- 2019年07月24日 18:03
打ち合いの末の痛み分け?~「ブロマガ」商標侵害訴訟・東京地裁判決
3/3また、損害額の算定に際しては、FC2側の請求に関しては商標法38条2項による推定を認めたものの、
「ドワンゴが得た上記利益のうち,上記役務に関して乙標章を付したことによる利益といえる部分は相当に限られるとすることが相当である。また,ブログの開設は,ドワンゴによって提供されるニコニコにおける多くのサービスのうちの一つであり,それが「ニコニコ」におけるサービスの一つであることも表示されていて,ブログを開設する需要者もそのことを認識していたと認められる。そして,上記のようなサービスの一つであることを主な理由として,ドワンゴにより提供されるブログの開設等の役務を利用した者も多いと認められる。これらを考慮すると,乙標章を付したことにより得たといえるFC2の利益は相当程度限定されたものと認めることができ・・・」(40頁)
と相当絞り込まれた結果、認容額は656万5554円にとどまったし、ドワンゴ側の請求に至っては、
「上記システム使用料よりもブロマガ負担保守運営費が・・・多い」(48頁)
として、38条2項の適用すら認められなかった*9。
ということで、結論を見ると、名実ともに「痛み分け」だなぁ、という印象を強く受けることになった第一審判決。
個人的には、両当事者が「ブロマガ」に関してサービス開始前に商標出願をしていなかったのは(「ブログ」+「マガジン」=「ブロマガ」というシンプルさ等も考慮すると)、そんなに責められるべきことではないと思っていて、むしろ、(冒頭で引用した参考記事のストーリーに基づくなら)ドワンゴ(ニワンゴ)側の使用開始に端を発したその後の両者のスピーディな対応の方にむしろ感銘を受けるくらいなのだが、その対応過程でのちょっとした思惑のズレが重なった結果、3年もかけて本件のような訴訟を行う羽目になり、さらに両者とも請求額に比べると微々たる賠償額で認容判決をもらって一区切り・・・というのは、実務者としては何とも切ない。
ドワンゴは今でも「ニコニコチャンネル ブロマガ」という形で商標を用いているが*10、それはFC2が本件訴訟で用いた商標が不使用取消審判により事実上消滅した(したがって、本判決でも差止請求は棄却されている)からなのか、また、FC2側は、現在はネーミングの前後を入れ替えて「マガブロ」という名称でサービスを展開している*11ようだが、一連の騒動の過程で取得した「ブロマガ」商標の行方はどうなるのか・・・等、外野から見ていても分からないことは多いのだが、著名な企業同士の戦い、ということで、後日譚も含め、どこかのWebメディアがいつか報じてくれることを期待している。
そして、この先、知財高裁判決まで進んでも進まなくても、日々ついつい負担の軽い方のジャッジに走りがちな商標実務者が「他山の石」として日々振り返るべき事案として、本件は長く語り継がれるべきだろう、と今は思っている。
*1:第46部・柴田義明裁判長、http://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/792/088792_hanrei.pdf
*4:先に登録された第5621414号は「ブロマガ」のカタカナと「BlogMaga」という英文字の二段書きだが、その一年後に「ブロマガ/BloMaga」と「g」を抜く形で改めて出願がなされたのがこちらである。本判決の中でも引用されているとおり、残念ながら「BlogMaga」との二段書き商標に関しては、ドワンゴが起こした不使用取消審判とその後の審決取消訴訟(知財高判平成30年12月20日)で、実際に使用していた「ブロマガ」標章との同一性が否定され、ほぼ取り消されてしまう、という決着になっている(個人的にはちょっと厳しい判断だな、という印象だが、裁判所もいろいろ忖度したのかもしれない・・・)。
*5:登録時期が第5621414号よりも後になるので、損害額算定等の関係で最初の商標権に基づくものだけを請求原因としたのではないかと推察される。
*7:先に紹介したFC2商標に対する一部無効審判では、特許庁が「情報の提供以外の役務(「○○○の記憶領域の貸与」の役務)は,主に通信事業者やインターネットサービスプロバイダによって提供され,商品「電子計算機用プログラム」は,コンピュータのソフトウェアメーカーによって開発・製造されるものであるから,両者の事業者は異なっており,また,両者はいずれもコンピュータに関連するものの,その用途は異なるとみるのが自然であり需要者もおのずとそれぞれを利用する者に限られるといえるから,両者は,これらに同一又は類似の商標が使用されたとしても,同一の営業主により提供又は製造・販売されるものと誤認されるおそれがある関係にない,非類似のものと判断するのが相当である。」として「電子計算機用プログラム」との類似性を否定したことにより、この役務が残ったことにも留意する必要がある。
*8:なお、FC2がドワンゴの「ブロマガ」商標に対して提起した無効審判、及びその審決取消訴訟においても商標法4条1項10号、15号該当性は否定されている(知財高判平成31年2月6日)。
*9:もっとも38条3項を適用し、「3%」の料率により算定した結果、867万7823円、と金額的にはFC2側の認容額を上回ることにはなったのだが・・・。
*10:https://ch.nicovideo.jp/portal/blomaga参照。
*11:マガブロとは?- FC2ブログ参照。
- 企業法務戦士(id:FJneo1994)
- 企業の法務担当者。法律の側面からニュースを分析。



