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「地方創生」では日本の人口減少を食い止めることはできない - 第94回今井照氏(後編)

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弱くなった「地縁」を複数のつながりで補う

みんなの介護 『地方自治講義』(ちくま新書)で今井さんは、日本は近代化することで生産力を高めたけれども、その代償として地域コミュニティが弱まってしまったことを指摘しています。そのことについて、どうお考えですか?

今井 国の政策はしばしば間違うことがありますが、近代化という流れに抗することはできないでしょう。何よりも個人が大事というのが近代化の成果です。人権の考え方も個人の尊重に基づいています。

したがって、近代化によって暮らすところと働くところが分かれ、個人と地域とのつながり、すなわち「地縁」が薄れたことそのものは、決して悪いことではありません。高度経済成長期には、薄れた「地縁」の代替として、企業との「社縁」がその役割を果たしてきましたが、今はその企業もそれを支える余裕がなくなってきている。

みんなの介護 しかし、近代化する以前の社会に逆戻りして「地縁」を取り戻すのは不可能ではないでしょうか。

今井 ええ、そうですよね。

ただ「地縁」の問題として、最低限、備えておかなければならないのは、防災と福祉に関すること、すなわち災害救助や生活支援といった機能をどうするかということです。

町会や自治会といった地縁団体を強化して、その役割を担わせると良いと考える人もいますが、すべてを負わせるなんて無理な話です。大事なのは、それぞれの個人が大小さまざまな「地縁」を持つこと。

例えば、小学校や中学校のPTA(パパ友、ママ友)は緩やかな地縁の典型です。その他、JA(農協)とか、JC(青年会議所)とか、生協とか、バレーボールやテニスなどの趣味でのつながりでもいい。

そうした大小、さまざまな「地縁」を持つことで、いざというときの自分たちの生活を支え合う。網の目からこぼれる人をできるだけ少なくする。それがこれからの地域コミュニティのあるべきイメージです。

しかしどうしても網の目からこぼれる人はいる。自治体の出番はここにあります。「公共私のベストミックス」という甘い言葉がありますが、欺瞞と紙一重です。最後の最後には自治体という政府が責任をもってやらなくてはならない。それが本当のセーフティネットです。ちょうど原発避難の時に双葉郡の市町村が前面に出たように、です。

しかし残念ながら、ほとんどの大都市は双葉郡の市町村のようには行動できないでしょう。特に市町村合併によって広域化や大規模化した自治体では、こぼれていく人がいることさえ気づけないケースもあると思います。東日本大震災でも合併して周縁化した地域では多くの人たちが長期間孤立しました。

高齢者は未来永劫増えていくわけではない

みんなの介護 現在、政府は社会の高齢化に備えて医療・介護・予防・住まい・生活支援を一体的に提供するための「地域包括ケアシステム」の構築を全国的に進めていますが、これについてはどう評価していますか?

今井 要介護状態になっても、住み慣れた地域で自分らしい暮らしを、人生の最後まで続けられるまちづくりをするという理念は素晴らしいことだと思います。

ただ、これも国が在宅介護偏重の制度化をしてしまうと、施設介護の必要な人たちが厳しい環境に置かれてしまいます。地域の特性や個々の環境に合わせて柔軟に運用できる制度にしておくことは、大前提の条件です。

みんなの介護 一律の制度をすべての地域に当てはめようとすれば、「地方創生」と同様の失敗例を生んでしまうわけですね。

今井 都心には50階程度のタワーマンションが林立した地域があります。これらは、同じ世代の人たちがいっせいに移動してきたために、30年後、50年後には一人暮らしで年金生活をしている高齢者の集合住宅群になるでしょう。

その一方、地方には自分で食べる野菜は自分で作れるという高齢者がたくさんいる。同じ80歳であっても地域や個々の暮らしによって、まったく中身が異なります。

みんなの介護 この先、ますます高齢化が進む日本の将来について、今井さんはどうお考えですか?

今井 高齢者の絶対数が増えれば、介護サービスの量を増やしていく政策が必要ですが、高齢者が未来永劫、増え続けるわけではありません。

現に人口減少が著しい市町村では、高齢者の人口も減少し始めている地域もあります。全国的には、もうしばらく高齢者は増え続けますが、2025年から2030年あたりでピークアウトしていく。

つまり、高齢者の増加にともなう備えは、全国規模であってもあと10年を見据えればいいということです。過度に悲観する必要はなく、その地域、その時代に合わせた政策を実行していけば、国が言うほど日本の未来に危機が迫っているわけではないと思います。

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