記事

公取委の「注意」報道をめぐるモヤモヤ感。

1/2

水曜日の夜くらいから飛び交い始めた「公正取引委員会が元SMAPメンバーの起用妨害に関してジャニーズ事務所を注意」というニュース。

元々「SMAP」をめぐっては、2016年の「屈辱会見」から「解散報道」を経て、「事務所vs三人衆(+残った一人)」のきな臭い話が、嘘かまことか分からない状況の中飛び交っていたし、事務所を離れて以降も決して派手とは言えない活動を地道に続けていた三人衆への共感は、ネット上でも思いのほか強かったから、各Webニュース媒体にしてもSNSにしても、ここぞとばかりに「ジャニーズ事務所ひどい!」という見出しやコメントであふれかえることになった*1

一方、個人的には、最近の公取委の動きに関しては???と思うところが多く、ちょうどその日の朝刊の記事にもツッコミを入れたところだったこともあって*2、一報を聞いたときに浮かんだ心に浮かんだのは、「また公取委飛ばしたのか?」「誰が何の目的でリークしたのか?」といった、モヤモヤした感想。

そして、一晩明け、みんな冷静になってきたかな?という時に、各メディアで流れてきた報道等に接し、よりモヤモヤ感は強まった。
例えば以下の記事。

「公正取引委員会がジャニーズ事務所(東京・港)を注意したことが明らかになった。「退所したSMAP元メンバー3人の番組起用を妨げるような働きかけがあった場合」は独占禁止法違反につながる恐れがあるという内容だ。調査の結果、同法違反を認定するだけの証拠は得られなかったが、3人のテレビ出演が激減する現状を踏まえて警鐘を鳴らした。」
(中略)
「独禁法に基づく措置は3段階ある。違反を認定した場合には再発防止を求める行政処分として排除措置命令を出す。違反の認定に至らなくても違反の恐れがあれば、取りやめを求めて「警告」を発する。ジャニーズ事務所の受けた「注意」はさらに弱い措置で「違反につながる恐れがあるケース」が対象になる。
「公取委は1950~60年代にも松竹、東宝、東映など大手の映画製作・配給会社6社が他社の俳優らの出演作品を自社系列の映画館で上映しないとの協定を結んだとして問題視した。協定は「スター俳優」の囲い込みが狙いだった。一部の会社が協定を脱退、他社も制限条項を削除したことなどから不問とされた。」
「今回公取委が芸能界の問題に取り組んだ背景には、2018年に公取委の有識者会議が出した報告書がある。報告書は多様な働き方を踏まえてフリーランスや芸能人、スポーツ選手も独禁法の保護対象になり得るとし、「不当な取引慣行は独禁法の禁じる『優越的地位の乱用』に当たる可能性がある」と指摘した。」
(以下略)(日本経済新聞2019年7月18日付夕刊・第10面、強調筆者、以下同じ。)

この日経の記事、前日までの各社(日経紙自身も含め)のインパクトのある記事を打ち消すかのように、見出しには「独禁法違反は認められず」と入れたり、「同法違反を認定するだけの証拠は得られなかった」ということを明確に書いていたりするのだが、気になったのは「注意」の内容を、「退所したSMAP元メンバー3人の番組起用を妨げるような働きかけがあった場合」は独占禁止法違反につながる恐れがある」というものだった、と紹介しているところ。

役所とやり取りしたことのある実務者の感覚として、(処分にこそ当たらないとはいえ)処分庁が「注意」という形で外に向けて何かを出すのであれば、最低限、そのきっかけとなる事実の摘示くらいはするはずで、こんな一般論だけで「注意」ということはないだろう、というのが最初のモヤモヤポイントである。

実際、公取委のWebサイトのQ&A*3でも、

Q27 排除措置命令ではどのようなことが命じられるのですか。法的措置ではない警告や注意とはどのようなものですか。
A.排除措置命令では,例えば,価格カルテルの場合には,価格引上げ等の決定の破棄とその周知,再発防止のための対策(例えば,独占禁止法遵守のための行動指針の作成,営業担当者に対する研修)などを命じます。
 また,排除措置命令等の法的措置を採るに足る証拠が得られなかった場合であっても,違反するおそれがある行為があるときは,関係事業者等に対して「警告」を行い,その行為を取りやめること等を指示しています。
 さらに,違反行為の存在を疑うに足る証拠が得られないが,違反につながるおそれがある行為がみられたときには,未然防止を図る観点から「注意」を行っています

と「違反につながるおそれがある行為がみられた」かどうかがポイントになる、ということが明確に書かれているし、当ブログの過去記事*4何とも微妙な公取委の「注意」 - 企業法務戦士の雑感 ~Season2~)で取り上げた数少ない「注意」の公表事例*5でも、被注意者が「電気料金の引き上げ要請」という具体的な行為を行っていた事実が明確に記載されている。

なので、今回も公取委がジャニーズ事務所に対して正式に「注意」をしたのだとすれば「何らかの行為」があったことは認定しているはずだし、リークを受けたのであれば、そこまで含めて聞いていても不思議ではないはずなのだが、なぜそれが記事の中で書かれていないだろうか・・・?

個人的には、それが違反とされるほどの「圧力」だったかどうか(加えて違反認定に至るまでには、後述する行為者の市場シェア等の要件もクリアする必要がある)、という点はともかくとして、ジャニーズ事務所側からテレビ局等に対して何らかのアプローチを行ったかどうか、というのは、「違反につながる恐れ」があるかどうかを判断する上でのもっとも重要な要素だと思っている。

したがって、(まさかそんなことはないと思うが)認定できたのが「三人衆のテレビ出演機会が激減した」等の情況証拠だけで、事務所からテレビ局等に何らかのアプローチを行った事実すら関係者の聞き取りからは認定できなかった、というのであれば、そもそも「注意」するのもおかしな話、ということになる。

本来なら公表されるべきではないものがリークされ、ここまで広く報じるのであれば、肝心のところをぼかさずにきちんと書くべきだろう、というのが、ここで申し上げたかったこと。

あわせて読みたい

「ジャニーズ」の記事一覧へ

トピックス

ランキング

  1. 1

    コロナが炙り出す質低い大人たち

    毒蝮三太夫

  2. 2

    ドラゴンボールが儲かり続ける訳

    fujipon

  3. 3

    元慰安婦団体なぜ内部分裂したか

    文春オンライン

  4. 4

    ブルーインパルス飛行批判に落胆

    かさこ

  5. 5

    報ステ視聴率危機? テレ朝に暗雲

    女性自身

  6. 6

    元自民議員 安倍政権長く続かず

    早川忠孝

  7. 7

    コロナ対策成功は事実 医師指摘

    中村ゆきつぐ

  8. 8

    上場企業レナウン倒産に業界激震

    大関暁夫

  9. 9

    コロナとN国で紅白歌合戦ピンチ

    渡邉裕二

  10. 10

    ひろゆき氏がテラハ問題に言及

    ABEMA TIMES

ランキング一覧

ログイン

ログインするアカウントをお選びください。
以下のいずれかのアカウントでBLOGOSにログインすることができます。

コメントを書き込むには FacebookID、TwitterID のいずれかで認証を行う必要があります。

※livedoorIDでログインした場合、ご利用できるのはフォロー機能、マイページ機能、支持するボタンのみとなります。