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なぜ陸上のスーパー女子高生は消えるのか

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日本の女子陸上では、たびたび「スーパー女子高生」が登場する。彼女たちは10代のうちに日本選手権を制覇してしまう。ところが、その後、記録は伸びず、世界でも戦えない。スポーツライターの酒井政人氏は「指導者との関係性や練習環境の整え方などに課題があるようだ」と指摘する――。

女子100メートル決勝。力走する(左から)土井杏南(JAL)、御家瀬緑(北海道・恵庭北高)、和田麻希(ミズノ)=2019年6月28日、福岡・博多の森陸上競技場(写真=時事通信フォト)

■日本の陸上界に現れる「スーパー女子高生」が落ちぶれるワケ

今年の6月下旬に開かれた日本陸上競技選手権は、例年以上に注目を浴びた。大きな理由は2つある。ひとつは、男子100mと200mに出場したサニブラウン・ハキーム(フロリダ大)の活躍。もうひとつは、近年にはなかった「女子高校生フィーバー」だ。

女子100mでは御家瀬緑(恵庭北高)が29年ぶりの“高校生V”に輝き、青山華依(大阪高)が3位、三浦由奈(柴田高)が5位、石堂陽奈(立命館慶祥高)が8位と、4人の高校生が入賞した。

さらに女子200mは景山咲穂(市船橋高)が23秒90(向かい風0.4m/s)で2位に食い込むと、井戸アビゲイル風果(至学館高)が4位、三浦香菜実(東海大相模高)が8位。女子400mは髙島咲季(相洋高)が優勝した青山聖佳(大阪成蹊AC)と同じ53秒68で2位に。さらに川崎夏実(相洋高)が6位、吉岡里奈(西京高)が7位に入った。

こうした結果だけを切り取れば、日本女子短距離界に“明るい未来”を感じる人も多いだろう。しかし、そう書くのは事実に反する。女子高生スプリンターの活躍は、日本女子短距離界の問題が露呈した結果にすぎないからだ。

■男子100mと200mは世界基準で見てもレベルが高いが……

日本選手権といえども、種目によってレベルの差がある。たとえば男子の100mと200mは世界基準で見てもレベルは高いが、女子の短距離種目はそうではない。今秋に開催されるドーハ世界選手権の参加標準記録と比べてみると、よくわかる。左がドーハ世界選手権の参加標準記録で、右が今回の優勝記録だ。

【男子】

100m10.10/10.02(向かい風0.3m/s)

200m20.40/20.35(向かい風1.3m/s)

400m45.30/45.80

【女子】

100m11.24/11.67(追い風0.6m/s)

200m23.02/23.80(向かい風0.4m/s)

400m51.80/53.68

男子は100mと200mでドーハ世界選手権の参加標準記録を突破して、400mもあと0.50秒だった。女子はドーハ世界選手権の参加標準記録まで100mが0.43秒、200mが0.78秒、400mが1.88秒という開きがあった。ちなみに100mの0.43秒というタイム差は、決して「小さな差」ではない。

■女子高生の快挙は「優勝ライン」が下がったことが要因

日本の男子短距離はレベルをグングンと上げているが、日本の女子短距離界は「世界」との差が徐々に広がっている。これは4×100mリレーと4×400mリレーを見てもよくわかる。

男子4×100mリレーは2016年のリオ五輪で銀メダル、翌年のロンドン世界選手権でも銅メダルを獲得。来年の東京五輪では金メダルの期待もかかる。男子4×400mリレーは5月の世界リレー選手権で4位に食い込み、ドーハ世界選手権の出場権をつかんだ。

ドーハ世界選手権のリレー種目は上位16カ国に出場権が与えられるが、日本の女子は4×100mリレーのチャレンジを終了させて、4×400mリレーも出場は難しい状況なのだ。

ただでさえレベルの低い女子短距離界だが、今年の日本選手権は主力が不在だった。100mでは昨年1~3位に入った世古和(CRANE)、福島千里(セイコー)、市川華菜(ミズノ)が欠場。同4位の御家瀬が優勝したわけで、ある意味、順当といえる結果なのだ。

200mでは日本記録保持者で前回Vの福島が欠場。前回2位の市川は今季調子が上がらず、予選で敗退した。400mは前回1位の川田朱夏(東大阪大)と同2位の広沢真愛(日体大)が今季はケガで出遅れたという事情があった。

高校生の快挙は、例年以上に「優勝ライン」「入賞ライン」が下がったという側面と、今年の高校生がハイレベルだったことで起きた現象になる。

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