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【読書感想】ケーキの切れない非行少年たち

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ケーキの切れない非行少年たち (新潮新書)
作者: 宮口幸治
出版社/メーカー: 新潮社
発売日: 2019/07/12
メディア: 新書
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Kindle版もあります。

ケーキの切れない非行少年たち(新潮新書)
作者: 宮口幸治
出版社/メーカー: 新潮社
発売日: 2019/07/26
メディア: Kindle版
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内容(「BOOK」データベースより)
児童精神科医である筆者は、多くの非行少年たちと出会う中で、「反省以前の子ども」が沢山いるという事実に気づく。少年院には、認知力が弱く、「ケーキを等分に切る」ことすら出来ない非行少年が大勢いたが、問題の根深さは普通の学校でも同じなのだ。人口の十数%いるとされる「境界知能」の人々に焦点を当て、困っている彼らを学校・社会生活で困らないように導く超実践的なメソッドを公開する。

 「子ども」が、あんなにひどいことを……

 少年犯罪に対しては、「親の顔が見たい」なんてことを考えがちになるのです。

 そして、再犯を繰り返したり、大人になってから大きな事件を起こしたりすると、「少年院に入っても、全然反省していないじゃないか!」と憤り、さらなる厳罰化を求めてしまう。

 著者は、児童精神科医として経験を積み、その後、少年院で法務技官としてさまざまな「問題を起こした少年たち」に接してきました。

 勤務先の少年院で、もっとも手がかかる、ちょっとしたことでもキレて、机やいすを投げ飛ばし、大勢の職員を相手に大暴れする子どもに、神経心理学検査の一つである、Rey複数図形の模写をやらせてみたそうです。

 その子が黙々と模写した図が、あまりにもお手本と比べて違って(歪んで)いるのをみて驚き、「この子には世の中のことすべてが歪んで見えている可能性がある」と考えたのです。

 これまで多くの非行少年たちと面接してきました。凶悪犯罪を行った少年に、何故そんなことを行ったのかと尋ねても、難し過ぎてその理由を答えられないという子がかなりいたのです。更生のためには、自分のやった非行としっかりと向き合うこと、被害者のことも考えて内省すること、自己洞察などが必要ですが、そもそもその力がないのです。つまり、「反省以前の問題」なのです。これでは被害者も浮かばれません。

 こういった少年たちの中で、幼い時から病院を受診している子はほとんどいません。彼らの保護者・養育環境はお世辞にもいいとは言えず、そういった保護者が子どもの発達上の問題(絵を写すのが苦手、勉強が苦手、対人関係が苦手など)に気づいて病院に連れていくことはないからです。病院に連れてこられる児童は家庭環境もそこそこ安定しており、その親も「少しでも早く病院に連れて行って子どもを診てもらいたい」といったモチベーションを持っています。

 非行化した少年たちに医療的な見立てがされるのは、飛行を犯し、警察に逮捕され、司法の手に委ねられた後なのです。一般の精神科病院に、こういった非行少年はまず来ません。

 この本を読みながら、子どもにとって、学校で勉強がわからない、というのはものすごいストレスなのだな、と思ったのです。

 僕は運動音痴で、体育の時間が憂鬱で仕方がなかったのですが、勉強が全然わからないというのは、僕にとっての体育の時間の絶望感が、学校にいるほとんどの時間、続くってことなんですよね。

 さらに、人付き合いが苦手で友達がいない、作れないともなると、それはもう、キツイはず。

 医療少年院では、新しく入ってきた全ての少年に対して、毎回2時間ほどかけて面接を行っていました。通常、非行少年の面接となると、なぜ非行をやったのか、被害者に対してどう思っているかといったことをメインに聞くことが多いのですが、実はそういったことを聞いても更生にはあまり役に立たないことが分かってきました。少年院在院少年たちの幼少期からの調書を読んでみると、彼らは少年院に入るまでに、これでもか、これでもかというくらい非行を繰り返しています。少年院に赴任したての頃は、凶暴な連中ばかりでいきなり殴られるのではないか、といつも身構えていました。しかし、実際は人懐っこくて、どうしてこんな子が? と思える子もいました。

 しかし一番ショックだったのが、

・簡単な足し算や引き算ができない
・漢字が読めない
・簡単な図形を写せない
・短い文章すら復唱できない


 といった少年が大勢いたことでした。見る力、聞く力、見えないものを想像する力がとても弱く、そのせいで勉強が苦手というだけでなく、話を聞き間違えたり、周りの状況が読めなくて対人関係で失敗したり、イジメに遭ったりしていたのです。そして、それが非行の原因にもなっていることを知ったのです。

 その他、高校生なのに九九を知らない。不器用で力加減ができない、日本地図を出して「自分の住んでいるところはどこ?」と聞いても分からない、といったこともありました。北海道は大体みんな知っているのですが、九州を指さして「これは何?」と聞くと、「外国です。中国です」と答えた少年もいます。ひどくなると日本地図を見せても、「これは何の図形ですか? 見たことないです」という少年もいます。

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