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「ワイドショーの主役」小泉進次郎の遊説を支える鉄壁の自民党軍団 「ごく普通の38歳」を等身大以上に見せる舞台装置が存在する――ルポ参院選2019 #6 - 常井 健一

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「安倍さんはレガシーをつくった」進次郎から飛び出した発言は何を意味するのか から続く

【写真】遊説する小泉進次郎の写真をすべて見る(全20枚)

 JR予讃線は瀬戸内海の海岸線をなぞるように走る四国のローカル線である。選挙戦中盤の7月13日、香川県と愛媛県の両選挙区(1人区)に入った小泉進次郎はそこを通る特急電車を利用して4か所で演説する予定だった。

 この日、四国一帯では梅雨前線上に発生した低気圧の影響で、台風もかくやという大雨が続いていた。それが原因で、小泉は思わぬトラブルに見舞われてしまう。


 

「選挙の基本」を年上の新人に教え込む

 16時過ぎ、新居浜市役所前の公園でその日3回目の演説を終えたばかりの小泉は、愛媛選挙区の新人候補者と新居浜駅の1番線ホームに立っていた。

 移動中とはいえ、常在戦場である。小泉は向こう側のホームに座っている2人組の女性たちに向かって声をかけ、隣にいる候補者を指さして「この人、よろしくね」と売り込んだ。

「あれ、タスキは?」

 小泉にそう言われた候補者は慌てて一度仕舞ったタスキを取り出した。地元では名の売れたタレント候補者とはいえ、生で見たらタダのおじさんにしか見えない。小泉が「選挙の基本」を年上の新人に教え込む姿は、政治家歴10年のキャリアを窺わせた。

「さっきの演説中、『社会の窓』が開いてたんです」

 候補者がトイレに行った瞬間、付いてきたウグイス嬢が小泉に耳打ちした。

「ホント!? ボクが?」

「いえいえ(笑)。候補者の、です。車に乗っている時に直して」

「そうかあ、開いてんだったら、2人で開いていたほうが良かったかなあ。それで、『新しい扉』をこじ開けようと訴えれば良かった。どんな、コンビなんだ(笑)」

 小泉は劣勢に立たされていた愛媛の自民党スタッフたちを笑わせ、場を和ませた。しかし、特急しおかぜ15号に乗り込むと「開かずの扉」に悩まされることになる。

「電車は止まってしまいましたが、選挙戦は止まりません」

 次の遊説先は、50万人都市の松山だった。だが、小泉を乗せた特急は大観衆が待ち構える会場の最寄り駅まであと15分というところで、落石による立ち往生を余儀なくされる。

 同じ頃、松山の街宣車の上では、党女性局長の三原じゅん子がマイクを握っていた。小泉は17時45分には颯爽と現れ、彼女と揃い踏みするはずだったが、予定時間を過ぎても電車の中にカンヅメにされていた。

 18時、小泉は動いた。候補者と一緒に車内のデッキに立ち、20キロ離れた聴衆に語りかけた。

「はーい、もしもし、松山のみなさん、小泉進次郎です」

 演説会場のマイクにあてがわれた携帯から電車が止まっていることを釈明した上でこう締めくくった。

「電車は止まってしまいましたが、選挙戦は止まりません。諦めずに一歩一歩、勝利に向けて支援の輪を広げてください」

永田町にある自民党本部は「小泉救出作戦」に動いた

 候補者にとっては、泣きっ面に蜂だ。小泉は電話を終えると、候補者と並んで席に座り、「ピンチはチャンス」と繰り返し、「プラスに、プラスに」と励まし続ける。

 電車に閉じ込められてから1時間後、ようやく途中下車が許可された。だが、無人駅にはタクシーは1台も止まっていない。松山空港から搭乗する予定だった飛行機にはもう乗れない。四国にある他の空港をいくら探しても、そこから間に合う最終便はない。その日のうちに東京に戻れなければ、翌日からの遊説計画は大きく狂ってしまう――。

 そこで、東京・永田町にある自民党本部は「小泉救出作戦」に動いた。

 まず、足止めを食らっていた無人駅に、松山に待機させていた党の車を向かわせた。小泉が到着を待っている間、党本部は「広島空港なら21時35分発の遅い便がある」ということに気づく。瀬戸内しまなみ海道を走れば、海の向こう側にある広島空港まで1時間半で辿り着く。

 他の乗客より一足早めに車外に出た小泉は無人駅の待合室で車の到着を待った。その間、振り替え輸送のための大型バスが2台到着すると、待合室はごった返した。

「どうぞ、どうぞ、写真撮りましょう。一緒に閉じ込められたカンヅメ仲間なんだから」

 小泉は乗客たちに積極的に語りかけ、一人ひとりの携帯電話にタスキをかけた候補者とのスリーショットを納めさせた。

「これ、SNSでどんどん拡散してよ」

 予定外のフォトセッションは10分ほど続いた。小泉はそこでも新人にしたたかな選挙戦術を見せつけたのである。

 乗客全員がバスに乗り移った頃、小泉を乗せた白のバンも広島空港に向けて走り出した。八方ふさがりの状態から道なき道を切り開き、救出作戦を成功させた背景には、知られざる「特命チーム」の存在があった。

「ごく普通の38歳」を等身大以上に見せる特別の舞台装置

 小泉進次郎という政治家は、天才でも変人でもない。私は「ごく普通の38歳」だと唱えている。政策面ではブレーンたちの助言を得ているようだが、演説技法にいたっては地道な努力の賜物だ。

 しかし、「未来の総理」を強く意識し始めた3年あたり前から、経営コンサルタントの如くわかりにくい横文字を多用したり、凝りすぎたキャッチコピーを得意げに披露したりする場面が目立ち、演説で言い出す「国づくり」の内容は選挙ごとにコロコロ変わる。誰のために何がしたい政治家なのか、わかりやすいようでわからなくなっている。

 それでも、小泉の演説が一定の集客力を保ってこられたのは、自民党の中に「ごく普通の38歳」を等身大以上に見せる特別の舞台装置が存在するからだ。私の手元にある内部資料が、その手がかりの一つとなる。

 タイトルは、「第25回参議院議員通常選挙 事務態勢について」とある。A4判3枚の紙には、220人ほどいる党本部職員全員の名前が記されている。事務方トップに君臨する「永世」事務総長の元宿仁を「統括」に位置付けるそのリストを見ると、一強与党が誇る兵力と布陣が浮かび上がってくる。

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