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吉本興業といじめとメディアと厚労省とHPVワクチン、、、そしていじめ。

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ジャニーズや吉本やテレビなどのメディアの理不尽がまかり通った昭和の時代はとっくに歴史上の時代である。令和という改元は新しい時代を作るよい機会である。やんわりとした奴隷制度は辞めにして、「いじめ」体質とも決別すべきだ。我々「庶民」も、自分自身がその加害者であることを自覚して、そうでない社会を要求すべきだ。

我々には力がある。ジャニーズも、吉本も、客がいなければおしまいなのだ。いじめ体質を改善しなければ、ぼくらこそが彼らを「干せば」よいのである。我々は、不寛容にだけは不寛容になってよいのだから。

 こういう主張をブログに書いていたら、今度は宮迫氏たちが記者会見を行い、吉本興業社長から脅しをかけられていたことが判明した。吉本の岡本昭彦社長は、会見で釈明したいという宮迫たちの要望を拒否し、「お前ら、テープ回してないやろな」「一人で会見したらええわ。やってもええけど、ほんなら全員クビにするからな。おれにはお前ら全員クビにする力がある」と凄んだそうだ。

 宮迫たちの判断は正しい。大きな組織の「いじめ」と戦うためにもっとも有効なのは情報を活用し、ネットを活用することだ。ネットで「いじめ」「脅し」を暴露することで無力、微力な個々人も組織と戦える。それが21世紀だ。案の定、世間の風向きは大きく変わり、批判の矛先は今度は吉本興業に向かった。社長の稚拙な記者会見のために、火に油は注がれて批判はさらに強くなった。

 しかし、宮迫たちをボコボコに批判していたのはネットを含めた「世論」である。自分たちの行為を棚に上げて、手のひらを返したように宮迫たちを養護し、吉本興業を叩きに回るのも感心しない。彼らは要するに、「叩いてもいいやつ」を探しては叩いて喜んでいるだけではないか。

一番情けなかったのはテレビ局だ。当初は、吉本興業への「忖度」から宮迫たちの悲痛な訴えを看過したり矮小化しようとした。しかし、「忖度、擁護」の閾値が下がり、「叩いてもいいゴーサイン」が出たら、今度はメディアも吉本興業を切り捨てる決断をする。

彼らには「見解」というものはない。単に世間の流れを観察して、勝てそうな方になびき、怖そうな存在には忖度し、叩けそうな存在を探しては叩きまくるだけなのだ。典型的ないじめの加害者はそういうものだ。学校での子供の間に起きるいじめでも、多くは「特にいじめたくもないんだけど、ここでいじめに加担しておかねば」という忖度と、「ここでアイツを叩いても誰も文句を言わない」という空気がいじめをアンストッパブルにするのである。子供のいじめの構造は、大人の社会のいじめの縮図である。

 世間の空気を観察し、ただそれについてまわるだけ。日本社会の多くのプレイヤーたちが、このような主体性喪失状態に陥っている。そうぼくは思う。

 子宮頚がんという病気がある。子宮のがんだから女性の病気だ。これはパピローマウイルス(HPV)というウイルス感染が原因でおきるがんである。ある種のがんは、感染症が原因となるのだ。

 こうしたがんの予防のためにワクチンが開発された。HPVワクチンである。子宮頚がん予防にも効果的だが、男性の肛門がんや陰茎がんにも予防効果がある。よって、多くの国では女児に、米国やオーストラリアなどでは男の子にも定期接種している。英国も2019年から男子にも接種することに決めた。

 日本でもHPVワクチンは「定期接種」である。中学生の女子が接種対象だ。ところが、このワクチンは日本の女子のほとんどに接種されていない。理由は「ワクチン副作用」の懸念から、厚生労働省が「積極的な勧奨を差し控えた」ためだ。

 このワクチンの効果と安全性については拙著「ワクチンは怖くない」(光文社新書)で詳述したからここでは繰り返さない。結論だけ申し上げると、HPVワクチンは子宮頚がん予防に効果的で、その副作用リスクは小さい。接種したほうがしないよりもずっと利益が大きく、積極的に日本の女子に、あるいは男子に勧めるべきワクチンである。

 しかし、厚労省が「定期接種ではあるが積極的勧奨は差し控える」という意味不明な日本語で説明するから、多くの親たちはビビってしまってワクチン接種を受けなかった。というか、そもそも「積極的勧奨を差し控えた」ワクチンは(たとえ定期接種でも)ワクチン接種の通知が来ないのだ。通知が来ないのにわざわざ病院に行ってワクチンを接種しようというのはよほど勉強している人たちだけで、ほとんどの人たちはこのワクチンが提供されているという事実すら知らない。

 よって、厚生労働省がやるべきは一刻も早く積極的勧奨を再開して対象者にはがきを送って「ワクチンを打ってくださいね」と通知、励行することである。

 が、当の担当者は知らん顔だ。元厚労省健康課長の正林督章氏はインタビューの中で、「国民の理解」がなければ積極的勧奨はできないと述べている。自分たちがその理解を妨げておいて、よく言うぜ、と思う。

 正林氏は積極的勧奨差し控えに「マスコミの影響と責任」が大きかったと主張する。メディアが騒いだから、積極的勧奨を差し控えたというのだ。

 そもそもそれが間違っている。

 ワクチンに限らず、医療行為の是非は医学的、科学的に判断するしかない。リスクが大きいと判断すれば、警告をかけたり禁止すればよいし、リスクが小さい、ないと判断すればそうだと言えばよい。「メディアが騒ぐから禁止する」「メディアがオーケーサインを出せば、認める」という他力本願な態度では、いったいなんのための行政なんだと思う。

 だから、ぼくは2009年の「新型インフルエンザ」騒動後の総括会議で「日本版のACIP、、、ワクチン推奨を多様な専門家の推奨で決定する仕組み、、、を作るべきだ」と主張したのだ。あのとき日本版ACIPができていれば、こんな茶番は起きず、日本でもHPVワクチンは積極的勧奨をされていたはずだ。

 しかし、あのときも日本版ACIPの必要性を否定する委員は皆無だったにもかかわらず、なんだかんだでなし崩しにされて予防接種行政は厚労省がメインに意思決定する古い体制が残ってしまった。「メディアが騒がなくなれば」厚労省は動かないのである。

 「メディアが騒ぐ」、、、すなわち空気である。空気がものを決める。これが日本のいじめ体質の本質といってよい。これまで述べてきたように「空気がタコ殴りを許容すれば、叩く」からなのだ。

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