

小中学生の「夏休みの宿題」といえば、日記や読書感想文などとともに「自由研究」がお決まりだが、近ごろの子どもたちは夏休み中も塾や習い事に忙しく、自由どころかほとんど“親の課題”となっている。果たしてこんな夏休みの宿題、意味があるのか。教育評論家の石川幸夫氏が理想的な自由研究や宿題の目的を改めて考察する。
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いよいよ子どもたちはワクワク、親は憂鬱になる長い夏休みに入ります。早いところでは、エアコン設置工事のため、1週間ほど前倒しして、7月13日から休みに入った学校もあります。
そんな中、子どもも親も頭を抱えるのが夏休みの宿題です。昭和、平成、令和と元号は変わっても、夏休みの宿題は相変わらず「日記」「計算ドリル」「漢字ドリル」「読書感想文」「絵画」、そして多くの親子が頭を抱える「自由研究」という定番の宿題が並びます。
夏休みのように、長期間、規則正しく通っていた学校から離れるというのは、学習面で見れば親はかなり心配ですし、じつは先生も心配なのです。そのため、両者の思いもあってか、昔と変わらない宿題のラインアップが並ぶのだと思います。
事実、オーストリア・グラーツ大学(GrazUniversity)の研究チームは、子どもの長期休暇が算数や国語系に悪影響を及ぼすという調査結果を発表しています。また、その回復には、休暇と同じ期間を有したと報告されています。
しかし、だからといって今も昔も変わらない形骸化している夏休みの宿題は、そろそろ見直しの時期に来ているのかもしれません。
公立の中学では、すでに夏休みの宿題から日々の宿題まで廃止した学校が出てきたことから、教育界ではにわかに宿題の見直し論が高まっています。ただ、廃止といっても、家庭学習を廃止するわけではありません。むしろ、“自主的な家庭学習”の重要性が求められているのです。
もっとも夏休みの自由研究は、子供より親の課題として定着しているのは周知の通りです。いまの小中学生は夏休みであっても塾や習い事に忙しい子が多く、家にいてもゲームやネット(SNSなど)に時間を取られて、じっくりと自由研究に取り組む余裕がないようです。そのため、親が手伝う「関与率」が年々高まっているとのデータもあります。自由研究(宿題)の代行業者が話題となったのも記憶に新しいところです。
自主的に行うにしても、今は工作にせよ自然観察にせよ、書店やネットを探れば自由研究のテーマ選びから完成イメージまで“指南”してくれる材料はたくさん見つかりますし、それを真似るだけの子どもが続出しています。夏休み明けに同じテーマの作品が多数提出されるため、初めから自由研究のテーマをいくつか決めている学校まであるそうです。これでは、まったく自由じゃない自由研究といえます。