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若年性認知症の人の社会参加に対する考察 - 三澤多真子(医療法人社団公懌会 小金井メディカルクリニック 理事長)

1.若年性認知症とは

高齢化の進展に伴い認知症の人は増加している。2025年には65歳以上の5人に一人、約700万人が認知症になると予測されており、予備軍を含めると4人に一人である。

一般的に高齢者が罹患すると思われている認知症であるが、若年でも発症することがあることはご存じだろうか。65歳未満で認知症を発症した場合を若年性認知症という。

2009年の厚労省の全国調査(「若年性認知症の実態と対応の基盤整備に関する研究総合研究報告書」)によると、全国の若年性認知症の推計値は37,800人。18歳~64歳人口における人口10万人あたりの若年性認知症者数は男性57.8人、女性36.7人、平均47.6人。医療に結びついていないケースや正しく診断されていない事例もあり、実際はもっと多いと考えられる。推定発症年齢は男性51.1±9.8歳、女性51.6±9.6歳、平均51.3±9.8歳。50歳代での発症が多いが、10~40歳代での発症もある。(図1)

(図1)

最初の症状は、もの忘れが最も多いが、行動の変化、性格の変化、言語障害などで気づかれることもあり多様である。(図2)

(図2)

行動の変化や性格の変化等の場合、精神疾患と誤診されることがあり注意が必要である。

原因疾患は頻度の多い順に、血管性認知症、アルツハイマー病、頭部外傷後遺症、前頭側頭型認知症、アルコール性認知症、レビー小体型認知症、その他となっている。(図3)

(図3)

アルツハイマー病では進行を遅らせる薬が国内で4種類承認されているが、根本的な治療は現時点ではない。その他の原因疾患も根本治療がないものがほとんどである。

2.若年性認知症特有の問題

若年性認知症では、下記のような若年・働き盛りならではの問題がある。

(1)障害が理解されにくい

①認知症は高齢者がなるものと思われている。

②見た目でわからない。

③認知症になったら何もわからなくなるという偏見がある。

(2)家族関係に大きな影響がでる

①夫婦、親子関係の変化。

②家族の不安・葛藤。

(3)経済問題

①会社を退職・解雇されることも多い。

②医療介護費用の増加。

(4)支援のための適切な社会資源が無い

①診断・告知前後から症状が中等度になるまでの間、本人をサポートする制度がない。=「空白の期間」の存在。

若年性認知症と診断された際に利用できる制度としては、自立支援医療(精神通院医療)、精神障害者保健福祉手帳、身体障害者手帳、障害年金(精神の障害)、障害者自立支援法(精神障害)、介護保険(初老期における認知症)がある。

相談窓口としては、東京都若年性認知症総合支援センター、東京都多摩若年性認知症総合支援センター、若年性認知症コールセンター、若年認知症サポートセンター、若年性認知症家族会、若年性認知症カフェ等がある。

しかし、上記(4)に記載したように、初期から中等度の間に、本人がいきいきと活動したり、能力を十分に発揮できるような場がほとんどないのが現状である。

体力もあり、社会に現役でかかわっているという意識のある若年層は、高齢者のデイサービスにはなじまないことも多い。仕事やボランティアなど社会活動を取り入れることが重要である。その点を意識して対応するデイサービスや、若年性認知症に特化したデイサービスもできはじめてはいる。しかしまだまだ数が少なく需要に追いついていない。

3.本人達の声

近年、認知症の本人やそのご家族からの発信も徐々に増えてきている。

2014年には認知症の本人・家族を主体とした日本認知症ワーキンググループが発足し、2017年には一般社団法人日本認知症本人ワーキンググループ(JDWG)へと発展した。国の認知症施策にも意見を求められるなど、積極的な活動を続けている。JDWGは「認知症とともに生きる希望宣言」を出している(図4)。

(図4)

希望宣言には「私たち抜きに私たちの事を決めないで!」「先回りしてできることを奪わないで!」という本人達の切実な思いが詰まっている。これは年齢や進行期によらず普遍的なものである。医療・介護福祉関係者はともすれば本人抜きで家族と相談して決める、できないと決めつけあるいはこちらでやったほうが早いのでやってあげる、という方向にいきがちである。主体性をもって、できることは自分でして、楽しく生きることが進行予防にも繋がる。

4.若年性認知症の人たちが社会参加できる場作りを

認知症になったら何もわからなくなる、というのは誤解である。若年性認知症の人は、適切な環境で目標をもっていきいきと生活することで、状態が安定し、介護者の負担も軽減される。次のようなことは、すぐには困難ではあるが、検討されるべき課題であろう。

(1)就業中であれば配置換えや部署転換でなるべく長く就労できる環境を作る。

(2)ボランティア活動する場や若年性認知症に対応できるデイサービスを増やす。

(3)地域での理解を深め買い物や外食など利用しやすい工夫をするなど、いきいきと社会参加できる場を増やしていく。

望ましい環境作りのためには本人家族を含めた多職種連携と地域への啓蒙がかかせない。

私達は、A.現在認知症である、B.これから認知症になる、C.認知症になる前に亡くなるかのいずれかである。支援する側、される側ではなく、自分たちも当事者として同じ立場で考えてほしい。そして認知症になっても住みやすい社会を一緒に作っていっていただきたいと切に願う。

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三澤多真子(医療法人社団公懌会 小金井メディカルクリニック 理事長)

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