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男も女も首をかしげる残念な女性活躍とは

男性からは「女性だけずるい」と不公平感が噴出し、同じ女性からも不満が出るような女性活躍の施策は、どこが間違っているのでしょうか。組織と人事の専門家である立教大学教授の中原淳先生が解説します。

※写真はイメージです(写真=iStock.com/miya227)

「女性を優遇しすぎだ」の声

 時代の流れに応じて企業が女性活躍推進に力を入れても、もうひとつ女性社員の士気が上がらない、それどころか女性社員のやる気が落ちるといった現象が起きています。また、男性から「女性を優遇し過ぎだ」と不満が出たり、ワーママの仕事が独身女性に回されて女性同士がギスギスしたりで、職場の雰囲気が悪くなっているという話もよく聞きます。

 これは上司や企業が女性を“十把一絡げ”にしてアプローチしているために、「自分のケースには当てはまらない」としらけムードが生まれたり、活躍推進策がなぜ必要かの説明が十分なされていないため男女間あるいは女性同士が分断されたりしてしまっているのです。

「よかれ」が「裏目に」出てしまうとき

 一口に女性と言っても、「結婚している人と、していない人」「子どものいる人と、いない人」「ダンナさんが家事・育児をしてくれる人と、してくれない人」といった具合に、一人ひとりが置かれた環境がまったく違います。人はみな、それぞれの人生を個別に生きています。人によって、どのくらい長く働きたいのか、そもそもリーダーになりたいのか、など考えが違います。また置かれている環境によって、その人が望む働き方には多様性が出てくるのです。

 それなのに「今の時代、女性は活躍したがっているだろう」、あるいは「子どもがいる女性は早く帰宅したいのだろう」と女性を一つのカテゴリーで捉えて決め付けるから、女性の希望とミスマッチを起こしてしまうのです。カテゴリーやステレオタイプで物事を判断し、情報処理を簡便に行っていくことは、人間の認知の性質なのでやむを得ないところもあるのですが、「よかれ」と思ってやったことが「裏目」にでることもあるから注意が必要です。

 とりわけ、自分とは違う性に対しては注意が必要です。男性の場合なら「女性はこう考えるに違いない」という無意識の偏見(アンコンシャス・バイアス)にからめとられていることも多々あります。一方、女性の場合でも「最近の男性は……に違いない」と考えます。場合によっては、それが相手の望みに合致するとは限りません。

「女性だから」のピントのズレた施策

 実際は、ワーママでもパートナーが家事・育児に主体的なのでバリバリ働ける人もいれば、独身女性でも習い事をしていて残業をしたくない人もいます。「女性だから」という単一のカテゴリーで女性活躍を考えるのではなく、一人ひとり環境が違うことを前提に、それぞれが活躍できる仕事の与え方や支援策を考えなければいけません。ということは、これからの仕事現場では、現場の高いマネジャー力、現場のマネジメント力がどうしても必要になってくるのです。

 女性を十把一絡げに考えて打った“勘違い施策”を一つ挙げてみましょう。舞台は女性が数多く活躍する、ある会社です。

 この会社では、女性社員の中に「肌が荒れやすい」と話す人がいたので、女性社員に「女性活躍推進」の一環として、「美肌に効く」という「サプリメント」を配ったそうです。ところが男性社員からは「なぜ女性だけ?」と反発され、女性社員からも「女性はなぜ美肌でいなければならないのか」として違和感を唱える人も出てきたようです。結局、大きな分断やしらけを生み出し、この施策はすぐに取りやめになってしまいました。サプリを配ることを考えた人は女性社員を応援するために、「よかれ」と思ったのでしょうが、ピントのズレた施策になってしまいました。

 両立支援も同じで、なぜ、その施策を打つのかをきちんと説明できなければ、「なぜ子どものいる女性だけ」と思われるでしょう。

男性中心の組織はもう無理

 最近は女性だけでなく男性の働き方も多様になっています。共働きが当たり前の今日、家事・育児を担う男性が増えていますし、高齢化社会で親の介護と両立しなければならない男性もいます。上司に命令されたらいくらでも残業し、会社の言うままに転勤する男性中心の組織はもう無理になっています。

 現在は、「女性だからこの働き方」「男性だからこの働き方」という時代から、人材の多様性を受け止め、一人ひとりの環境や希望を前提とした個別の人事管理へ移行する過渡期だと思います。そうしないと今後、人材の確保が難しくなりますし、優秀な社員に残ってもらうこともできないでしょう。

「緊張」と「安全」で女性活躍を

 女性活躍では「二項対立」に陥ることにも気を付けなければなりません。つまり女性の仕事の「負荷を減らす」か「ストレッチする」かの「二項対立」で考えることです。

 たとえば、子どもが生まれたら時短を望むのだから、残業が発生するような仕事からは外してあげようと考えることです。これは女性に対して安全策をとったつもりかもしれません。でも、当人はそれを望んでいないかもしれませんし、旦那さんが育児・家事ができる人で、かなり働ける状況にある可能性もあります。安全策に偏ると、仕事内容が限定的になり昇進できないキャリアコースに固定されてしまうマミートラックを生み出す原因ともなります。

 逆に、その女性社員のキャリアアップのためにストレッチした仕事を与えようとしても、「私は子育てに専念したい。ストレッチは希望していない」と思う女性もいます。結局、個別具体的に、一人ひとりと向き合い、マネジメントを行う他はないのです。

 女性活躍は「緊張」と「セーフティネット」の両方があって成立します。緊張だけを強いる、あるいは安全だけを確保する支援はうまくいきません。

 バンジージャンプを例に取れば分かると思います。高いところから跳ぶ緊張感があるから挑戦するかいがあります。その一方でちゃんと命綱が付いていて、しかも見守ってくれる人がいるという安全面が確保されているからバンジージャンプが楽しいのです。

 女性活躍は別段、ゆるい仲良し職場を作るのが目的ではありません。働きたい人は思いっきりストレッチして頑張れて、それでいて心的安全は確保されている環境を作ることが本筋です。緊張か安心かのように「A or B」の二項対立ではなく、「A and B」で考えなければいけません。

経営は二項対立で考えた時点でアウト

 両立支援でも、「仕事か育児か」と二項対立させるのではなく、「仕事も育児も」と両方の価値を認めることが重要です。

 経営は二項対立で考えた時点でアウトです。たとえば「新規事業か、既存事業か」、どちらを重視するかという議論がよくあります。しかし「or」で考えるとどちらもうまくいきません。新規事業を成功させようと思えば、既存事業の経験を生かさなければいけませんし、顧客リストを引き継ぐ必要があるでしょう。

 仕事と育児もそれぞれの経験を生かし合うことができます。夫婦で「どういう子どもに育てたいか」という目標を立て、声を掛け合って2人がチームとなって育児を進めていく。毎日の家事・育児で常にプライオリティを考えながら動く。こんなところは仕事の進め方と同じです。ワークとライフはお互いにエンリッチメントし合える。そういう考えで両立支援をするべきだと思います。

(構成=Top Communication 写真=iStock.com )

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