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韓国の反日不買運動は本物か?反日ムードにも動じない「日本アニメ」の力 - 崔 碩栄 (ジャーナリスト)

日本のマスコミに登場する「反日不買運動」の姿

 日本が半導体製造の材料として利用される3品目の韓国向け輸出における優待措置を廃止したことで、日韓両国間の対立が悪化している。優待措置の中止について韓国のマスコミや政府は「報復」、「経済侵略」などという過激な表現を用いて宣伝することで国民感情を刺激し、その刺激に率直に反応した国民は日本に対する反感を隠そうともしない。

 その中でも日本のメディアで取り上げられ、注目を集めているのが「日本製品不買(不売)運動」という民族主義的、国粋主義的な運動だ。市民団体が日本ブランドであるトヨタ、ソニー、ホンダ、パナソニック、ユニクロなどに対する不買を訴えながら韓国で大人気のアサヒビールをぶちまけるパフォーマンスを、学生たちが韓国の筆記用具市場を席巻する日本メーカー、ジェットストリームやユニの筆記用具をゴミ箱に捨てながら日本産を 使うまいと宣言する姿がテレビや新聞を通じて紹介された。

 韓国マスコミにも誇るべき市民、健気な学生という扱いで報道されたこれらの様子は恐らく現在の韓国社会が望む「理想的な愛国者」の姿である(彼らの勇姿を伝えるビデオカメラやデジカメの99.9%は日本製だが)。

韓国で日曜日の風物詩になった「ワンピース」

 「トレンドキーワード」というのがある。インターネット検索エンジンGoogleやYahooなどで今話題になっている、あるいは、流行っているキーワードのことだ。例えば、先週の日曜日には選挙や吉本芸人の会見が話題となり、GoogleやYahooで投票率、選挙結果、そして芸人の名前を検索する人が急増した。

 こうした、人々に注目され、検索された言葉が「トレンドキーワード」であり、それに順位をつけたものが「トレンドキーワードランキング」であるが、この「トレンドキーワードランキング」は世間の関心事、流行を映し出す鏡だともいえる。

 このトレンドランキングに登場するキーワードは大きく分けて2つに分類することができる。一つは事故や事件が起きたときに突然浮上するキーワードで、もう一つは季節など、一定の時期になると周期的に登場するキーワードだ。例えば、先週起きた凄惨な放火事件に関連して急増した「京都アニメーション」というキーワードは前者の例として挙げることができる。後者の例は春になると急増する「花見名所」、あるいは夏になると急増する「花火大会」などである。

 トレンドキーワードは、ビジネスマーケティングの世界では既に無視することのできない重要データとして使用されているが、これらのキーワードは「韓国の素顔」を窺い知ることのできる興味深い資料でもある。

 ところで毎週日曜日の風物詩といえば何を思い浮かべるだろうか? 日本であれば夕方には「笑点」や「サザエさん」が当然のように放送され、これを見て「明日からまた仕事(学校)か」と休日の終わりを実感する人も少なくないのではないだろうか?

 韓国にも、毎週日曜日の午後のルーティンがある。日本の「笑点」や「サザエさん」のような長い歴史はないのだが、日曜日の午後になると必ずトレンドキーワードランキングに登場する風物詩。それは日本のアニメーション「ワンピース」だ。

午前 日本で放送されたアニメを 午後 韓国で韓国語で視る

 世界的に大ヒットした日本のアニメーション「ワンピース」の人気は韓国においても例外ではない。漫画本はもちろんのこと、アニメーション、関連製品まで、非常な人気を誇っている。その人気がどれほどのものかというと、「需要」に「供給」が追い付けないほどだ。

<韓国最大ポータルサイトNaverの日曜日(21日)の世代別トレンドキーワードランキング。10代はもちろん40代まで同日午前中に日本で放送された「ワンピース」の動画「원피스 894화 애니」を探している>

 先週の日曜日、7月21日の韓国のポータルサイトNAVERのトレンドキーワードランキング、16時の世代別ランキングに注目してみよう。「ワンピース894話 アニメ」というキーワードが10代から40代までのランキングにランクインしている。10代、20代では8位、30代では16位、40代では19位でのランクインだ。

 ここで面白いのは「894話」という数字である。「894話」は日本で同じ日(21日)の9時30分に初回放送されたエピソードだ。というのは、僅か7時間後、韓国のインターネット上ではこれを捜し求める人たちが急増したことを意味する。

 韓国で未放送の「894話」を10~40代という幅広い世代の韓国人が検索する理由は何だろうか? もちろん、韓国語字幕の付いたワンピース「894話」を視聴するためだ。日本で午前中に放送されたアニメーションをわずか7時間後には誰かだかにより勝手に翻訳され韓国のインターネット上に不法公開され、共有される。それを当然のように待っている人たちがそれを見ようとキーワードを打ち込んだのだ。

 実のところワンピースのように世界的な人気を誇るアニメについていえば、このようなケースは韓国だけでなく、他の国でも見ることのできる風景である。インターネットをほんの少し注意してみれば、日本で放映されたワンピースが僅か数時間後には英語、イタリア語、スペイン語などの字幕がつけられ公開されているのを簡単に見つけることができるだろう。著作権保護のためにいくら世界各国が努力していたとしても、個人が不法にアップロードしたものを全て取り締まるのが簡単ではないことは周知の事実だ。

 だか他の国と韓国が違うのは、他の国では日本製品不買運動、日本旅行中止宣言のような激しい反日運動は起きていないという点だ。韓国は日本に対し強い反感と不信感を表明し、製品・商品の販売・購入は拒絶しておきながら、毎週日曜日になると小学生から40代の中年世代までもが、不法行為だということは気にも留めずに「ワンピース」の動画を求め、ネット上を彷徨う。まるで大秘宝(ワンピース)を探しに海(ネット)に出る海賊(不法動画利用者)ように。

表裏不一致の不均等性がもたらす悲劇

 人は虚偽の姿を演じないで、自分に素直でいるときが、最もストレスから解放され過ごせるはずだ。好きなものがあれば素直に、それを食べたい、欲しい、好きだ、と、嫌いなものがあれば素直に、それは嫌だ、見たくない、欲しくない、と表明すること。つまり、外部からの刺激に対して自分の気持ちを素直に表現することができたら気楽だし、穏やかな気分で過ごせるのではないか。

 逆に、思っていることを表現することが出来ず、心にもないことを言わなければならないとき、人は表と裏の不一致にストレスを感じる。同調圧力によりやりたくない行動をした時、その場しのぎの嘘をついてしまった時、人間はその理不尽さと矛盾を感じ自分に失望したり、罪悪感に苦しんだりするのだ。

 多くの韓国人がカメラの前で、大衆の前では日本企業を非難し、日本の酒をぶちまけ、日本旅行放棄宣言をしてみせている。だが、だれも見ていないひとりの時間には毎週、誰かが、しかも不法でアップロードした「ワンピース」を求め、ネット上でそれを探し続けているのだ。このような二重生活を続けることは結局、その人にとって、そして韓国にとってマイナスになる可能性が高い。その矛盾を正当化するためには、世界を歪めて見つめなければならなくなるからだ。

 私が今回、韓国で起こっている日本製品不買運動を見て感じるのは個人の、それぞれの好み、嗜好が無視され、同調圧力や社会の空気によって進められているように見えるということだ。そして日本のマスコミが、その部分にだけ執拗にフォーカスを当て、まるで(表面的な)不買運動だけが韓国の雰囲気を代表する姿であるかのように報道しているのはとても残念に思う。ワンピースの動画を求め探し回っている韓国人の姿がマスコミの目には見えないのだろうか?あるいは見てはならない姿なのだろうか?

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