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宮迫博之を「干しては」いけない

先日、ジャニーズ批判をした。同じ論拠で、今回は「世論」を批判したいと思う。

ジャニーズを批判したのは、事務所が元SMAPのメンバーを「干す」という形でいじめたからだ。いじめには不寛容な態度を貫く。不寛容に対してだけは不寛容であってよい。あるべきだ。これがいじめ対策の「いろは」の「い」である。

同様に、今度はメディアに先導された世論が宮迫博之を「干す」という形でいじめている。ジャニーズが許されないなら、世論も同じ根拠で許されてはならないはずだ。

宮迫氏が吉本興業を辞めるのは(辞めさせられるのは?)かまわない。いてもしょうがないような旧時代の企業で、その点はジャニーズと同じなのだと思う。情けないのはテレビ局である。次々と宮迫氏が出演した番組から「干し」だした。

宮迫氏は犯罪者ではない。犯罪者ならば警察が刑法を根拠に対応する。犯罪幇助者ですらない。幇助すれば、やはり刑法を根拠に対応するだけだ。

宮迫氏のとった行動は社会人として好ましいものではなかったと思うし、けしからん、とすら思う。しかし、それを罰する権利はぼくらにはない。批判したり、非難するのは、まあありかもしれないが、物理的に「干す」という形で罰して、彼の生活を苦境に陥れてもよい、などとは考えてはならない。

それらしい、正当っぽい理由があるからあいつは苦しめても構わない。こういう論拠でこういう行為を行う。これを我々は「いじめ」とよぶ。いじめに正当化できる理由はひとつもない。だから、宮迫氏を「干す」テレビ局は間違っているし、世論がこれをサポートするのも間違いだ。

宮迫氏は「嘘をついていた」という非難もある。非難の根拠としては十分だ。しかし、人間には嘘をつく権利はある。自分や家族を守るために嘘をつく。だれだってやっていることだ。ぼくも、やったことはある。ぼくの患者たちもしばしば嘘をつくが、ぼくはそれを非難しない。医者に嘘をついてはいけない、なんてルールはないし(つかないほうがいいけど)、嘘をついた医者を処罰する権利は医者にはない。行儀の悪い患者は罰せられても構わない、という勘違いした医者は多すぎる。患者が罰せられてもいいのは、彼らが医療者に暴力をふるうなど、具体的な被害がでたり、でそうになったときだけだ(こういうことも、ときどきはある)。

宮迫氏が反社会勢力相手に営業活動をしたり、一緒に食事をして具体的な被害にあったという人は彼を非難したり、場合によっては処罰的な態度に出るのはわかる。しかし、ぼくらのほとんどはそういう宮迫氏により具体的な被害など得ていないはずだ。ぼくは得ていない。雑誌やテレビなどのメディアは宮迫氏のおかげでこの数週間、よい商売すらさせてもらっているのではないか?世間も大いに楽しく暇つぶしをしたのではないか?

宮迫氏は反省すべきかもしれないが、ぼくが彼に反省しろ、というつもりはないし、そんな権利もない。「社会人として態度が悪かった」というなら短期間は謹慎くらいはしてもよいが、ちゃんと芸能界は彼を復帰させてあげるべきだ。吉本興業なんかに忖度してはならない。

そもそも、裏社会とつるまなければ生きていけないよう仕向けた吉本興業こそがシステム・フェイラーの最大の「加害者」なのであり、メディアはこここそ大いに批判すべきだし、改善させるべきだ。ていうか、メディア自身も加害者なんだぞ。この点は。

芸人が十全に社会人として生きていく手段を作らずにおいて、システムが失敗している状態で、個人を非難するのは安全管理上、間違っている。システム改善なしに個人を叩いても、絶対に同じことはまた起きる。

ジャニーズや吉本やテレビなどのメディアの理不尽がまかり通った昭和の時代はとっくに歴史上の時代である。令和という改元は新しい時代を作るよい機会である。やんわりとした奴隷制度は辞めにして、「いじめ」体質とも決別すべきだ。我々「庶民」もその加害者であることを自覚して、そうでない社会を要求すべきだ。

我々には力がある。ジャニーズも、吉本も、客がいなければおしまいなのだ。いじめ体質を改善しなければ、ぼくらこそが彼らを「干せば」よいのである。我々は、不寛容にだけは不寛容になってよいのだから。

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