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  • S-MAX
  • 2019年07月22日 11:56

そして街はスマートシティになる。ソフトバンクが「SoftBank World 2019」で示した構想の実現性と未来の日本の都市について考える【コラム】

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■自社を実証実験場として利用するソフトバンクの大胆戦略

スマートシティ構想の考え方は理解できたとして、ではこれをどこで実証・実践するのでしょうか。ソフトバンクは自社を社会実験の場として選択しました。

ソフトバンクは2020年度内に本社を現在の汐留から竹芝へと移転する計画を立てており、その本社移転に合わせて竹芝周辺地域をスマートシティの巨大な実証実験エリアとして活用する予定なのです。

スマートシティの実現には、当然ながら数多くの企業や団体、そして自治体の協力が不可欠です。時には自社利益よりもスマートシティ全体としての利益やメリットを優先しなければいけないこともあるため、既存の巨大都市では実証実験もままなりません。

竹芝という新たなウォーターフロントを自社で再整備し、スマートシティの巨大実験場とする案は、大胆でありつつ最も現実的な解だと言えます。

ソフトバンクは「竹芝スマートシティ」と名付け、東急不動産とともに本実証実験を行う

スマートシティ構想でユーザーが気になるのは、やはりプライバシーの問題でしょう。

ソフトバンクの想定では、Wi-Fiスポットのほかに広域通信網の基地局情報やビル内の防犯カメラ、さらには鉄道やバス、タクシーといった交通機関の利用情報なども将来的には活用したいとのことでした。

当然ながらそこに個人を特定するような情報は含まれないか、もしくは防犯カメラの映像のように個人が特定できる情報であっても意図的な解析を行わなければいけないものに関して、敢えて個人を特定することはなく、また特定するメリットもないと担当スタッフは説明しています。

個人情報を企業間で共有することはセキュリティ的にも法的にも不可能に近く、仮にできたとしてもリスクがメリットを上回ります。それよりも、そこに集まっている人々が学生なのか会社員なのか、また鉄道の利用者数の推移や移動範囲などを、集合体として判断することのほうがリスクが低く、経済活動的なメリットが大きくなります。

人口密度が高く、常に広域を移動し続ける都市部だからこそ、個人を特定する意味がないのです。

企業は個人の動きを捉えたいわけではない。「街へ集まる人々」の情報がほしいだけである

■スマートシティは実現するか

現在の都市構造や企業サービスの乱立状況などを考えると、スマートシティ構想など荒唐無稽な絵空事ではないのか、と考えるかもしれません。しかし都市の主要機能である交通や商業施設の運営企業が手を組むだけでも確実にスマートシティの現実味が帯びてきます。

事実、現時点においてもNTTドコモは同社の「my daiz」(マイデイズ)で交通機関の運行状況や代替路線の提案、ショッピング案内、イベント情報の通知、店舗の予約など、利用者の行動を先読みしたAIエージェントサービスを展開しています。

NTTドコモの場合、これをスマートシティ構想とは呼んでいませんが、目指す未来は非常に似通っています。ユーザーには効率的で快適な生活を提供し、企業はそれによって動く人々から収益を得やすくなる、というWin-Winの関係を、通信インフラ企業が取り持つという構造です。

マイデイズは個人に最適化させたアシスタントサービスとして、より踏み込んだ内容となっている

NTTドコモがマイデイズを自社アプリ・自社サービスとして展開する一方で、ソフトバンクは自社によるアプリ展開やソフトバンクブランドで販売しているスマホへのアプリのプリインストールなどは行わず、外部企業のアプリやサービスへビッグデータの提供を行ったり、企業同士の連携を後押しするなど、自社の関与を必要最小限に抑えている点に両企業の戦略の違いを感じます。

ソフトバンクとしては「仕組み」の提供とそれを支える通信インフラによる支援がメインであり、コストパフォーマンス重視の同社のビジネススタイルがここでも強く現れている印象です。

スマートシティというと、何か全く新しい都市計画がこれから始まるかのように捉えられがちですが、実はその片鱗はすでに私たちの生活に溶け込み始めているのです。スマホをプラットフォームとした情報サービスや予約システム、そして電子決済システムに代表されるようなポイント経済圏の構想は、まさにスマートシティを構成する大きな要素の1つだからです。

つまり、ソフトバンクやNTTドコモのような巨大通信キャリアが自社経済圏の拡大を図る中で、スマートシティ構想へと帰結していくのは自然な流れだったのです。

都市社会とデジタル社会の成熟化と巨大化は、街そのものが1つの商業施設であるかのように動かすまでに至りました。店舗から商店街へ、商店街から複合商業施設へ、そして複合商業施設からスマートシティへ。「なんだかよく分からないもの」の代表のような存在であるIoT技術の、最も現実的な活用例がここにあるのかもしれません。

スマートシティという言葉は流行らなくとも、人々が当たり前に利用する未来は近いかもしれない

記事執筆:秋吉 健


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