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打ち合いの末の痛み分け?~「ブロマガ」商標侵害訴訟・東京地裁判決

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一方、ドワンゴが訴えたFC2のサービスは、「ブログを通じて,有料コンテンツの購入,販売が出来るサービス」であり、

「ユーザーは,検索などをすることによって,購入したい記事を選択し,FC2に対して所定の支払をして「オリジナル小説」や「漫画」が例に挙げられる「限定記事」を購入することができ,その購入後,FC2のウェブページにおいて,購入した記事を閲覧することができるようになり,また,購入した記事について,その後,FC2からHTML形式のメールの配信を受けることなどができた。」(45~46頁)

と認定されたサービス態様が、ドワンゴ商標の「電子出版物の提供」(第41類)という指定役務に類似するか、ということが争われることになった。

FC2が「ブロマガ」サービスを始めたのは2009年のことで、「ブロマガ」商標を(慌てて)出願した2012年の時点で既にビジネスモデルは固まっていたはず。
そして、FC2はおそらく「自分たちは単なるコンテンツの媒介者であってコンテンツの提供主体ではない」というアイデンティティの下、自社出願商標の指定役務も第42類に絞ったのだろう。

だが、ドワンゴはそれを承知で、あえて後発の自社出願時に「第41類」まで指定役務を展開し、ここで打ち合いの武器として使ってきたのである。

傍から見ていると、両当事者とも似たようなビジネスモデルで勝負していたように見えた時代もあったし、当然お互い手の内は分かった上での主張の応酬。
角度のないところからギリギリのコースを狙ってシュートを打ち合うような双方の主張を眺めて痺れるような感覚に襲われたのは筆者だけだろうか・・・。

意外とあっさりだった裁判所の判断と、後に漂う苦味。

さて、そんなせめぎあいの中、裁判所は意外とシンプルに結論を出した。
まずFC2の請求に対する判断は以下のとおり。

「ある業務を行うに当たり必然的に伴う役務における標章の使用に対し,その役務と同一又は類似する役務を指定役務とする商標の商標権者が商標権の侵害を主張することができることが適当でない場合があるとしても,本件についてみると,一般的に,利用者がブログを開設,投稿して他人にそれを閲覧させるためのプラットフォームを提供するサービスは独立した役務といえるところ,前記 エのとおり,ニコニコのウェブサイトでは,会費を支払ったプレミアム会員であれば享受することができるサービスの一つとして,自らブログを開設し,ウェブサイト上にブログを投稿することができることが明確に表示されている。また,サービスの利用にあたっても,ブログを開設することができることが表示され,それに従い所定の操作を行うことで,ブログが開設され,また,ユーザーがそのブログを閲覧することができる。」

(中略)

「「ユーザーブロマガ」においては,ブログ記事をウェブでユーザーから閲覧することができるようにするだけでなく,ブログ記事をメール配信することができ,それが特徴となっていることが認められる。しかし,「ユーザーブロマガ」において,ユーザーは全員がメール配信するかしないかを選択することとなっていて,ブログを開設し,ブログ記事を投稿し,閲覧させる役務は,一般にも独立したサービスとして提供されているものである一方,「ユーザーブロマガ」において,ブログを開設しブログ記事を投稿する者にとって,メールを配信しないことが例外的な態様であるとまではいえず,メールの配信が不可欠の要素となっているとはいえない。さらに,ニコニコのウェブサイトで提供するサービスについての対価は,ブログ記事を投稿等する機能のみに対する対価として徴収されているものではないものの,そもそも,その対価はニコニコのウェブサイトにおいて提供されている多様なサービス全ての対価であり,そこには独立して提供し得る様々なサービスが含まれていて,ブログ記事の配信という特定のサービスのみについての対価ではない。」

「このことを考慮すると,ブログを開設等する機能のみに対する対価が徴収されていないことが,直ちにそれに関する役務が商標法上の役務といえないことの根拠になるとはいえない。そして,対価を支払った会員が受けられるサービスの中には,上記のように独立したサービスとして提供されるブログ開設及びブログ記事作成,投稿機能も含まれていることなどを考えると,本件の事実関係の下においては,ドワンゴが主張するように「ユーザーブロマガ」サービスにおけるブログの開設及びブログ記事の作成・投稿機能が,他のサービスなどに付随して提供される業務であって商標法上の役務には含まれないということはできないというべきである。

「また,ドワンゴは,インターネットを利用するほぼ全てのサービスが,サーバーの記憶領域への保存を伴うから,ドワンゴが提供するサービスが,甲商標の指定役務である「インターネットにおけるブログのための/サーバーの記憶領域の貸与」と同一又は類似すると解釈することは実務に混乱をきたすと主張する。しかし,インターネットを利用するサービスにサーバーの記憶領域への保存を伴うものが多いとしても,そのサービスには様々なものがあり,それらのサービスの全てにおいてサーバーへの記憶領域への貸与が独立した役務と認められるとは限らず,本件においては,本件で問題となっているサービスについて,ブログのためのサーバーの記憶領域の貸与が商標法上の役務と認められたものであり,ドワンゴの主張は採用することができない。」(以上32~34頁)

この解釈判断であれば、「記憶領域の貸与」を指定役務に入れておけば、サーバを用いてWeb上で提供されるほとんどのサービスに権利主張できる、ということになり、第9類との備考類似との関係でも微妙な問題をはらむことになりそうだが*7、裁判所はそれも「是」とした。

一方、裁判所は、ドワンゴの請求に関しても、以下のとおりFC2の商標権侵害を肯定した。

「利用者は,FC2のサービスを利用することによって,上記のような態様で,第三者が作成したまとまりのある文書・図画を閲覧等することができるようになるのであり,同サービスにおいては,電子出版物の提供又は通信ネットワークを利用した電子書籍及び電子定期刊行物の提供に,少なくとも類似した役務が提供されているといえる。 そして,前記 のブログ記事の購入に当たり用いられている甲標章の使用態様によれば,電磁的方法により行う映像面を介したこの役務の提供に当たり,映像面に乙商標と類似する甲標章が付されていたと認められる。」

「FC2は,「電子出版物」とは,いわゆる電子書籍を意味してFC2のブログサービスは「電子出版物の提供」に該当しないと主張し,また,ブログ記事の配信を行う主体はユーザーであり,FC2ではなく,FC2はその媒介をしているにすぎないから,ブログ記事の配信が「電子出版物の提供」に該当するとしても,FC2のブログサービスは「電子出版物の提供」の媒介であって,「電子出版物の提供」には該当しないと主張するしかし,前記イの態様に照らせば,FC2の上記のブロマガの販売に関するサービスについては,少なくとも,前記役務に類似した役務が提供されているといえる。」(以上46頁)

東京地裁は、FC2、ドワンゴのいずれの主張に係る判断についても、「本件態様に照らせば」という趣旨の留保を付して、本判決における判断の射程が過度に広がらないように配慮している様子も見受けられるのだが、実務者がこれを見たら、やっぱり事前の商標調査はどうしても”安全サイド”に向かっていくのかな、という気がする。

なお、両当事者とも、映し鏡のように「先使用の抗弁」、「商標法4条1項10号の無効事由の存在」、「自社保有商標の正当な権利行使」といった反論を試みているのだが、前二者に関してはいずれも「需要者の間に広く認識されていたとはいえない」という理由により、最後の点に関しては侵害を肯定したのと表裏の理屈で、いずれも退けられている。

いずれの「ブロマガ」サービスも、少なくとも同種のWebサービスを頻繁に利用しているユーザーの間では、広く認識されていた、といっても良いレベルではなかったのかな?と思わなくもないところだが、この部分の立証が難しいのはリアルビジネスの場合と同様、ということと理解している*8

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