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美人は生物学的に強い?

一般的に、美女・可愛い子(以下では「美人」と呼ぶ)は男性にモテる。(同性愛の話を含めると議論としてややこしくなるので置いておく。)「なんだ、そりゃ当たり前だ」と思うだろう。だが、ここで言いたいのは「世の中で美人と言われている人は、何故美人なのか」、もっと分かりやすく言えば、「我々は何故、ある人を美人だと思うのか」ということだ。ほら、「世間的にブスと言われるような人が美人と呼ばれる世界」も可能性としてはありえたではないか。

どうは言っても「個人差があるし、国や地域によっても違う」と多くの人は思うはずだ。これは当然だが、それでも、極めて多くの人が「可愛い」とか「美しい」と思うような顔というのはあるはずだ。表現が難しいが、「美人の平均像」のようなものだ。

そんな「美人とは何か」という事について、特に進化心理学的なアプローチで研究が盛んに行われている。ここでは、人間が美人だと思う人が持つ特徴、そしてその特徴を持つ人は何故モテるのかという事についての研究の一部を紹介しよう。

平均額作成ツールモーフィングアニメ作成ソフトなどで複数の顔写真を合成すると、合成前よりも美人になる事が多いと言われる。例えば、AKB48のメンバーの顔を合成すると、ちょっと無個性だがとても整った美人になる。

<a href="http://www.nicovideo.jp/watch/sm14748812">AKB48の平均顔を作ってみた</a>
(Youtubeにもあるようです→AKB48の平均顔を作ってみた

さて、平均顔は、「多くの顔を合成」したものなので、多くの人の顔の「パーツの形や配置などの平均」を持つ事になり、一般的に容姿の評価はプラスに働く。このようなを性質を「平均性(averageness)」という。そして、多くの場合、美人と呼ばれる人のパーツや輪郭は「左右対称に整っている状態」に近く、この状態を「シンメトリー性(symmetry)」という。

ここまでは、研究成果を見なくても「常識」と言っても良いだろう。あくまで個人の趣味の違いを除くと、一般的には「整っている顔」というものを美人と思う人は多いだろう。極端な話、「福笑い」で出来た突拍子も無いパーツの配置の顔を美人と思う人は少ないはずだ。

では、このような「整った顔を美人と思うのは何故か」という核心に迫ろう。進化心理学的には「繁殖力が高い」からと説明される事が多い。ここでの繁殖力は、別に性欲が強いという意味ではなく、「強い免疫機能を持つこと」を意味する。Lie HC, Rhodes G, Simmons LW.(2008)によると、平均性やシンメトリー性は、免疫機能を司る抗体が多様である事を示すシグナルの役目を果たす事を実験的に示している。

この実験では、まず被験者160人の顔写真を撮影し、対称性等から平均性の数値尺度を作り、各被験者の平均からの解離度を測定する。その上で、被験者の遺伝子型を同定し、ヘテロ接合度(対立遺伝子の遺伝子型が異なっている状態であるヘテロ接合体の割合)」を求める。その両方の数字を比較すると、上のような結論が得られたようだ。

ヘテロ接合度が高いということは、個体の遺伝子型に様々な変異が含まれているので、環境変化に適応して生存するための遺伝子が種内にある確率が高いという事になる。これは種の場合に拡張しても同じで、このようなヘテロ接合度が高い個体が多ければ多いほど、種として生存する可能性が高いと言われる。

つまり、この研究から言えば、男性が美人を好むのは「自己の遺伝子を残せそうな相手を自然に探している」ということになる。この研究には異論が大いにあろう。特に、そもそも進化論の立場に取らない人は、議論の根本から信じないだろうし。(ちなみに私は、「自然淘汰」と「突然変異」中心の古典的なダーウィニズムではなく、カウフマンのような「自己組織化」の概念を取り入れた理論に近い立場を取る。参考:自己組織化と進化の論理―宇宙を貫く複雑系の法則

だが、ブスが絶滅するとかそういう話をしているわけではない。ここでの議論に則れば、子孫を残せるかどうかは「遺伝子だけで決まらない≒顔だけで決まらない」からだ。性格など他の要素も極めて重要だし、そもそも生まれ育った環境によって「好む顔」に個人差が生まれるので、そういう意味でうまくマッチングする事も大いにある。整い過ぎた顔が何となく「物足りない」と思う人も多いだろうが、これは議論に則れば、顔の趣味が環境的社会的要因によって平均顔から乖離しているわけである。これは異常なのではなく、遺伝子だけで人間の趣味が決まらない以上、当然と言っても良い現象である。そういうズレを多くの人が持つが、それで種としてはうまくいくのである。

さて、じゃあ「男性の顔の趣味はどう決まるの?」と思う人が多いだろうが、それはまた別の機会にしよう。

参考文献
Lie HC, Rhodes G, Simmons LW. (2008),"Genetic diversity revealed in human faces.", Evolution; 62(10):2473-86
→紹介した論文

N. エトコフ(2000)『なぜ美人ばかりが得をするのか』草思社
→社会心理学による「容姿」についての研究(タイトルは出版社の釣りで、原題はSurvival of the Prettiest: The Science of Beautyで、中身は真面目な論文である。)

S. カウフマン(2008)『自己組織化と進化の論理―宇宙を貫く複雑系の法則』(ちくま学芸文庫)筑摩書房

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