- 2019年07月23日 21:35
コマツ、装甲車輌開発から撤退
2/2そもそも同車の搭載しているNBCシステムはほとんどが外国製であり、国産は車体だけ。エンジンも外国製だ。高いコストをかけて少数で、高い調達費用をかけて専用の車体まで開発して国産開発、生産する必要があったのだろうか。
コマツの装甲車の開発能力は高くない。率直に申し上げて、3流であり、せいぜい80年代レベルに過ぎず、トルコやUAE(アラブ首長国連邦)、南アフリカ、シンガポールなどのメーカーに比べて技術的に相当遅れている。ところが自衛隊もコマツも自分たちの見識や技術を客観的に見ることができていない。
それはひとりコマツのみならず、防衛省、陸上自衛隊の側の当事者意識及び能力の欠如が原因である。例えば軽装甲機動車の防弾能力の要求仕様は紛争地でゲリラなどが多用するライフルで使用される、7.62×39ミリカラシニコフ弾に耐えられれば良いとされおり、より強力な7.62×51ミリNATO弾及び7.62×54ミリロシアン弾には耐えられない。つまりNATO規格のレベル1の防御力すら満たしていない。

しかも被弾時に装甲内面が剥離して乗員傷つけるのを防ぐスポールライナーは経費がかかると省略された。当初左右のドアのガラスも防弾ガラスではなく、車内の騒音もひどい。しかも不整地走行能力が低く軍用装甲車のレベルにない。技術のレベルとしては70年代の装甲車である。
そもそも4名乗りの小型装甲車をAPC(主力兵員輸送車)としている奇特な軍隊は自衛隊以外に存在しない。8名の分隊が2つに分かれる上に、固有の無線機も機銃も装備していないので分隊長が分隊をまともに把握・指揮できない。
下車戦闘の場合は乗員も全員が下車戦闘するので、車輌の機動及び、火力支援が得られない。機械化歩兵のメリットをわざわざ捨てているのだ。つまり、陸幕は発注側としてまともな運用構想も要求仕様も書けなかった。発注の能力が低ければメーカーの能力も相応に低くなるのが当然だろう。
コマツの弾薬ビジネスも安泰ではない。先に発表された来年度からの防衛大綱は現大綱を引き継ぎ、「戦車及び火砲の現状(平成 30 年度末定数)の規模はそれぞれ約 600 両、約 500 両/門であるが、将来の規模はそれぞれ約 300 両、約 300 両/門とする」としている。つまり、コマツの弾薬の将来的には単純計算で売上が半減することが予想される。
コマツは榴弾砲などの精密誘導砲弾の研究を行っていたが、これを中止した。現在陸上自衛隊は榴弾砲、迫撃砲に精密誘導砲弾を導入していないが、将来これらを導入することになるだろう。人民解放軍や途上国ですら導入しているからだ。
そうなれば当然、精密誘導砲弾は輸入品になる。しかもこれらは通常砲弾の数倍の値段なので、国内の通常弾薬の調達予算は更に減ることになり、当然コマツの弾薬ビジネスの売上は減少するだろう。そうなれば弾薬の製造ラインの維持は極めて困難だ。また近年財務省は国内の弾薬メーカーの数が多すぎて、調達コストが高いと批判しており、弾薬メーカーの再編を提案している。これらのことからコマツは近い将来、防衛産業から完全に撤退する可能性が高い。
次期防衛大綱は次のように述べている。
「少量多種生産による高コスト化、国際競争力の不足等の課題を克服し、変化する安全保障環境に的確に対応できるよう、産業基盤を強靭化する必要がある」
また、中期防衛力整備計画には以下のようにある。
「国内調達の費用対効果が低い装備品について、輸入における価格低減の検討、国内向け独自仕様の縮小等の検討により、国内外の企業間競争の促進を図る」
だが防衛産業はこれまで大きな利益を得てきたはずだ。少なくとも国際価格の何倍も高い調達単価の装備を税金で支払ってもらってきた。コマツのように業績が順調で、防衛依存率の低い大企業、特に上場企業は株主のみならず国や納税者に迷惑がかからない形での撤退をするように努力すべきで、それが社会に対する企業の責任だろう。
しかしコマツにはその気がないようだ。コマツは特機(防衛)部門を恥ずかしい事業と考えていたようだ。自社のサイトにも特機事業は紹介せず、歴代社長は特機部門の朝礼でスキャンダルだけは起こしてくれるなと訓令してきた。
これまでコマツが蓄積した装甲車輌技術や人材は同社が開発してきたハイブリッド駆動システムなどの技術も含めて霧消するだろう。それはコマツの経営陣の当事者意識の欠如と問題先送りの責任逃れの成れの果ての姿だ。名経営者と謳われた坂根正弘元会長もその一人だ。
多額の税金を投じて蓄積された防衛技術基盤が無責任に失われていく。
装甲車両に関してはもっと早い段階から打てる手はあったはずだ。例えば三菱重工、日立あたりと事業統合、事業を売却するなど選択はあった。だが歴代のコマツの経営陣はそれを行わず前例踏襲を繰り返し、現状維持に固執して、茹でガエル状態となって両手を上げてしまった。
恐らくは同社の弾薬ビジネスも近い将来同じ道をたどるだろう。これは官の側の指導力にも問題がある。防衛省、経産省ともに防衛産業をどうするかというグランドデザインがなく、当事者意識も能力も欠けている。やる気がなく、将来長年に渡って多額の税金を使って蓄積した防衛技術基盤を安易に放棄するような防衛関連企業による国内調達は早めにやめて輸入に切り替えるか、やる気のある国内中小企業に切り替えるべきだ。既存の防衛関連企業を守ることだけが、国内防衛基盤の維持ではない。
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