男性よりも低い」。また、フィクションの世界でも「怒っているか、生意気な人物かの両極端で描かれる」。

黒人女優がアリエルを演じたからといって、こうしたさまざまな問題が解決できるわけではないが、「映画館のスクリーンで自分に似た姿を目にすることで、自信をつけられる。社会全体にとっても、良いことだと思う」。

「黒人女性のボンド」は誤解が広がることを想定しての話題作りか

ボンド映画への英女優リンチの起用は、よく聞いてみると、「新007役として登場する」のであって、「ボンドを女性に変えた」わけではなかった。

最新作「BOND25」ではボンドは退職しており、ジャマイカで気楽な生活を送っている。新007となったリンチがボンドの助けを求め、事件を解決してゆく流れになる見込みだ。

主人公を演じるダニエル・クレイグ(51歳)は、次作が「最後のボンド役」と言っているため、クレイグがその後出なくなるのはほぼ確実だが、リンチが「ちょい役」で消えてしまい、次の次の作品ではもう姿を現さなくなるのか、あるいはいよいよ「新しい主人公」になっていくのか、現時点では不明だ。

ただ、ボンド映画のプロデューサーであるバーブラ・ブロッコリーが昨年、英ガーディアン紙のインタビューの中で、「ボンドは男性」、「男性として描かれているし、おそらく、これからの映画でも男性だ」と述べている。「男性の登場人物を女性に変える必要はない」とも。

もしブロッコリーの言うことが今でも本当なら、リンチが「ボンド役を取ってしまう」のではなく、単に「新007として、黒人女性が配役された」ということであり、誤解が広がることを想定しての話題作りだったような気が少しする。ヒットさせたい番組や映画の前宣伝として、主演男女の俳優が「恋仲にある」と言う噂をわざと広める、といった類の話である。

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