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欧米で老後2000万不足が起こらない理由

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老後世帯の平均値=平均像ではない

「老後資金に2000万円必要」とした金融庁の報告書。なぜ炎上したかは、正しく伝わってない面がある。

多くの人が怒りを覚えたのは、金融庁が示した老後世帯の「平均」像だろう。報告書では総務省「家計調査」(2017年)のデータを基に、「夫65歳、妻60歳以上の夫婦のみの無職世帯」の収支を示している。

毎月の実収入が約21万円、実支出が約26万円で、5万円の赤字を埋め合わせるには「20年で約1300万円、30年で約2000万円」が必要になる。65歳時点で保有する平均的な金融資産は2252万円で、多くの年金生活者は「これを取り崩して不足分を賄っている」。ここまではたんなる事実なので、どこにも批判される点はない。

問題なのは、「平均値=平均像」ではないことだ。米国ほどではないが、日本にも2兆円を超える資産を保有する富裕層が存在する。彼らの資産が平均を引き上げるため、単純平均は非現実的な数値になる。

金融広報中央委員会の「家計の金融行動に関する世論調査(二人以上世帯)」(2018年)では、60代の22%、70歳以上では28.6%が「金融資産を保有していない」と回答している。2000万円以上の金融商品を保有しているのは60代で28.2%、70歳以上で27.9%にすぎない。多額の金融資産を保有する「3割」とほとんど保有していない「3割」に高齢者が二極化しているのが現実で、「平均的な高齢者が2000万円の金融資産を保有している」とするのは実態とかけ離れている。こうして(2000万円の蓄えのない)7割の高齢者を中心に「自分たちは生きていけないのか」という不安と怒りが広がったのだろう。

報告書に記された「老後2000万円不足」の攻略法

とはいえ、金融庁を責めてもなにも問題は解決しない。報告書が訴えたかったことは、人生100年時代にそなえて資産寿命を伸ばすことの重要性だ。そのための方法として、①資産形成(運用)、②計画的な取り崩し(節約)、③就労延長の必要がちゃんと書いてある。このうち最も効果が大きいのは③の就労延長、つまり「働くこと」だ。

※写真はイメージです(写真=iStock.com/sorbetto)

65歳から年収300万円の仕事をすれば、10年間で3000万円の追加の収入を得られる。年収200万円なら2000万円、年収100万円でも1000万円だ。運用や節約でこれだけの利益を得ることは不可能だろう。

老後問題とは「老後が長すぎる」という問題なのだから、働いて老後を短くすれば「問題」そのものがなくなってしまう。これは1+1=2のような単純な話で、「生涯現役」はすでに欧米の先進国では当たり前になってきている。

「人生100年時代」の人生設計としては、「長く働く、いっしょに働く(共働き)」しかないと思うのだが、これに反発する中高年のサラリーマンはまだ多い。彼らにとって仕事は「生きがい」ではなく「苦役」なのだ。

世界一会社を憎む日本のサラリーマン

年功序列・終身雇用の日本的な雇用慣行は「ゼネラリストを養成する」との建前の下で、社内でさまざまな部署を異動させ、転勤も当たり前で、会社に「滅私奉公」する社員ばかり生み出してきた。こんな働き方をしていれば、なにひとつ「スペシャル」な知識や技術が身に付かないまま年をとっていくしかない。

20代で仕事を覚え、30代で課長になり、40代でバリバリ働けば、50代で出世して楽できる。そうこうしているうちに定年を迎え、退職金と年金で悠々自適な老後生活が待っている。――こんな人生が実現できたのは70代以上の団塊の世代までだ。

高度成長期の「サラリーマン物語」はいまや完全に崩壊してしまった。平均寿命は90歳に近づき、定年を70歳に引き上げなければ年金制度は維持できないといわれている。20歳で「終身雇用」の会社に就職したとすれば、同じ会社に50年もいることになる。しかも、幹部になれるかどうかは30代で決まるといわれている。出世レースから脱落したあと30~40年も会社にしがみつくしかないとすれば、日本のサラリーマンが世界でいちばん会社を憎むようになり、生涯現役を「無期懲役」と考えるのも無理はない。

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