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消費税は「増やすより減らせ」とは本当か

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「日本政府が取り組むべき事は、消費増税より消費減税だ」。そんな主張をするMMT(現代貨幣理論)という考え方が注目を集めている。提唱者の一人であるレイトン教授も来日し、消費増税に否定的な見解を示した。一橋大学の佐藤主光教授は「興味深い理論だが、『増税は必要ない』という聞き心地の良い主張をそのまま実行するのは危険だ」と警鐘を鳴らす――。

2019年7月16日、都内で講演したケルトン教授は「財政赤字は悪でも脅威でもない」と持論を展開した。(写真=時事通信フォト)

現代貨幣理論(MMT:Modern Monetary Theory)が注目を集めている。MMTは1990年代にビル・ミッチェル(豪ニューカッスル大学)らによって始まり、主要な提唱者であるステファニー・ケルトン教授(ニューヨーク州立大)が2016年大統領選挙の予備選で、旋風を起こした民主党バーニー・サンダース議員の顧問を務めていたことなどから注目が集まった。

MMT支持者には、日本をその好例と挙げる人も多く、消費税率の引き上げが迫るにつれ、日本でも急速に関心が高まっている。

その主張の核心は「通貨を発行する権限があって自国通貨建て国債を発行する政府は、財政政策において財政赤字や債務残高などを考慮する(財政再建に努める)必要はない」というものだ。むしろ、財政の役割として完全雇用の実現・維持や格差是正など経済政策を重視すべきという。

実際、米国におけるMMT支持者は、国債発行で確保した財源を用いて、政府が基金を作り、失業者を雇用してその業務を担わせる「雇用保障プログラム」(Job Guarantee Program)を提唱する。とはいえ、主流派の経済学者からはインフレを招くといった批判が少なくない。本稿ではこのMMTの主張とその問題点について概観していく。

■平時にも積極的財政政策を主張するMMT

MMTの主張を端的に言えば、政府は財政赤字を気にすることなく、公共事業や福祉プログラムを含めて積極的な財政出動を行うべきということになる。デフレで経済が低迷するとき、マクロ(経済全体)の需要を喚起し、雇用と所得を拡大するよう財政を拡大すべきという主張は、古典的なケインズ経済学と同様だ。

MMTに批判的な主流派の経済学者であっても「例外的な環境における需要管理手段」として財政拡大は容認している。税収が伸びない中での歳出増は財政赤字を増やすことになる。この赤字は国債の起債によって埋め合わせなければならない。民間投資が活発な平時の経済状況であれば、国債の増発は(貸し手に対して借り手が増す結果)資金需要を逼迫(ひっぱく)させて金利の高騰を招くことになる。ここで金利とは資金のやり取りの「価格」にあたる。高金利は借り入れコストを高め民間投資を阻害してしまう。

一方、デフレ下では民間は投資を控え気味だし、家計は将来不安もあり消費を抑えて所得を貯蓄に回している。つまり、民間全体では資金が余っている(貸し手に対して借り手が少ない)状態にある。そうであれば、国債を増発しても金利上昇にはならず、むしろ政府の支出が新たな雇用と所得を生み出し、消費・投資を含む民間需要を回復させるという「好循環」につながる。不況期において財政拡大は有効な処方箋といえる。

しかし、MMTがいう積極的財政出動は不況期に限らない。平時においても必要というのが彼らの主張だ。なぜか? 財政出動の「出口」に対する認識が主流派とMMTとの間では決定的に異なっている。

主流派はいずれ民間企業や家計が活力を取り戻し、経済活動の担い手として需要を満たすよう市場が機能するだろうと考える。失業も減り、完全雇用が回復される。政府の役割はそれまでのつなぎとして需要を底支えすることにある。政府支出にしても、インフラ整備や教育投資など民間の活力を高める分野が望ましい。

他方、MMTは脱デフレのための景気対策ではない。むしろ、民間経済が回復することは見込めず、マクロの需要不足、つまり資金の「カネ余り」現象は「例外的な環境」ではない、むしろ構造的=慢性的と考える。このとき完全雇用を達成するのは市場ではなく、政府の役割ということになる。そのためには必要に応じて財政赤字を続けることも辞さない。

■日本はMMTの実践例か?

それでは平時における財政赤字には、金利上昇やインフレにつながるリスクがないだろうか? MMTは「心配ご無用」という。自国通貨建てで国債を発行する政府は、これをいつでも自国通貨に換えることができるからである。

つまり、中央銀行が貨幣を刷って国債を引き受ければ良い。仮に国債が外国通貨建て(例えば円ではなくドルで調達)だとそうはいかない。国債を買い戻すには外国通貨が必要なため、政府が保有する外貨準備金を取り崩すか、為替市場で外国通貨を調達しなければならないだろう。いずれも自国通貨の為替相場に悪影響を及ぼしかない。

この中央銀行による国債引き受け(「財政ファイナンス」という)は「ヘリコプターマネー論」にも似ている。しかし、MMTとヘリコプターマネー論は違う。後者は主流派同様、財政ファイナンスをデフレが深刻な時の例外的な措置とする。実際、その提唱者の一人であるアデア・ターナー氏も「過度な財政ファイナンスが極めて有害であることを理解することも重要だ」と指摘する通りだ。

これに関連して日本はMMTの実践例とされることがある。黒田日銀総裁の下、異次元の金融緩和を続けて、多額の国債を購入し続けてきたからだ。しかし、MMTが想定する金融政策と日銀の金融緩和策には大きな違いがある。日銀は物価上昇率2%という目標を掲げており、国債購入はその手段と位置付けている。

国債購入の対価として貨幣供給(マネタリーベース)を増やすことで、人々の(今後、物価が上がるだろうという)インフレ期待に働きかけることが狙いだ。いずれインフレ目標が達成されたら、金融緩和は終わるという「出口」を迎えることになる。他方、MMTにおける中央銀行はこうした目標も出口もない。政府の出す財政赤字をひたすら埋める役割を担うにすぎない。その意味で金融政策は財政に従属しており、中央銀行の独立性も失われている。

財政再建への奇策?

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