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コマツ、装甲車輌開発から撤退

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トップ写真:82式指揮通信車 出典:Flickr;JGSDF

【まとめ】

・装備契約者コマツの近年の装甲車輌は開発の失敗が相次いだ。

・日本の軽装甲機動車の防弾能力はNATO規格レベル1以下の防御力。

・コマツ撤退により多額の税金により蓄積された防衛技術基盤が損失。

【注:この記事には複数の写真が含まれています。サイトによっては全て表示されないことがあります。その場合はJapan In-depthのサイトhttps://japan-indepth.jp/?p=47023でお読みください。】

本年3月自衛隊向けに砲弾や装輪装甲車輌等を生産してきたコマツ装甲車輌の開発、生産から事実上撤退を決意した。同社は今後今後新規の装甲車開発は行なわず、現在生産中のNBC偵察車の生産と、一定期間の既存の装甲車輌の保守だけは行うと同社の広報担当者は説明している。この件は3月に新聞各社が報じたが、その発端となったのは2月の筆者のブログだった。

複数の防衛産業関係者、陸上自衛隊(陸自)将官OBらによると、天下りの将官も1名を除いて全員解雇したという。砲弾も含めたコマツの特機部門からの撤退は時間の問題だろう。

筆者は2014年に東洋経済オンラインにおいてもコマツの特機(防衛)部門の問題点を指摘した。同社は防衛産業から早期に撤退し、経営資源を本業に集中すべである。中途半端に事業を続けて、低性能で他国の何倍も高い装備を作り続けるのは納税者の利益にもならないと指摘した。

コマツの装甲車輌から撤退決定は遅きに失した感がある。だが新聞報道だけを読んでいてはその実態は把握できない。コマツの装甲車輌からの撤退は遅いだけではない。納税者にとって最も悪い、「立つ鳥跡を濁す」形となった。コマツが培ってきた装輪装甲車の開発、生産技術が失われるからだ。それには長年多額の税金が注ぎ込まれてきた。これが無に帰すのだ。同社は自社ベンチャーとして装輪装甲車輌のハイブリット化の研究を行い、これにその後防衛省も予算をつけて研究を行っていたこのような取り組みも無に帰すだろう。

コマツは防衛省の7番目に大きな装備契約者であり平成30年(2018年)の契約額は280億円である。だがコマツの売上は約2.5兆円であり、特機部門(防衛部門)の売り上げはその1.1パーセントに過ぎない。かつてはその2/3が榴弾や戦車砲弾などの弾薬であり、装甲車の売り上げは1/3程度であったが、近年装甲車輌の売上は落ち込んでいた。それは相次ぐ開発の失敗によるところが大きい。

軽装甲機動車は近年の排気ガス規制によって改良が必用となり、防衛省はコマツに対して改良を発注し、28年度予算では改良型6輌が3億円で要求された。単価はそれまでの約3千~3.5万円から5千万円、約1.5倍に高騰した。

このため財務省が難色を示して政府予算に計上されなかった。そもそもこの手の小型4輪装甲車の国際相場は1千万円程度である。財務省が激怒したのも、むべなるかな、である。コマツ、防衛装備庁、陸幕防衛部の認識が甘すぎたとしか言いようがない。

その後エンジンをカミンス社のエンジンに換装するなどしてコスト削減を図るなどの案も検討されたが採用されなかった。またコマツは自社ベンチャーで軽装甲機動車6輪型も開発していたが、これまた陸自には採用されなかった。

更に現用の陸自の96式装甲車の後継となるべき8輪装甲車、「装輪装甲車(改)」の調達も頓挫した。これは三菱重工との競作となったが、コマツが試作を受注したものだった。

▲写真 8輪装甲車(改) 出典:防衛装備庁

小松案はNBC偵察をベースに開発されたものだった。だが防衛省は昨年7月27日、「装輪装甲車(改)」の開発事業の中止を発表した。コマツが、同省の求める耐弾性能を満たす車輌を作れなかったためとされている。しかし関係者によると機動力など含めてかなり問題があったようだ。

「装輪装甲車(改)」および軽装甲機動車の改良型の不採用が重なり、コマツの装甲車輌の売上は激減、今後コマツは装甲車輌の生産ラインの維持できる見込みがなくなった。

なお陸自は軽装甲機動車と高機動車を統合した後継車種の調達を計画している。これに対してもコマツは応じる気はなく、三菱重工やトヨタなどが興味を示している

今後コマツが唯一生産を続けるのは先述のNBC偵察車のみである。NBC偵察車はこれまで20輌ほどが調達されたがこれも実は防弾性能に問題があり、また高額である。

これは陸幕にも問題がある。前線で使わない車輌なので、防弾性能は必要なく装甲はあくまでNBCシステムで車体を加圧するためのもだという認識が要求側にあったからだ。NBC偵察車は今後調達されるのは最大でも30輌程度、実際には20輌も調達されないだろう。これまで平均年に2~3輌の調達に過ぎない。このペースであればこれまでの規模のラインは当然維持できず、工芸レベル、町工場レベルの生産となる。これではこれまでの生産ラインを維持できない。恐らくコマツは生産数を上げて短期で生産を切り上げるように防衛省に依頼するのではないだろうか。

▲写真 NBC偵察車 出典:Flickr;JGSDF

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