- 2019年07月21日 08:47
アスクルに明日は来るのか?
1/2単にタイトルのダジャレを書きたかっただけだろ、という突っ込みは甘んじて受けるが*1、実際、傍から見ていると「この会社の明日はどうなるのだろう?」等々、いろいろと考えさせられる話題ではあるわけで・・・。
17日、18日と各メディアでも立て続けにニュースが流れ、いろんな方がいろんなことをおっしゃっているので、ここであえて繰り返すようなこともないのだが、一応、関係する会社から出ているリリースを時系列で並べてみると、以下のような感じになる。
7月17日
ヤフー:アスクル株式会社の第56回定時株主総会における取締役選任議案(第2号議案) に対する当社議決権行使に関するお知らせ
https://about.yahoo.co.jp/pr/release/2019/07/17a/
プラス:アスクル株式会社の第56回定時株主総会における取締役選任議案(第2号議案) に対する当社議決権行使に関するお知らせ
https://www.plus.co.jp/sp/news/201907/0003747.html
アスクル:ヤフー株式会社からの社長退陣要求に関する当社意見と提携解消協議申入れのお知らせ
https://pdf.irpocket.com/C0032/Uxy1/ddHX/sWqW.pdf
ヤフー:アスクル社からの「業務・資本に係る協議の申入れ」の回答について
アスクル社からの「業務・資本に係る協議の申入れ」の回答について - プレスルーム - ヤフー株式会社
ヤフー:アスクル株式会社からの「業務・資本提携に係る協議の申入れ」に関するお知らせ
https://file.swcms.net/file/sw4689/ja/ir/news/auto_20190717472835/pdfFile.pdf
7月18日
ヤフー:アスクル株式会社の本日(2019年7月18日)開催の記者会見について
https://file.swcms.net/file/sw4689/ja/ir/news/auto_20190718473320/pdfFile.pdf
プレスリリースの数で言えば、圧倒的にヤフー株式会社の方が手数が多いのだが、アスクル株式会社のリリースは、それまでのヤフー㈱とのやり取りに係る添付資料も含めると15ページにもわたる長大なもので、しかも18日には岩田社長が大々的に記者会見まで行っている*2。
世論の風向きがどちらを向いているか、と言えば、現時点では何とも言えないところはあって、
「あれこれ言ったって、取締役の最終的な選任権を持っているのは株主で、そこは資本の論理が勝つところなんだからしょうがないだろう」
「再任拒否の口実を与えるような決算を続けたのが悪い」
「そもそも、1位株主と2位株主だけで過半数取られてしまうような状況を作り出した方が悪い」
という声もあれば、
「アスクルの指名・報酬委員会が決めた次期取締役候補者を、資本の論理で一方的に覆すのはおかしい」
「そもそも『LOHACO 事業』の再編が首尾よく進まなかったことの腹いせ的な人事介入ではないか」*3
といった声もある。
「指名・報酬委員会」が決めた候補者を覆す形になることに関しては、アスクルのプレスリリースに添付されている「アスクル株式会社独立役員会」の書面にも、
「Y 社は、当社に派遣している取締役を通じて、当社が指名・報酬委員会における次期取締役候補者の検討を進めている経緯を了知しているにもかかわらず、定時株主総会に上程する取締役選任議案を決定する指名・報酬委員会及び取締役会の開催予定日(2019 年 7 月 3 日)の直前に突如として岩田社長の退陣を要求してきたものであり、まさに数の論理で上場企業たる当社の指名・報酬委員会によるプロセスを踏みにじろうとしたものです。本件業務・資本提携契約第 3.2 条第3 項では、当社取締役選任に係る議案は、当社が設置する指名・報酬委員会の答申を最大限尊重して当社取締役会で決定すると定められていますが、今般の Y 社による岩田社長退陣要求は上記条項の趣旨に反するばかりでなく、上場企業としての当社におけるガバナンス体制を全く尊重していないものと言わざるを得ず、極めて遺憾であります。」(強調筆者)
というコメントが記されているのだが、「指名・報酬委員会」はあくまで内部機関でしかなく、最終的な選任・非選任の判断を行うのが株主総会であることに変わりはない。
そして、アスクルが閉鎖会社ではなく一部上場の公開会社であることを踏まえると、上記で引用されている「業務・資本提携契約」の中で、特定の株主の株主総会での議決権行使に関し、明確な制約(取締役会が提出した議案には常に賛成する、等)が課されていることも考えにくいわけで、社内の独立した委員会の判断といえど、それに対して、「尊重」する、という精神条項以上の拘束力があるわけではないとすると、法的見地からはアスクルの方が分が悪い、ということになりそうである*4。
- 企業法務戦士(id:FJneo1994)
- 企業の法務担当者。法律の側面からニュースを分析。