- 2019年07月30日 06:15
なぜオッサンは会議用途で炭酸を買うのか
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■「ペットボトル入りの水」を巡る世代間の断絶
打ち合わせや会議などをおこなう際、その場でもっとも年齢の低い若手がペットボトル入りの飲料を人数分買ってくる姿は、ビジネスにおける定番の風景のひとつだろう。
だが、こうした場面で「どんな飲みものを買ってくるか」が原因の“世代間断絶”が発生している、という声を耳にした。
50代の男性カメラマンが、取材先でこうぼやいていたのだ。
「撮影の合間、アシスタント(20代)に人数分(10人弱)のドリンクを買いに行かせたら、ミネラルウォーターばかり買ってきたんです。なぜ、水にお金を払わなくちゃいけないのか……。せっかく買うのだから、コーヒーやジュースを買ってきたらいいのに。信じられないです」
■なぜ、わざわざお金を払ってまで水を飲むのか
このエピソードを40~50代の人々にも話したところ、「あるある!」という意見が続出した。
「確かにウチの若手も、コンビニに行って『なんでも好きな飲み物を買っていいよ』というと水を選びます」(40代男性)
「『打ち合わせ用の飲みものを用意して』とお金を渡したら、2リットル入りの水1本と紙コップを買ってきたんです。コーヒーやお茶、ジュースなどいろいろな飲みものを何本か見繕ってくるのが当たり前の感覚だと思っていたので、一瞬、絶句してしまいました」(40代男性)
また、50代の女性社長は「私が若者に『何か飲みものを買ってきて』と頼んだときに水を買ってきたら、ムカっとします」と苦笑したあと、さらにこう続けた。
「若者と一緒に喫茶店に入ったりすると、彼らが烏龍茶や麦茶など自宅でも簡単につくれるような品を頼んだりする。これも、なんだかイヤですね。私がお金を払うのだから、イチゴジュースとかクリームソーダといった、家ではなかなか飲めないようなものを頼んでほしい」
一方、若者からは水を買ってくることに否定的な中高年に対して「むしろ私たちのほうが信じられないです」といった声が数多くあがった。
「だって、水がいちばん無難で、おいしいですよね? いざというときには薬も飲めるし、なんなら手も洗うことだってできるので、汎用性も高い。ペットボトルの水をバッグに一本入れていたら本当に心強いです」(30代女性)
「品物を具体的に指定されず、ただ『人数分の飲みものを買ってきて』ということならぜんぶ水にします。いちばん好き嫌いがなくて間違いなさそうだし、買うときも迷わないし」(20代女性)
■せっかく飲みものを買うなら「タダでも飲める水」以外のもので
家庭用ミネラルウォーターの先駆け的存在は、1983年発売の「六甲のおいしい水」(ハウス食品/当時)である。1973年生まれの私も10歳のときに「なんで水道の蛇口をひねればいくらでも水が出てくるのに、わざわざ買うの?」と思っていた。もちろん、水道水よりもおいしい水であろうことは想像できたのだが、「せっかくお金を払うのだから、自宅では獲得できないものを買うほうが得だ」という意識が強かった。
当時は「スコール」や「カルピスソーダ」「ファンタ」を好んで飲んでいたが、今は次のような感じで優先順位をつけている。
コカ・コーラ・ゼロ(を含むゼロカロリー炭酸飲料)>>>>>>三ツ矢サイダー(などの砂糖入り炭酸飲料>>トロピカーナなど果汁100%ジュース>>スポーツドリンク>缶コーヒー>爽健美茶や十六茶といったブレンド系のお茶>烏龍茶>緑茶>>>>>水
ご覧のとおり、オッサンになったいまでも、水は最下位なのである。要するに「家で再現するのが難しい順番」になっているのである。
■ペットボトルの水を飲むのは「必要に迫られたとき」だけ
現在、ペットボトル入りの水(ミネラルウォーター/ナチュラルミネラルウォーター含む)は完全に市民権を得ているものの、私個人でいえば、10歳の頃に「なんでジュースと同じ金額を払って、わざわざ水を買うの?」と思って以来、いまだに買うことはほぼない。
中学、高校の頃はアメリカに住んでいたのだが、なにしろ355ミリリットルの缶入り炭酸飲料が1本35円くらいだったのである。そのため、ダイエット・コーク、ダイエット・ペプシ、ダイエット・スプライト、ダイエット・7up、フレスカ(シトラス風味のゼロカロリー炭酸飲料)ばかり飲んでおり、ボトル入りの水は一切飲まなかった。いまはビール偏愛主義者のため、飲食店で入店直後に“お冷や”が出ても一切口をつけず、程なく運ばれてくるビールを最良の状態で味わおうとする。
とはいえ、私もペットボトルの水を飲むことが年に30回ほどある。たとえば、講演など人前でしゃべるような場面では、ペットボトル入りのミネラルウォーターが主催者から提供されることも多い。さすがに、その水はありがたく頂戴する。もっとも私がこれを口にするのは、あくまでも2時間ほどしゃべり続けるため、どうしても途中で喉を潤す必要があるからに他ならない。あえて言わせてもらえば「しゃべるために飲んでいる」だけなのだ。もしも水のほかにコカ・コーラ・ゼロや三ツ矢サイダーW(ゼロカロリーのトクホ飲料)などが用意されていたら、おそらくそれらを選ぶだろう。
■若者とオッサンが「打ち合わせ用の飲みもの」を選んだら
そんな「お金を払ってまでペットボトルの水を飲もうとは思わない」私と、イマドキの若者たちの感覚がどのくらい違うものなのか。がぜん興味が湧いてきたので、ちょっとした実験をおこなうことにした。3人の若者と私が「参加者6人の打ち合わせで、飲みもの担当になったら」という設定で、実際に飲料を買ってみたのだ。
その結果を見てみよう。
20代女性→お~いお茶×2、健康ミネラルむぎ茶、烏龍茶、南アルプスの天然水、クラフト ボス ブラック

【購入理由】
・お~いお茶:全世代から愛される“緑茶界のアイドル”。現場でお弁当がでるとき、必ずと言っていいほどコレが添えられている印象があります。お~いお茶を「嫌い」という人はいないと思い、2本選びました。
・健康ミネラルむぎ茶:30~40代の男性が好みそうなイメージがあるから。
・烏龍茶:20~30代女子は烏龍茶が好き、というイメージを持っています。
・南アルプスの天然水:なんだかんだで、水はもっとも無難です。「打ち合わせには必ずひとり、水を好む人がいる」説が自分にはあるんですよね。
・クラフト ボス ブラック:念のためのコーヒーも1本。お茶と水だけでは、物足りないと感じる人がいそうだなと思ったので。
20代男性その1→伊右衛門、お~いお茶、セブンズボス ブラック、生茶、午後の紅茶 おいしい無糖、ジョージア ジャパン クラフトマン カフェラテ、クラフトボス ティー ノンシュガー、レモンウォーター(註:彼は「8人分」と勘違いしていた)

【購入理由】
・まず前提として、緑茶が基本だろうと。ただ、人により好みがあるだろうから、すべて違うブランドにしました。
・緑茶だけではさびしいし、選択肢も少ないから、紅茶2種とコーヒー2種、甘い飲料を1つ加えて、いろいろ選べるように。
・コーヒーは加糖と無糖を選んでいます。
・紅茶もブランドが違う2本をチョイス。でも、加糖の紅茶は甘すぎる印象があるので、どちらも無糖です。
・甘い飲料は正直、なんでもよかったのですが、夏なのでレモンウォーターにしました。
■「2リットルの水ペットボトルが1本あれば事足りる」のか!?
20代男性その2→南アルプスの天然水(2リットルペットボトル)

【購入理由】
・南アルプスの天然水:水なら誰でも飲めますよね。大きなペットボトルからコップに注ぐようにすれば、それぞれが飲みたい分量を加減できますし、残ったらコーヒーをいれたりするのにも使えるので、無駄がないでしょう?
40代男性(私)→ビタミンフルーツ オレンジMix 100%、伊右衛門、アクエリアス ゼロカロリー、コカ・コーラ・ゼロ、タリーズ スムースブラック、午後の紅茶 ザ・マイスターズ ミルクティー

【購入理由】
・選ぶにあたり、自分がよく参加する会議の面々を思い浮かべながら構成を考えた。40代男性×2、40代女性×1(ブラックコーヒー好き)、30代男性×1、30代女性×1、20代女性×1という顔ぶれ。
・ビタミンフルーツ オレンジMix 100%:フルーツジュースを1本含めたいと思っていたところ、オレンジに「カムカム」なる物珍しい果物をミックスしたものを発見したから。おいしそうだし、なんか健康によさそう。
・伊右衛門:6人も集まれば、ひとりくらいは緑茶好きがいるはず。
・アクエリアス ゼロカロリー:夏だし、「熱中症対策」の情報などをテレビで見た人がスポーツドリンクを欲しがるかな、と思ったので。
・コカ・コーラ・ゼロ:これは完全に私の好み。自分が飲みたいので、なんとしてもこれを死守する。
・タリーズ スムースブラック:その場にブラックコーヒー好きがいるとわかっているから。というか緑茶と同じく、ブラックコーヒー好きがひとりくらいはいるもの。
・午後の紅茶 ザ・マイスターズ ミルクティー:40~50代男性は、午後の紅茶のミルクティーに思い入れを持っている場合が多い。「紅茶花伝」のミルクティーもオッサン世代にはファンが多いと思う。
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