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「一番大きな功績は出産」発言の対極にいる小泉進次郎は「普通の人々」の味方なのか 「昭和おじさん」とは一線を画しつつも、発言から「私」が消えている――ルポ参院選2019 #4 - 常井 健一

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聴衆に歩み寄る小泉進次郎スピーチの真骨頂は「土と緑」にあった から続く

 政界という場所には、結婚や出産、子育てに悩む世代と異なる感覚や価値観を持ったセンセイたちがいらっしゃる。個人や家族の事情を国家の都合でしか解釈できず、上から目線でセピア色の持論を説きたがる「昭和おじさん」が少なくない。選挙が始まると、彼らは街にやってくる。普段は接することのない、地べたで暮らす人々の前に立った瞬間、その地金は露呈する。

 なかでも、この参院選の大きな争点となっている社会保障問題は、「昭和おじさん」にとっての鬼門だ。今回も自民党三重県連の会長を務める国会議員(68)がやってくれた。マイクを握りながら「(応援する女性現職にとって)6年間の一番大きな功績はですねぇ、子どもをつくったこと」と言い出したのだ。

 私はその報道を知って、「これぞ自民党だ」と思った。


自民党の「昭和おじさん」とは一線を画する発言

 一方、小泉進次郎は今回の全国行脚で「自民党らしくない発言」を続けている。

「(会場には)赤ちゃん連れの方も多く来ています。これから出生率を上げようかと目標を立てていますが、私は必要ないと思う。これよりもやらなきゃいけないことは、産みたい、子どもを育てたい、そういう人たちの希望が叶うお金の使い方、政策の進め方。だから、今年の10月に消費税が10%になって、幼児教育・保育の無償化が始まる。3歳から5歳、無料。それは第一歩にすぎません。

 子どもを預けたい時に預けられる。そういうことを、将来への投資をどんどんしなければならない。そして、産むか、子どもを育てるかは、そういう判断も国が押し付けるのではなくて、国民一人ひとりの選択がしやすい社会をつくっていく。出生率の目標を立てても人口は増えないんだから、だったら増えないことに嘆かない国づくりをする時代なんです」

 出生率に基づいた少子化対策を否定する。この姿勢は小泉の持論に過ぎず、「昭和おじさん」が幅を利かせている自民党の方針ではない。

かつては「独身だから」と逃げていた

 だが、次の遊説先への移動中、周囲にこうも漏らしていた。

「今の社会のあり方とは違う発言が党の中からポロポロ出ている。なんか、時代の変化、若い世代、現役世代の感覚とのズレが相当ある。そこの発想を変えていくといろんな政策の発想が変わってきますよ。『そうではない!』と言い続けたら、やがて変わりますよ」

 そんな小泉も国会議員になってから10年を迎えようとしているが、勇気をもって「そうではない!」と言い出したのは5年ぐらい前。それまでは「結婚して子どもを持ってこそ一人前」と考える昭和おじさんに囲まれながら空気を読み、いつもこうして「鬼門」を避けようとしていた。

「子育てとか、少子化対策とか、それは小泉進次郎にはできないんです。独身だから。言っても説得力がないから」(2012年12月9日、埼玉県朝霞市での演説より)

「仕事と家庭を両立するのが当たり前」世代の選挙戦

 全国の昭和おじさんが名を連ねる集団の中で厚生労働部会長を務めている小泉は、参院選が公示された7月4日から各選挙区を応援行脚している。中盤戦を終えた15日までの12日間で、通算48か所の演説会場に立った。彼と同世代の私はその言動を追いかける中、のっぴきならない事情が生じた。担当編集者Iクンの家に、第3子が誕生したのである。

 加えて、文春オンライン編集部は、休日動いていない。一昔前であれば、担当者との「阿吽の呼吸」で素材の熱が冷めないうちに土日返上で編集作業を進めたものだったが、今回はそうもいかない。昨今の「働き方改革」も影響し、ジャーナリズムの現場も大きな転機を迎えている。

 私自身も全国各地を飛び回る間、家事や育児をする時間を確保している。今回は「完全密着」をあえてやめ、家族の送り迎えをこなしながら地方で行われる街頭演説の現場に出向いている。この選挙戦中には、我が子が生まれて初めて「おまるでうんち」ができた瞬間にも立ち会うことができた。

 そんな些細な喜びが得られたのも、似た境遇にあるIクンのおかげでもある。こんにちの男たるもの、仕事と家庭を両立するのが当たり前――だと思って、古めかしい出版社の都合を押し付けようとしない。そんなふうに肩を寄せ合って、なんとか今日も密着取材ができている。

今回ほど小泉の背中が「遠い」と感じたことはない

 われわれ世代の多くは「老後はまだ先の話」と思っていたが、良くも悪くも「2000万円」という具体的な数字が示されたことで初めて当事者意識を持たざるを得なくなった。小泉は全国遊説のすべての会場で年金の話題を取り上げ続けている。

「私は全国を回っていて、特に飛行機に乗っている時に好きでよくやること。それは日本の山の景色を見ることです。なかには、こんなところに一軒家が。あのどっかのテレビ番組みたいに(笑)。そういうところを見つけた時にこういうことを考えます。あの山の中の一軒家に政治ができることってなんだろうか、と。

 こんな市街地だといろんなことが考えられる。政治の影響って結構あると思う。だけど、山あいの集落に、あの一軒家に届くことってなんだろう。私は考えていて、見つけた答えは年金です。年金を含めた社会保障は市街地に住んでいようが、東京だろうが、北海道だろうが、沖縄だろうが、山の中の一軒家だろうが、どこに住んでいる人にもそのサービスを届けなければいけない」(7月12日、北海道旭川市での演説より)

 私は2010年の参院選以降、通算7回の大型国政選挙で、小泉進次郎の全国遊説を追いかけ続けてきた。だが、今回ほど小泉の背中が「遠い」と感じたことはなかった。何が私にそう感じさせるのか。

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