- 2019年07月27日 10:00
スピードワゴン小沢が語る、パンク精神で「今、この瞬間」を生きる美学
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音楽、映画、小説に造詣が深く、10代から持ち続けてきたパンク精神が表現の根っこにある小沢一敬。彼にとってお笑いは衝動そのものであり、その生き方は刹那的でどこまでも自由だ。長年にわたって芸術の分野で表現し続ける者たち。本業も趣味も自分流のスタイルで楽しむ、そんな彼らの「大人のこだわり」にフォーカスしたRolling Stone Japanの連載、第14回目のゲストは、スピードワゴンの小沢一敬だ。
Coffee & Cigarettes 14 | 小沢一敬
「フリッパーズ・ギターが好きな理由? パンクだから」
そう言いながら小沢一敬は、こちらを試すような不敵な笑みを浮かべた。相方の井戸田潤と結成したお笑いコンビ、スピードワゴンの(主に)ボケ担当。2002年の『M-1グランプリ』にて敗者復活戦から勝ち上がり、初の決勝進出を果たしたことで一躍注目を集めた彼ら。中でも「甘い言葉」ネタは、お茶の間に広く認知されるきっかけに。独身を貫き、同期の徳井義実(チュートリアル)らとシェアハウスで共同生活を送るなど、そのユニークなライフスタイルでも知られる小沢は、生粋のTHE BLUE HEARTS好きとしても有名だ。実は、フリッパーズ・ギターの大ファンでもあるという噂を小耳に挟み、その理由を尋ねたときに返ってきたのが冒頭の言葉。即答だった。
「僕は中卒なんだけど、15歳の頃に1つ上の先輩と寮で共同生活をしながら海のそばのホテルで働いていて。その職場には、大学生など年上の人がバイトでたくさん来ていたんだよね。その中の1人に教えてもらったのがフリッパーズ・ギターだった。その頃はまだ、ロリポップ・ソニック(フリッパーズ・ギターの前身バンド)時代だったんじゃないかな。やってることはパンク・ロックではなかったけど、『あ、こいつらパンクだ』と思って好きになったのがキッカケだった」
小山田圭吾(コーネリアス)と小沢健二により結成されたポップ・デュオ、フリッパーズ・ギター。「恋とマシンガン」などのヒット曲で知られ、ベレー帽にボーダーシャツといったフレンチカジュアルに身を包んだ彼らがパンク? と首をかしげる人もいるかも知れない。だが、アズテック・カメラやオレンジ・ジュース、パステルズらに影響を受け、複雑で洗練されたコードをアコギでかきむしりながら、甘い歌声で美しいハーモニーを聴かせる彼らは、形骸化された当時の「商業ロック」などよりも余程ロックでパンクな存在だったのだ。そんな話を切り出すと、小沢の目が光った。
「アズテック・カメラなんて名前が、こういう取材で出てくるとなんだかワクワクしてくる(笑)。俺の中でTHE BLUE HEARTSとフリッパーズ・ギター、それからダウンタウンはパンクなんだよね。なぜなら、『あ、俺はこういうことがやりたい!』って思わせてくれるのがパンクだと思っているから。もちろん、全然やれないんだけど。勘違いさせられちゃうというかさ……。THE BLUE HEARTSやダウンタウンの真似したやつはいっぱいいたけど、誰も超えられなかったよね。ちなみに以前、マーシーと話す機会があって、その時に『小山田くんにはパンクを感じるんだよね』って言ってて。一緒だ!と思ってうれしかったな」
Photo by Kentaro Kambe
そう言いながら、少年のように目を輝かせる小沢。マーシーとは言うまでもなく、真島昌利のこと。甲本ヒロトと共にTHE BLUE HEARTSを結成し、現在はザ・クロマニヨンズのギタリスト。「THE BLUE HEARTSは小学校の義務教育で教えるべき」と常々主張する小沢にとって、マーシーは「先生」なのだ。
「マーシーが好きなものを全部知りたくて、映画や本、音楽はマーシーの真似をしたの。昔はそれこそジャック・ケルアックやアレン・ギンズバーグ、ジム・キャロルなどビート文学と呼ばれる本を読んだり、『長距離走者の孤独 』のようなイギリス文学を読んだり。背伸びしてたんだよね(笑)。よくヒロトさんが言ってたのは『あの人の音楽が好き』って思ったら、その音楽を真似するんじゃなくてルーツまで遡れって。だから、フリッパーズとTHE BLUE HEARTSって、やっていることは全然違うけどルーツを遡っていくと共通点があったのかも。そこに同じ『パンク精神』を感じたのかも知れないな」
タバコをくゆらせ、当時を思い出す。そういえば、さっきから彼はひっきりなしにマルボロを吸い続けている。どうやら筋金入りのチェーンスモーカーのようだ。
「1日4箱は吸ってるね。タバコと酒、どっちかやめろともし言われたら酒をやめる。別に好きとか嫌いとかもないし、美味いとも感じてないんだけど(笑)。もう生活の一部みたいになっちゃってるから。そうそう、このあいだ健康診断へ行ったら『70歳の肺です』って言われた。でも全然気にしてないよ」
笑いながらさらに1本くわえる。サブカルチャーにも造詣が深く、最近ではAL(元andymoriの小山田壮平による新バンド)やTHE BOHEMIANSがお気に入りだという小沢が、衣食住などライフスタイルへのこだわりを、ほとんど持っていなかったのは意外だった。唯一あるとしたら「Tシャツの首をハサミで切ること」だという。それもマーシーの影響だ。
「俺の大好きなマーシーが、ずっとTシャツの首を切ってる。だから俺も、中学生の頃からずっとそうやってる。中学生の頃とかパジャマで登校したことがあるんだけど(笑)、パジャマの首まで切ってるからほんと、頭のおかしいやつだったよね(笑)」
Photo by Kentaro Kambe
マーシーへの思いが強すぎる余り、彼の卒業校に電話して連絡先を聞き出そうとしたこともある。「彼のそばにいれば、ロックな生活が送れると思ったんだよ」と恥ずかしそうに述懐していたが、そこまで好きな音楽の道には進まず、バンドを辞めてお笑いの世界に入ったのは何故だったのだろう。
「誘われたから(笑)。ほんと、どうしようと思ってたんだよね。15歳からプータローというか、1カ月働いたら3カ月遊んで暮らすというのをずっと続けて、気がついたら20歳になっていて。いつの間にか周りの同級生たちは、大学へ行ったり就職したり。あれ?みんな『ずっとプータローやっていようぜ』って言ってなかったっけ?みたいな(笑)。
- Rolling Stone Japan
- 音楽カルチャーマガジン米Rolling Stone誌の日本版



