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テレビ局とジャニーズ事務所の関係はいかに変遷してきたか

ジャニーズ事務所とテレビ局の関係とは

 7月17日、民放テレビ局などに対し、SMAPの元メンバーである稲垣吾郎、草なぎ剛、香取慎吾の3人を出演させないように圧力をかけていた疑いがあるとして、ジャニーズ事務所が公正取引委員会から注意を受けたことが明らかになった。

【写真】ジャニーズ事務所から圧力をかけられた疑いが報じられている香取慎吾

 ジャニーズ側は「弊社がテレビ局に圧力などをかけた事実はなく、公正取引委員会からも独占禁止法違反行為があったとして行政処分や警告を受けたものでもありません。とはいえ、このような当局からの調査を受けたことは重く受け止め、今後は誤解を受けないように留意したいと思います」とコメントを発表した。

 はたして、ジャニーズ事務所とテレビ局はどのような関係にあったのか。著書『田原俊彦論 芸能界アイドル戦記1979-2018』(青弓社)の中で、『特別検証:田原俊彦とジャニーズ共演NG説を追う』という項目で詳細な研究をしている芸能研究家の岡野誠氏が考察する(以下、テレビ番組の放送年月日、局は関東地区)。

 * * *
 今では考えられないが、テレビのワイドショーは1980年代から1990年代前半にかけて、ジャニーズ事務所のトップだった田原俊彦や近藤真彦のプライベートを追い掛け回していた。忖度どころか、遠慮などまるでなかった。

 当時を知る人たちからすれば、今回のニュースは隔世の感があるだろう。テレビ局とジャニーズ事務所のパワーバランスは、どう変わっていったのか。

 1994年3月1日に独立した田原俊彦を例に考えると、いろいろな事柄が見えてくる。当時の彼の主なテレビ出演を振り返ってみよう。

 この年の9月16日、2時間ドラマ『怪談III 牡丹燈篭』(フジテレビ系)に主演。篠ひろ子や内田有紀が名を連ねた10月21日開始の連続ドラマ『半熟卵』(フジテレビ系)にも脇役ながら出演していた。4話では、V6デビュー前の森田剛と絡むシーンもあった。

 翌年も、1月4日『世にも奇妙な物語 冬の特別編』(フジテレビ系)でオムニバスの1つ『ブルギさん』に主演した。4月1日には、春の時代劇スペシャル『素浪人 花山大吉』(テレビ朝日系)で松方弘樹に次ぐ2番手で登場。5月1日には、ジャニーズ時代の主演映画『課長島耕作』が21時からTBS系で放送されている。

 1987年から7年連続で続いていた連続ドラマ主演は、1994年に途絶えたが、それを独立と結びつけるのは早計である。前年の『愛してるよ!』(テレビ朝日系)は全話平均視聴率9.9%に終わっており、1990年代に入ってから『教師びんびん物語』(フジテレビ系)のようなヒット作に恵まれなかったことが原因の1つと考えられる。

 ワイドショーやスポーツ紙、週刊誌にバッシングを受けたことによるイメージの悪化も大きな理由だろう。田原は1993年10月に結婚したが、マスコミの直撃取材に応じず、コメントも出さなかった。今ではSNSやFAXで発表すれば事足りるが、当時は記者会見を開くことを当然のように求められた。連日マスコミに追われていた田原は仕方なく、1994年2月17日に長女誕生会見を行なう。

 この時、のちに傲慢と叩かれる「僕くらいビッグになると」という軽い冗談が出た。翌日の朝刊スポーツ紙の見出しに“ビッグ”が1つもなかったように、当初はさほど問題視されていなかったが、時が経つに連れてバッシングが激しくなっていった。

 報道を時系列で追うと、メディア側に「独立したから叩いても問題なし」という認識があったように思える。

 また、田原は1994年のジャニーズ事務所独立以降、所属タレントと共演NGになったと考えられているが、実は2度、同じ番組に出演している。1994年10月12日放送の『’94夜のヒットスタジオ超豪華!秋スペシャル』で少年隊や光GENJI SUPER 5と、1995年4月5日放送の『’95夜のヒットスタジオ・グレートアーティスト・超豪華!春のスペシャル』(ともにフジテレビ系)でSMAPと同じ画面に映っているのだ。

 拙著『田原俊彦論』で、私は2つの番組を取り仕切った渡邉光男プロデューサーに事務所からの圧力の有無を聞いた。すると、こんな答えが返ってきた。

〈僕は、あからさまに言われたことはないですね。別にメリーさんもジャニーさんも、僕に何か言ったことはないですよ。『トシが出るなら、ウチのコを出さないよ』なんて言われたことない〉

 独立後に唯一、ジャニーズアイドルと共演させた制作サイドに、事務所からの圧力はなかったわけだ。当時はまだ共演NG説など取り上げられていなかったが、2019年7月18日の『スッキリ』(日本テレビ系)で加藤浩次が話したような“大手事務所から独立すると、数年干される”は業界内で周知の事実とされていたはずで、渡邉氏の気概を感じる。

◆考えられる2つの理由

 一方で、人の言葉を受け止める場合は、背景も知っておかなければならない。渡邉氏は1968年11月の『夜のヒットスタジオ』開始時から同番組に関わっている。当時のジャニーズ事務所は初代グループのジャニーズが1967年に解散し、2代目グループのフォーリーブスがその翌年デビューしたばかり。決して大手事務所とは呼べず、1970年代後半にはスターを生めず、苦境に陥っていた。

 その当時から付き合いのある制作スタッフに対して、事務所が何かを言うことは考えづらい。『夜ヒット』は高視聴率番組であり、出演した翌日にはレコードが大量に売れるという現象があった。1980年デビューの田原俊彦、近藤真彦、それ以降のシブがき隊やTHE GOOD Bye、少年隊などのブレイクに大きく貢献していた。

 逆にいえば、ジャニーズ事務所が超大手事務所となった1990年代後半以降に入社した局員は、渡邉氏のような関係性を築きづらいだろう。

 独立直後1994年、1995年の田原の活動歴を見ると、意外にもテレビ出演しているという印象を受けるかもしれない。だからといって、忖度がなかったとは言い難い。

 事実のみを列記してみよう。1993年まで新曲発売時期に『ミュージックステーション』(テレビ朝日系)に必ず出演していたが、1994年以降は一度も登場していない。

 田原は1995年10月から『笑っていいとも!』(フジテレビ系)の金曜レギュラーを務めており、同時期にSMAPの中居正広は木曜、香取慎吾と草なぎ剛は火曜に出演していた。となれば、レギュラー全員集合の『クリスマス特大号』ではどうなるのか。同年12月25日放送のVTRを見ると、やや不自然とも思える形で入れ替わるように登場した。結局、前述の『夜ヒットSP』以来、田原は24年以上もジャニーズ事務所のタレントと共演していない。

 そう考えると、テレビ局の“忖度”が始まったのは、おそらく1990年代後半からではないか、と推測される。

 主な理由は、2つ考えられる。1つは、1970年代や1980年代に力を持っていた制作者が1990年代後半以降、現場から退いたこと(幹部になるのはごく一部)。もう1つは、1990年代にジャニーズ事務所からデビューしたSMAP(1991年)、TOKIO(1994年)、V6(1995年)、KinKi Kids(1997年)、嵐(1999年)というグループが全て大ブレイクし、田原独立の1994年3月時では考えられないほど、超一大勢力となったこと。

 2000年代に入っても、ジャニーズ事務所は人気グループを続々と生み出した。そして、テレビ局のスタッフは“超大手事務所のジャニーズ”しか知らない人ばかりになったのだ。

 田原は2009年に私が取材した時、こう述べていた。

〈俺に力があれば、オファーはくるんだよ。そうじゃないから、俺の現状がある。それは、認めなきゃいけない。ジャニーズの弊害と言うつもりは一切ない〉(FLASH・2009年7月21日号)

「新しい地図」の稲垣吾郎、草なぎ剛、香取慎吾も不満や愚痴を語らず、新たな分野に挑戦している。だが一方で、今回の報道は、卒業した所属タレントとの共演を実現するチャンスとも考えられる。新しい展開を待ちたい。

■文/岡野誠:ライター・芸能研究家。著書『田原俊彦論 芸能界アイドル戦記1979-2018』(青弓社)は3刷に。同書には、〈不透明な投票方法「an・an」「嫌いな男一位・田原俊彦」への疑問〉〈たった一週間で扱い方が急変した「ビッグ発言」〉〈十五分の一に激減したステージに向かう精神力と意地〉などの項目も並んでいる。

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