記事

高齢期の所得保障を考えるシリーズⅠ 高齢者世帯の家計の現状

2/2

4.高齢者世帯の支出額

では、高齢者世帯の支出額(消費額)はどうだろうか。図表 4では、高齢者世帯の月間支出額を所得階級別に示している。

図表 4 高齢者世帯※1における月間支出額の分布(所得階級別)

※1:対象は世帯主の年齢が65歳以上の世帯である。
※2:最も分布の多い月間支出額を「最頻範囲」としている(赤枠)。
※3:グラフ上50%の線(青線)に該当する月間支出額の中に中央値が含まれる。中央値は、各月間支出額階級の中間値等を代表値として、各月間支出額階級の構成比をもとに累積分布を描き、累積構成比が50%となる月間支出額を直線補完により推計したものである。また、平均値は、各月間支出額階級の中間値を代表値として、加重平均により推計したものである。中央値、平均値とも個票ではなく集計表をもとに算出した値であることに留意が必要である。

男女問わず、単独世帯の所得の最頻範囲である年間所得100~200万円の世帯では、月間支出額は5~10万円が最も多く、例えば月間支出額が10万円(年間120万円)であれば、収入と支出は概ね均衡している。同様に、夫婦のみ世帯の所得の最頻範囲である年間所得300~400万円の世帯では、月間支出額は20~25万円が最も多く、例えば月間支出額が25万円(年間300万円)であれば、こちらも収入と支出が概ね均衡することとなる。ただし、ここで年間所得は、税・社会保険料が引かれる前の金額であり、支出(消費)に使える金額(可処分所得)は所得額よりも少ないことに留意が必要である。

5.高齢者世帯の貯蓄状況

前項でみた通り、多くの高齢者世帯では、フローの所得に応じて支出を調整しながら、家計をやり繰りしている様子がうかがえるが、フローの所得だけで支出を賄えない場合は、貯蓄を取り崩すことになる。そこで最後に、高齢者世帯の貯蓄状況をみることにする(図表 5)。

図表 5 高齢者世帯※1における貯蓄額の分布(所得階級別)

(資料)厚生労働省「平成28年国民生活基礎調査」より作成
※1:対象は65歳以上の者のみで構成されるか、またはこれに18歳未満の未婚の者が加わった世帯である。なお、貯蓄額については、「平成29年国民生活基礎調査」では把握していない。
※2:表の所得階級は、全世帯での所得五分位値(第Ⅰ分位値200万円、第Ⅱ分位値346万円、第Ⅲ分位値529万円、第Ⅳ分位値800万円)をもとにしており、グラフでは第Ⅳ分位と第Ⅴ分位は区別していない。
※3:グラフで最も分布の多い月間支出額を「最頻範囲」としている(赤枠)。
※4:グラフの50%の線(青線)に該当する貯蓄額の中に中央値が含まれる。中央値は、各貯蓄額階級の中間値等を代表値として、各貯蓄額階級の構成比をもとに累積分布を描き、累積構成比が50%となる貯蓄額を直線補完により推計したものである。また、平均値は、各貯蓄額級の中央値等を代表値として、加重平均により推計したものである。中央値、平均値とも個票ではなく集計表をもとに算出した値であることに留意が必要である。

高齢者世帯全体の貯蓄額については、「貯蓄なし」から「2,000万円以上」まで、かなり広がりを持って分布している様子がみて取れる。一方で、単独世帯の所得の最頻範囲が含まれる年間所得0~200万円の世帯では、貯蓄が200万円に満たない世帯が過半を超え、フローの所得のみに生計を依存している世帯が相当数に上ると考えられる。

6.高齢期の所得補償を考えるに当たっての注意点

本稿では、高齢者世帯の家計の状況を整理してきた。今後、高齢期の所得保障を考えていくに当たっては、このようなファクトを押さえた議論が不可欠となるが、その際に注意すべき点を提示して、本稿を締めくくりたい。 まず、平均値だけでなく、中央値や最頻値、全体の分布をみながら議論することである。高齢者世帯の所得、支出、貯蓄のいずれとも、平均値は中央値や最頻値を上回る。平均値だけをみた議論では、高齢者世帯の格差の大きさを見落としてしまう。

次に、公的年金への依存度の高さを前提とすることである。公的年金が唯一の所得源となっている高齢者世帯は半数を超える。私的年金の拡充等、自助を促進する手立てが重要となっているが、並行して、公的年金の給付水準を底上げするための改革も急ぐ必要がある。

最後に、公的年金の給付水準低下の影響を、世帯・個人単位のミクロの視点で捉えることである。マクロ経済スライドによって、公的年金の給付水準は抑制されていくが、これまでは受給者全体でみたマクロ的な所得代替率の議論が中心であった。高齢者世帯は所得のバラつきが大きく、マクロ経済スライドによる給付抑制が厚生年金よりも基礎年金で大きくなることも踏まえれば、給付抑制の影響は各世帯・個人で大きく異なると考えられる。家計の個票データを用いたような、従来よりも精緻な分析を前提とした検討が望まれる。

経済政策部
部長
横山重宏
https://www.murc.jp/professionals/37513/

あわせて読みたい

「年金」の記事一覧へ

トピックス

ランキング

  1. 1

    料金高騰が示す電力自由化の功罪

    WEDGE Infinity

  2. 2

    医師が日本のワクチン報道に嘆き

    中村ゆきつぐ

  3. 3

    音喜多氏が居眠り謝罪 歳費返納

    音喜多 駿(参議院議員 / 東京都選挙区)

  4. 4

    コロナ禍のバイト店員私語に苦言

    かさこ

  5. 5

    毎日が40億円超減資で中小企業に

    岸慶太

  6. 6

    コロナ春に収束向かう? 医師予想

    シェアーズカフェ・オンライン

  7. 7

    感染拡大するスウェーデンの日常

    田近昌也

  8. 8

    SEXなく…夫に不倫自白した女性

    PRESIDENT Online

  9. 9

    テレ東が先陣 マスク着用で好評

    BLOGOS しらべる部

  10. 10

    首相演説を批判 朝日に「何様?」

    鈴木宗男

ランキング一覧

ログイン

ログインするアカウントをお選びください。
以下のいずれかのアカウントでBLOGOSにログインすることができます。

コメントを書き込むには FacebookID、TwitterID のいずれかで認証を行う必要があります。

※livedoorIDでログインした場合、ご利用できるのはフォロー機能、マイページ機能、支持するボタンのみとなります。