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永年ドライバーへの奨め(第3回/全6回)- 大久保力(自動車ジャーナリスト)

◆今すぐ可能な「逆走」防止対策はある

高齢運転者問題の発端でもあるような『逆走』も同じく、焦り、イラつきが根本です。逆走の多くは高速道路サービスエリア(SA)に入った車が本線に戻る時、SAの出口が解らなくなり、焦って走り回る内に見覚えのある風景に惑わされ、それが入って来た方向(入路)だったとの疑いも無く本線に進入してしまうケースが多いのです。

そういった過ちに、多くの人は〝何で逆に走ってしまうのだろう?〟と思うでしょうが、運転経験が長くても高速道路に慣れない人に多くみられます。

特にSAに入り、混雑した駐車場の空きを探し回り、ようやく駐車できてホッ、さて一息ついてSAから出るのに、自分の車を探すのに一苦労、既に落ち着き無く運転席へ。こうなると、そこから早く離れたい衝動にかられるものです。まして視界の悪い夜間なら尚更のこと、出口出口の焦りはSAに入ってきた僅かな記憶が錯覚を起こし入口方向へとなってしまうのです。

こういった誤りは運転者の不注意以外の何物でもないのですが、高速道路SAの構造にも問題がありまして〝あゝこれじゃあ出口間違うなー〟と思える個所が結構多いものです。最近は、路面にペイント大書した注意も見ますが夜なんか見えません。

こういった誤走に対し、ナビと連動した警報など防止メカニズムなどの提案もありますが、高度な対策を待つまでもなく、逆走車をゲートバーで遮断する、あるいは強力なライトを点滅させるなどアナログ的手段で構わないのです。

また、多くの車を駐車させることを優先する駐車場の構造にも問題があります。SAに入る→駐車する→出口に向かう動線を科学的に研究した駐車区画の有り方を考え出す必要があります、アナログでもデジタルでも構いません、直ぐにでも可能な対策を施すべきです。

また、逆走問題は東名や中央など高速自動車国道だけでなく、他の自動車専用道路と一般道を結ぶランプウエーでも逆走車があるものとした対策が必要です。

さらに高速道だけでなく、昨今は建物のビル化や市街地開発など都市風景も変貌し、生活道路も複雑になっていますのに街中の交通標識は旧態依然たるもの、特に高齢者には見えない、見えにくいが原因で一方通行を逆に入り反則金を払った運転者も多いのではないでしょうか。

◆「自動ブレーキ」はあくまで「衝突被害軽減装置」だ

逆走だけでなく、一般道、高速道問わず増加しているのは、交通事故の上位を占める『追突』事故です。またこれも、大型貨物車に追突され炎上した乗用車の全乗員死亡の悲惨な事故から大きな社会問題になりました。

事故の原因はトラックドライバーの不注意によるのですが、全ての道路で日常的に発生する運転ミスの追突事故を軽減させようと研究が進んでいる乗用車メーカーに比べ、取り組みが遅れている貨物車メーカーが大きな批判を浴びました。

それに呼応した国の機関は2014年(平成26年)から製造の車重総重量13トン以上の貨物車始め高速バス、大型貨物トレーラーに衝突被害軽減ブレーキ:AEB(Autonomous Emergency Braking)の装着を義務付けました。しかし現状は、稼動中全貨物車の何%にもなりませんから、まだまだ大型貨物車などから距離を置いた運転に努めた方が無難です。

貨物車に対し乗用車メーカーの中には既に3年近く前から様々な安全装置を組み込んだ先進安全自動車:ASV開発に取り組み、安全装置の一つとして通称「自動ブレーキ」と呼ぶ装置を実用化、2003年にはトヨタ、ホンダがこの装置を取り付けた車種を市販し欧米の自動車産業にも大きな影響を与えました。

他のメーカーも同様な装置の製品を市販しだすのですが、自動ブレーキ、自動自動~~のコマーシャルが、あたかも運転者が何もしなくても衝突しないような誤解を与えることから、私どもメディアでは自動ではなく運転を支援するもの、「サポート機能」とするのが正しいのではないか、ということもあり、現在では〝衝突被害軽減ブレーキ装置〟=AEBの呼称になっています。

そのAEB、スバルはアイサイト、トヨタはプリクラッシュ セーフティ〈PCS〉、ホンダはホンダ センシング〈CMBS〉等、メーカーによって呼称も違い、AEBの効果・性能にもばらつきがあります。

では、この装置、対車両、対歩行者にどの位の速度で有効か? になりますと、総じて30~40km/h程度なら作動するのが確認されますが、その速度でもウインドワイパーが忙しく動く雨天では衝突が避けられなかった結果も出ています。

まして80~100km/hでもブレーキが作動するほど有効なレベルにはなっていませんから誤解も多いようです。それでも2020年には乗用車へのAEB装着率を90%にする取組みも進み、安全技術性能の向上とそれを装着の車は急速に普及していくでしょう。

しかし先日のこと、友人が運転するAEB装着車に同乗した時のことです。脇道から飛び出した車に側突されそうになり何とか回避しましたが、彼のブレーキ操作が明らかにお粗末だったのです。

普段のAEBブレーキに依存する悪弊が出てしまったようです。本人も、それを認めていましたが、ブレーキ始め全ての安全機能は交通安全の〈お守り〉程度に期待しておいた方が無難ということです。

どんな安全装置も運転者、即ち人間の管理の下にあるのを忘れてはならないのです。メカニズムへの依存は運転者の散漫なドライビングを増長するものです。これを如何に防ぐかが次代の大きな課題になるようです。

AEBがあろうと無かろうと、前方の車、歩行者、障害物を避け切れない『追突』への対応は運転者自らの注意力しかないのです。AEBも何十メートル前から作動するのでなく、運転者がハッとする距離、それも前述の30~40キロの速度でしか作動しないのですから唯一無二の追突防止は前車との充分な車間距離と充分に停まれる速度しかありません。

ただ、この充分な車間の解釈が〝安全運転している〟とばかりに必要以上の間隔で走行する高齢運転者が増えていますが、これが路上の流れ・リズムを崩し、特に自称安全走行の後ろについた車の運転者はイラつくものなのです。そのイラつきが誘因で、あおられ、追突される側にもなるのですから、自分で周囲の流れを乱さない感覚を身に着けるしかありません。

一般的に車間の目安として、高速道路で80キロ走行なら80m、速度1キロ=1mといった指導もあります。しかし、速度が遅い一般道で、この目安では渋滞がひどくなり、40 キロで20 m+α、50キロ=30m+α、60キロ=40m+α辺りが無難との指針もあります。

また、自分の車のルームミラーに後車のボンネットが映るほど極端に接近してくる運転者には〝車間距離不保持〟の違反が強化され、高速道では普通車の場合、反則金9千円、点数2点、一般道で同じく普通車6千円、1点となりますから、上記の車間距離目安は最低限必要且つ安全な参考数値です。

次回は、安全な走行テクニックを身に着けるための留意点について解説します。

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大久保 力(自動車ジャーナリスト)
元レーシング ドライバー
レジェンド レーシングドライバーズ クラブ会長
日本自動車ジャーナリスト協会&日本外国特派員協会 所属

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