- 2019年07月16日 20:10
衝撃だった川崎殺傷事件の真相解明と社会の対応は果たしてどこまで進むのか
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家族会の会員は、むしろ比較的冷静に受け止めています。横の繋がりもあるし、日頃から意見交換をしてきたためでしょうね。今は会員以外の人からの問い合わせが殺到しています。事件前と比較して20倍~40倍ほどもあるのではないでしょうか。孤立した人がこの社会にいかに多いかということですが、今はそういう相談に追われているのが実情です。
引きこもりの当事者たちは「世間の目が怖い」「自分も犯人と思われたら怖い」と不安がっています。農水省元次官の事件のように「自分も殺されてしまうかもしれない」という危機感を感じているという相談もあります。一方で家族は「自分の子どもも同じような行為をしてしまうのではないか」「自分も攻撃の対象になるのではないか」と怖がっています。
この社会では、引きこもりの人たちの居場所がないのですね。彼らは、制度の狭間に置かれた人たちです。障害認定を受けられればサポートも受けられるのですが、多くの引きこもりの人たちは、障害者とは違うと本人や家族が思っていたり、診断を受けたけれども問題が無いと言われたケースが多い。そもそも日本ではまだ偏見も多いし、精神科の受診を受けたがらない人が多いのです。
さらに、引きこもりの場合、専門家がほとんどいないのです。精神保健福祉センターなどの専門の資格を持った人たちや精神科医でさえ、引きこもりのことを十分理解できている人はそう多くないように思います。だから、よくわからないままアドバイスをして、結果的に本人の状態を悪化させてしまうケースもあります。引きこもりの人たちはセンシティブで感受性も強い場合が多いので、そういう人たちへの接し方というのは、丁寧に関係性を作っていかないと、彼らはいきなり外部から入ってくるものに対してはものすごい脅威を感じるんです。だから、今回の川崎の件もどこまでどういう対応をしたのか、情報を開示する必要があると思います。》
引きこもり対策の部署が治安対策本部にあった問題
《そもそもこれまでは、引きこもりというと若者特有の問題、そして仕事に就けない人の問題とされていました。だから行政側の担当部署が、若者問題としては青少年部署、また就労支援という面から言えばサポートステーションのような、旧労働省系の部署で対応していた。それ自体、ミスマッチがあります。
日本には会社=人生という考え方がありますので、就労支援という発想になるわけですが、そもそも引きこもり状態の人たちは、学校や職場に居場所がなくて家庭にこもっているわけなので、それを会社に戻そうという考え方自体が理解を欠いているのです。
引きこもる人の高齢化にしても、今回の事態を受けて厚労大臣が「新しい社会的課題」だと発言していますが、私たちからすると、何を今さらという感じなんです。それはみんな言っていました。それは国だけでなく、東京都も今年4月から、引きこもりの相談部署が保健福祉部署に変わったばかりです。それまでは青少年治安対策本部でした。不良少年少女の非行・犯罪対策の一環として捉えていたのです。》
《犯罪と引きこもり対策が同列に置かれているという状況では、そういう窓口には怖くて相談することもできない。去年の夏、家族会が要望し、ロビー活動をして、ようやく小池百合子都知事が、年齢制限を撤廃して、青少年治安対策本部から移管しますと発表しました。
東京都には「ひきこもりサポートネット」というのがあります。これは、支援団体のネットワークなんですが、保健福祉部署へ移管後も、仕組みは従来のままです。これは、やはりゼロから作り直さないといけないと家族会は要望していますが、東京都も今年度に入って、初めて当事者グループからヒアリングを行っているような状況です。》
《家族会自体は1999年に発足して、今は3代目の代表になります。初代の代表、奥山さんという方が家族会は全国組織にしないと相手にしてもらえないという思いで組織を拡大されました。個人で相談してもなかなか行政が相手にしてくれなかったので、役所の人からアドバイスをされたのをきっかけに、全国組織を作ったと聞いています。
名称も、最初は「親の会」でしたが、やはり兄弟姉妹からの相談が増えているし、親戚、伯父とか伯母でも、悩んでいることがあれば何でも聞いてくださいという趣旨で「家族会」にしました。
私たち家族会のありようも、引きこもりしている人たちが社会的に認知されず、いろいろなところの狭間に置かれてきたという状況と関わっています。今回の事件を機に、引きこもり問題に対する社会的関心が急に大きくなったわけですが、この機会にしっかりと議論し、対策を考えていく必要があると思います。》
池上さんたち家族会は6月26日に厚労大臣と面会し、意見交換をした。前述の就労支援と引きこもりについて考え方などを厚労大臣に説明したようだ。こういう議論を、例えば下記のように福祉新聞などの専門紙が報じているけれど一般紙があまり取り上げていないのが気になるところだ。
http://www.fukushishimbun.co.jp/topics/22503
あれだけ多くの市民が衝撃を受けた事件を1カ月余で風化させてしまってはいけない。マスコミ報道に携わっている人たちは、もっと多くの問題提起を市民に投げかけて議論を促してほしいと思う。

※Yahoo!ニュースからの転載



