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消費税をゼロに下げると何が起きるのか? - 塚崎公義 (久留米大学商学部教授)

景気対策で消費税率をゼロにするという発想は悪くないが、色々問題が多い、と久留米大学の塚崎公義教授は説きます。


(kudou/gettyimages)

発想は悪くないが、問題は景気対策の規模と、景気対策手段の選択

減税によって景気後退リスクを軽減し、経済成長を確実なものとし、かつ庶民に優しい消費税率引き下げという手法を採用しよう、という政策は、発想としては悪くないと思います。

積極財政論者である筆者から見ると、現在の情勢下では、減税するリスク(財政赤字拡大が様々な問題を引き起こす可能性)より減税しないリスク(景気が後退に転じるリスク)の方が大きく見えます。

諸外国の景気後退等の影響で国内景気が後退に転じる可能性は決して小さくないので、積極財政が求められていると思っています。

しかも、法人税や所得税の減税と比べると、消費税率引き下げは庶民に恩恵が及びやすく、したがって消費の刺激策として優れた効果が見込まれるでしょう。

しかし、実際に消費税率をゼロにするとなると、様々な問題が出てきます。

この問題を考えるに際し、筆者は問題を二つに分けて考えたいと思います。「大規模な景気対策を採ることの是非」と「景気対策をするとしたら、消費税減税がベストな選択肢か否か」です。

景気対策は大きければ良いというものではない

景気対策は大きければ良いというものではありません。消費税収は18兆円ほどありますから、これをゼロにするとなると、超大型の景気対策となります。

現在すでに労働力不足となっている所に、超大型の景気対策が打たれれば、インフレになるでしょうから、日銀が金融を引き締めて景気を悪化させ、インフレを止めることになるはずです。

そうなると、せっかく財政支出を増やして景気を拡大しようとしても、景気はそれほど拡大しない、ということになります。それなら、最初から景気対策を小幅なものにすべきでしょう。

要するに、景気対策というのは失業者が大勢いる時に雇用を作り出すためのものであり、失業者がいない時には意味がないのです。海外の景気後退等により日本の輸出が減ると見込まれる場合に、それによって生じるであろう失業を吸収するだけの規模の景気対策を行えば良いのです。

今ひとつの問題は、消費税率を大幅に引き下げると、極端な買い控えが生じ、引き下げ後に巨額の需要が発生することで、無用な景気変動を作り出してしまう可能性が高いことです。

そもそも消費税は景気の調節には不向き

景気の調節は、機動的に行う必要があります。景気が悪化したら直ちに景気対策を講じ、景気が過熱してインフレが懸念されたら直ちに景気を冷やす対策が採られる必要があるわけです。

しかし消費税は、国会で税率変更を議論しなければなりませんし、決まってから実際の税率変更までにも時間がかかります。現場の準備が必要だからです。

今次局面にしても、本当に減税が必要か否かを見極めてから国会で議論をし、実施されるまでの間に景気が大幅に悪化してしまう可能性もあるでしょう。

そもそも、景気が変動するたびに消費税率が変動していたのでは、現場の手間が大変でしょうし、それ以上に「買い急ぎと反動減」「買い控えと反動増」が毎年のように発生するのでは、景気の調節をしているのだか景気の波を作り出しているのだかわからないでしょう(笑)。

景気対策とは別に消費税率を段階的に引き下げるという選択肢

上記のように、景気対策として消費税率を引き下げる事には様々な問題がありますが、景気対策とは無関係に、そもそも消費税を撤廃して他の税に振り替えるというのであれば、それは一つの選択肢でしょう。

もちろん、一気にやると買い控えと反動買いが大きくなりすぎますから、消費税率を段階的に引き下げて、最終的にはゼロにする、といった配慮は必要でしょうが。

財務省によれば 、消費税のメリットは「現役世代に負担が集中せず、高齢者を含めて広く負担する」「税収が景気に左右されにくく安定している」との事ですが、これはいずれも疑問です。

消費税率が上がると消費者物価が上がります。そうなると、原則として高齢者に支払われる年金も物価スライドで増額されます。つまり、高齢者は消費税増税による負担増が現役世代より軽いのです。

税収が景気に左右されにくい、というのもメリットであるようで、デメリットでもあります。「景気が悪い時には税収が減って景気を下支えし、景気が良い時には税収が増えて景気の過熱を防ぐ機能」が欠けている、ということだからです。

そもそも「法人税率が下がっているのに消費税率が上がっているのはケシカラン」といった意見は、当然あるでしょう。「痛税感の強い消費税を減税して、痛税感の弱い相続税を増税すれば、景気にも良いし貧富の差の是正にもなる」という考え方もあるでしょう。消費税が本当に望ましい税なのか、再考の余地ありです。

筆者は、消費税の減税と相続税の増税を提唱しています。特に、配偶者も子も親もいない被相続人の財産は、兄弟姉妹が相続するわけですから、その際の相続税率は極端を言えば100%でも構わないと思います。

これは、公平の観点からも、痛税感の観点からも望ましいことに加え、実利的でもあります。最近は、結婚しない人、結婚しても子供のいない夫婦が増えているので、数十年待てば巨額の税収が見込めるでしょう。ぜひ検討してほしいものです。

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