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99%は行方不明、深刻化する海のプラごみ

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7月に大阪で開催されたG20サミットでも主要テーマの一つとして大きく取り上げられた海洋プラスチックごみ問題。ごみとして出たら最後、自然に還ることのないプラスチック。海への流出がこのまま続けば、2050年までに海の中のプラスチック量が魚の量を超えるといわれています。私たちが今、知っておかねばならないこととは?海ごみ問題に取り組む団体に話を聞きました。(JAMMIN=山本 めぐみ)

1990年の活動開始から、一貫して海のごみ問題に取り組む


海岸に流れ着いた大量のごみ

東京を拠点に活動する一般社団法人「JEAN」。1990年の立ち上げから29年間、海のごみ問題解決を目指して活動してきました。活動の軸となっているのが、毎年秋に開催される「調べるごみ拾い」こと「国際海岸クリーンアップ(International Coastal Cleanup、以下「ICC」)。世界各地の海岸で同時期に清掃活動を行い、収集したごみを調査して海のごみ問題の根本的な解決方法や改善策を探っています。

「長い間、海ごみの問題は『海辺だけの問題』『ごみがあるなら拾えば良い』というふうに捉えられてきました。確かに、昔はごみを拾うだけできれいになったかもしれません。しかし、早くから海ごみの清掃活動に取り組んできた人たちは『拾うだけでは解決しない』ということを強く感じていました」と話すのは、JEANの事務局長を務める小島(こじま)あずささん。

お話をお伺いした、JEAN事務局長の小島さん(右)と吉野さん(左)。二人が手にしているのは、使い捨てのラッピングペーパーの代替品としてLUSHが提案している「ノットラップ(風呂敷)」。日々の小さなアイデアで、ごみは減らすことができる

「中でもプラスチックごみは自然に還らないので、拾わない限りは海を漂流し、ごみとして存在し続けます。ただ拾うだけでなく、これ以上増えないようにするためのアクションをとっていかなければ問題は解決しません」と警鐘を鳴らします。

海のごみの99%が行方不明。ただ拾うだけでは解決しない、海のごみ問題


プラスチックの輪っかが口にはまった状態で死んで見つかったハワイアンモンクシール

「実は、海のごみの99%は行方不明と言われています」と話すのは、JEANスタッフの吉野美子(よしの・よしこ)さん。

「私たちが目にする海に浮いたり海岸に漂着しているごみは、全体のたった1%にしか過ぎません。残りのごみはどこへ行ってしまったのか、様々な研究が進んでいますが、海の底にも大量のごみが沈んでいるといわれています。さらに、海のごみが生態系にも大きな影響を及ぼしかねないというところまでを理解しないと『ただ拾えばいい』という意識から抜け出すことはできません」(吉野さん)

そもそも海には、一体どんなごみがあるの?


海岸に漂着していたさまざまなごみ。漁具や花火など海岸でよくみられるごみばかりではなく、注射器や神社のお札、入れ歯まである

海には一体どんなごみがあるのでしょうか。

「タバコのフィルターやプラボトル、食べ物の容器などが多いですが、調査すると何故こんなものが、と驚くものが本当にたくさんあります。マヨネーズの空の容器や歯磨き粉のチューブなどは、海では直接使わないものです。梱包資材であるストラップバンド、貨物で使うロープや漁業で使用する漁具、苗木ポットも多いです」

調査のためにクリーンアップを行っている様子。海岸に漂着しているものの中から人工物のごみをすべて拾い、データカードに沿ってごみを細かく分類し、個数で計測して記録する

「内陸部に住んでいる方は『自分は海ごみとは関係ない』と思われるかもしれません。しかし、海は川ともつながっています。陸地で不用意に置き去りにされたものが雨などで流れ、最終的に海に流れ着きます。決して、海辺に住んでいる人や海辺を訪れた人が出したごみだけというわけではないのです」

情報届かず…「失われた50年」


プラスチックの袋(レジ袋状のもの)を飲み込もうとしてのどに詰まり死亡したウミガメ

海ごみの中でも特に多いプラスチックは、太陽や紫外線、気温の変化や波の影響で劣化し、小さな破片になります。これが「マイクロプラスチック」と呼ばれる5ミリ以下のプラスチックです。

「ごみが無数の小さな破片になると、回収することも難しくなります。プラスチックは目に見えないほど小さくなっても分解しないため、回収しない限りずっと海に残り続けます」と小島さん。小さくなればなるほど海の生き物がエサと間違えて誤飲する可能性が高くなり、中には消化器官に詰まって死に至るケースもあるといいます。

「実は、海の生き物のお腹からプラスチックが発見されたという事実は1960年代にすでに報告されていました。しかし研究論文に留まり、なんとかしなければという風潮にはなりませんでした。今でこそインターネットで世界中どこにいても瞬時に情報を手に入れることができますが、当時は学会誌に載ることはあっても一般の市民にこの情報が届くことはなく、研究者が発した警告は埋もれてしまったのです。この50年は失われた50年だと感じています」(小島さん)

プラスチックごみを誤飲して命を落とした海鳥の死骸から回収したごみ。3羽分

さらには、プラスチック製の漁具によって生命を脅かされる生き物もいるといいます。

「漂流している漁網やロープ、釣り糸などが、好奇心で近づいた生き物に絡みつくこともあります。多くがプラスチック(合成繊維)でできていて、とても丈夫で一旦絡みつくと簡単には外れません。素材だけなく、絡みつきやすい・ひっかかりやすいかたちのごみには注意が必要です」(小島さん)

「海に沈んだ漁具や魚網の中に生き物が入り込み、外に出られなくなって死亡する『ゴーストフィッシング』も問題となっています。漁具や漁網が回収されない限り、繰り返し命を失う生き物が出てしまいます。ほかにも、海に堆積したプラスチックごみによって有機物が分解されにくくなって海底がヘドロ化したり、光合成の妨げになって海岸の植物の健全な生育を阻害したりといった問題も起きています」(吉野さん)

深刻な影響が懸念されるマイクロプラスチック


海岸で採集されたマイクロプラスチック

5mm以下の「マイクロプラスチック」は、最初から小さく作られた「一次マイクロプラスチック」と、大きなプラスチックが劣化や衝撃によって小さくなった「二次マイクロプラスチック」の二種類に分けられます。

「洗顔料に入っているスクラブ剤や化粧品のラメなどに含まれる小さな粒、プラスチック製品を作るための中間材料である『レジンペレット』と呼ばれる直径数ミリの粒などが一次マイクロプラスチックに当たります。洗顔料やボディウオッシュなどの化粧品に含まれるものは、実は海外では多くの国で使用や販売が禁じられており塩など自然素材の粒に代替されていますが、日本は現時点で規制はありません。工業用の研磨剤にもプラスチックの粒が使われており、流出による影響が懸念されています」(小島さん)

「海は日光を遮る場所がなく、漂流している大きなプラスチックが紫外線や気温変化で劣化して破片になっていきます。これが二次マイクロプラスチックです。他にも、街中の人工芝や工事現場のプラコーンが使っている間に劣化し、破片がそのまま雨水で運ばれて海まで行くということもあります。皆さんの生活に身近なところでいえばメラミンスポンジもそうです。研磨して綺麗にするスポンジですね。当然削られた小さなスポンジの破片が排水溝から流れ出ていきます。アクリルたわしもそうですね」(吉野さん)

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