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なぜオッサンは会議用途で炭酸を買うのか

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■オッサンのセレクションに若者は……

ご覧のとおり、明らかに私のセレクションが他の3人と比べて異質というか、一見、むちゃくちゃである。いまやIT業界、ウェブメディア業界の会議の中心は20~30代の若手のため、私のセレクションは彼らから「おっ、おぉ……」的な、リアクションに窮する扱いを受けた。

だが、これが自分にとっては「みんなが満足するかな♪」というコンセプトに基づいた、納得のセレクションだったのである。強いていえば「20代男性その1」のセレクションが系統的に近いかもしれない。ただ、紅茶は無糖しか選んでおらず、炭酸飲料が1本も含まれていないあたり、オッサンからすると「惜しい!」という印象である。

■「世代間の断絶」はあらゆるところで生じる

この手の「世代間断絶」は、ほんのささいな局面、さまつな事柄であっても、必ずと言っていいほど発生する。単に「打ち合わせ時の飲みものを選ぶ」だけでも、ここまで明確な差が浮かび上がってくるほどなのだから。そりゃ新入社員に対して「キミの歓迎会を開くから、参加してね」などと誘っても、「その時間は残業代がつくのですか?」なんて返されてしまうワケだ。

※写真はイメージです(写真=iStock.com/monzenmachi)

「一億総活躍社会」をうたう政府は、年金財政の破綻を先送りすべく、「75歳定年制」も視野に入れている……といった報道も散見される。だが、そのような取り組みは、本当に個々の労働者を幸せにするのだろうか。20代の労働者と70代の労働者がいきなり同じ職場に放り込まれたとしたら、果たしてうまく機能するものなのかどうか。

世代間の考え方の違い、価値観の違いというものは、たかだか10~20年差であっても如実に表れる。たとえば、われわれ40代は子どものころ、親から「歯医者に行ったら、あとでジュースを買ってあげるから!」などと、イヤなことをさせるときの「エサ」としてジュースを提示されたりすることがよくあった。それだけ、ジュースが特別なもの、なかなか飲ませてもらえないものだったのである。

■40代以上にとってジュースは「特別な存在」

思い返してみると、小中学校のころは友人と何かで「賭け」をするとなった場合に「それじゃあ、ジュース1本賭けようぜ!」となることが多かった。また夏休み期間中、部活の練習が終わるころに「よ~し、みんなよく頑張っているから、今日は特別だぞ!」なんて調子で、顧問の教師がよく冷えた缶ジュースを用意してくれることがあった。

そこにはファンタ、スプライト、キリンレモン、メローイエロー、コカ・コーラ、こつぶ(つぶつぶ入りみかんジュース)、三ツ矢サイダー、マウンテンデューなどが取りそろえられ、われわれは狂喜乱舞しながら飲み干したものだ。何しろ部活における日常的な飲みものといえば、上に向けた蛇口から直接飲む水道水だったのだから。1シーズンに一度くらいしか体験できない“顧問がごちそうしてくれる、部活終わりの缶ジュース”は、いまでもキラキラと輝く、大切な夏の思い出となっている。

そんな、夢のような味わいだった炭酸飲料の記憶は、オッサン、オバサンになった今でも鮮明に残っているので、40代以上の人間が「水なんかをわざわざ買う理由がわからない」「せっかくお金を出すのだから、ジュースやコーヒーがいい」という発想になるのも致し方ないだろう。実際、私は完全にそういう発想の持ち主である。若者たちから「ケチくさい」「考え方が昭和」などと揶揄されたとしても、一度染みついてしまった飲みものに対する価値観や概念は、そう簡単には変わらない。

少し脱線するかもしれないが「ビールには、いくらでもカネを払っていい」「うまいビールを飲むためなら、どんな我慢も厭(いと)わない」という私の考え方は、多くの若者にとっては理解のできないこと、どうでもいいことだったりするだろう。「身体には決してよくないものなのに、どうしてそこまでこだわりが持てるのか」「なぜそこまでお金をかけるのか」とあきれているかもしれない。ただ、そもそも寄って立つ概念が根本的に違うので、相いれなくても仕方のないことだといえる。

■20代と70代が一緒に働く職場の違和感

要するに「一億総活躍社会」「75歳定年制」とは、本来は職場で交わることのなかった(交わるべきではなかった)ような、世代の大きく異なる者どうしが接点を持つようになる、ということなのだ。50歳も年の離れた「現場の老兵」と「ピチピチの新人」が、なんの違和感も抱かずに一緒に仕事ができるのだろうか。

たとえば職人の世界であれば、年長者が若者に技術や経験を伝承するという意味でアリだろう。だが、ホワイトカラーの事務職の場合、かみ合わないことのほうが多いだろうと想像できる。

それこそ現在の45歳と25歳でも、こんなに常識や感覚が違うのだ。言うまでもないが、前者が45歳で、後者が25歳である。

・「文字ベースの連絡はメールが基本」vs.「連絡はLINEやSlackが基本」

・「電話がかかってきたらすぐに出ろ」vs.「電話は人の時間を一方的かつ暴力的に奪うクソツール」

・「社内で尊敬できる先輩を見つけ、信じて付いていけ」vs.「尊敬できる人は社外にもたくさんいるから、幅広く交流して複数のメンターを持ちたい」

・「SNSで仕事関連の情報を発信するな」vs.「SNSで仕事関連の情報を上手に拡散することこそ顧客のためになり、ビジネスの成長にもつながる」

・「結婚は早くしたほうがいい」vs.「結婚するかしないかはそのときの状況次第。無理してまでするものではない」

・「たとえ本意ではなくても、上司から言われたことなら全部やれ」vs.「自分の『正義』や『信念』を大事にしたい。納得できなければ上司の指示は聞かない」

・「なんで名刺を切らすんだ! 名刺交換は人間関係の基本だぞ」vs.「名刺なんてオワコン。SNSがあればいくらでも他者と関係構築できる」

■世代間の軋轢が深まる可能性

このような調子で、20歳程度の年齢差でもさまざまな「断絶」が発生するのだ。これが30歳差、40歳差、そして50歳差になると、どこまで話が通じなくなってしまうのだろうか。

「一億総活躍社会」「75歳定年制」などと政府主導で旗振りするのは結構だが、ビジネスの現場においてはこれまで以上に、世代が違うことによるコミュニケーション作法のズレ、仕事上の常識のギャップが生じる可能性がある。これを埋めていくような方策をシビアに考えていかなければならないだろう。

然るべき準備をしておかなければ、今後、間違いなく世代間の対立や軋轢(あつれき)が深まっていく。

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【まとめ】今回の「俺がもっとも言いたいこと」

・「一億総活躍社会」「75歳定年制」など、高齢者が長く働き続けることを前提にした社会を実現したいなら、職場で世代の離れた者どうしが感じるコミュニケーションギャップ、常識のズレについても皆が意識を向け、方策をシビアに検討するべきだ。

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(ネットニュース編集者/PRプランナー 中川 淳一郎 写真=iStock.com)

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