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かんぽ生命の自己都合営業

かんぽ生命がずっこけた。不正販売が次々と明るみに出たからである。わが実家も、今は亡き父母が、僕という子供が生命保険会社に勤務しているにもかかわらず、簡保を契約していた。当時(20年以上も前)、簡保は高齢者に対する信頼と販売力を誇っていた。

そのかんぽ生命の歯車がどこで狂ったのかは理解していないし、調べる気もない。とはいえ、郵貯グループの民営化の動きと無縁ではないだろう。

2015年、日本郵政と、その支配下にあるゆうちょ銀行、かんぽ生命が株式を上場した。ゆうちょ銀行、かんぽ生命は上場したとはいえ、依然として国営企業である。いつとは定められていないものの、完全民営化が目標となっている。

完全に民営化するには、国が保有している株式をすべて一般投資家に保有してもらわなければならない。投資家とすれば、ゆうちょ銀行、かんぽ生命が魅力的でなければそれらの株式を買わないだろう。ということで、ゆうちょ銀行、かんぽ生命の経営者は業績を上げることに必死となる。

経営者の意識と営業員の意識がどの程度一致していたのかは不明である。しかし、今回のかんぽ生命ずっこけ事件を見るかぎり、経営者が営業員に対して「顧客の意向重視」を強く指示していたとは思えない。ノルマだと新聞紙上などで書かれているが、契約高重視の、少し古典的になりつつある人事評価を取り入れていたようである。

かつての金融市場にはハッピーな時代があった。株価は全体的に上昇し、金利水準が高く、保険に加入すれば積立部分に関して最低5.5%の収益が享受できた。その時代、どのような金融商品であれ、またどのような方法を用いてそれを顧客に勧誘しようが、いずれは結果オーライになった。

今や、誰しもが理解するように、そんなハッピーな時代ではない。営業員は顧客に会い、ニーズを聞き出し、ときにはアドバイスをしつつ、金融商品を勧誘しなければならない。これにはコストがかかるから、金融機関側は高い手数料を徴収する。顧客から評価すると、同じような金融商品であっても、ネットで契約したり売買したりするよりも高くつく。

営業員を使うのなら、その高いコストに見合った付加価値(要するに、契約して良かったと思える点)が必要だということでもある。ネットとほぼ同じものを、アドバイスもろくすっぽせず、経営者から「これを売れ」と言われたから売るのでは、何の付加価値も生まないどころか、押し売りである。

経営者も、この押し売りを阻止することは当然で、さらに付加価値だと何を顧客が評価するのかをじっくり考えなければならない。

今回のかんぽ生命の事件は、経営者も営業員も、現在の金融商品の販売の意味と、それが顧客にもたらす付加価値の意味とをまったく理解していなかった結果だと思えて仕方ない。かんぽ生命のずっこけ事件、これまでの絶対安心という(どこかの年金で聞いたような)郵便局に支えられた地位にあぐらをかき、国家という床柱を背負って上座に安住し、顧客を下座に座らせていた結果だと揶揄されても仕方ない。

蛇足的に付記しておくと、かんぽ生命のずっこけ事件、民間金融機関にとって無縁だとは言えない。この点は続けて書くことにする。

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