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で、あなたは「本当に自分の好きなこと」を知っていますか?

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いつの間にか「好きなことをしていい」時代から、「好きなことをしないと豊かになれない」時代に変わった。 | Books&Apps
 
 リンク先の文章は、「好きなことをしないと豊かになれない時代」の到来を告げる内容となっている。
 
 ちょっと前まで、「みんな自由に仕事が選べるようになって」「好きな仕事を好きなように」「あなたのライフスタイルにあわせて働く」ことが持て囃されていた時期があったように思う。ひょっとしたら今でも持て囃されているかもしれない。
 
 それは決して短期的な流行ではなく、バブル景気の前、それこそ「フリーター」がブームになっていた頃からそうだった。バブル景気が終わってもなお、「好きな仕事を好きなように」は流行のフレーズで、個人主義社会の正しさにかなったフレーズでもあった。「好きじゃない事をするのは格好悪い」みたいな物言いをする人は、現在でもインターネットにごまんといる。
 
 では、そうやって好きを選んだ人々の末路はどうだったかといえば、たとえばフリーターなどは死屍累々で、生き残ったのは本当に一握りのスーパーマンみたいな人だけだった。
 
 [関連]:結局は9割が大樹に拠った……80年代に「フリーター」を推奨した人々の、その後の人生|日刊サイゾー  
 
 冒頭リンク先の文章はもっとその先を行っていて、「好きな仕事が良い」ではなく「好きな仕事を見つけて、やらなければならない」という話になっている。やりたくない仕事をやっていては能力が発揮できない。好きな仕事を選んで能力を最大限に発揮させてはじめて、グローバルな社会状況のなかで開花できる、というのはだいたいそのとおりなのだろうと思う。
 
 個人の実存やアイデンティティの問題としてだけでなく、経済的要請から「好きな仕事を選ばなければならない」社会が迫ってきているとしたら、これはもうユートピアというよりディストピアにしか見えないのだが、資本主義にもとづいた個人主義社会が徹底していくこれまでの流れを踏まえるなら、起こってもおかしくなかろうし、現に起こりかけているようにも思う。
 
 こうなると、大学入試や企業の面接試験の際に、「うちの会社(うちの大学)で、あなたはどんなことをしたいですか」という質問も、様式上のものとはいいがたい。自分の好きなことがわかっていて、それが他人を納得させられる程度には言語化・戦略化できているということは、これからの時代、強みたり得るだろう。少なくとも、自分の好きなことがわかっていない人や、自分の好きなことを言語化・戦略化できていない人よりは、強みがあるといえる。  

「本当はみんなわかってないんじゃないの?」

 だけど、私は思うのだ。
 
 「でも、世の中の大半の人は『自分の好きな仕事』なんて本当はわかってないんじゃないの?」
 
 たとえば私が中高生だった頃、「自分が将来やりたい仕事」を言語化できている人間はほとんどいなかった。それどころか「自分が好きな遊び」を言語化できる人間すら、あまりいなかったかもしれない。自分の進路の行く先をぼんやりと想像して、目の前にある娯楽をとりあえず楽しむ。学校教師に「将来やりたい仕事」を尋ねられた時、「●●学部に入って××を勉強して、それを生かした仕事に就きたい」などと言ってみるけれども、じゃあ、その学生が●●学部を本当に切望していて、××を本当に勉強したがっているかといったら、そんなことはない。大人が言えというから、無理くりに「自分の好き(仮)」をでっちあげているだけだ。
 
 志を持っている人が入るといわれる医学部でも、それほど状況は違わなかったと思う。学生の多くは、かなり曖昧な動機で医学部に入っていた。もちろん漠然と、社会的地位が欲しい・命を救う仕事に就きたいと語る人はいたけれども、「自分の好きな仕事」にフォーカスが絞れているとはとうてい言えなかった。同期のなかには、後に研究者として頭角を現し、立派に出世した人もいるけれども、じゃあ彼が学生時代から「自分の好きな仕事」をくっきり意識していたかといったら……そんなことはなかったように思う。
 
 社会人になった人々にしても、大半は「自分の好きな仕事」、あるいは「自分の好きな生き方」がわかっていないし、意識もできていないのではないだろうか。
 
 上手く働き、上手く結婚し、上手く子育てしている人ですら、それがしたくて仕方が無かったという人がいったいどれぐらいいるだろう? 都内の優良企業でまともな報酬をもらい、帰宅すれば一人の母として、あるいは父としての役割をそつなくこなし、そこそこ幸せに暮らしている人ですら、それを心底望んで「好きだから」生きてきた人はけして多くないのではないかと思う。ほとんど成り行きで就職し、ほとんど成り行きで与えられた仕事をこなし、気が付いたらなんとなく幸せになっていた(または、不幸になっていた)という人が、世の中の構成員の大多数を占めているのではないか。  

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