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日本郵便横山社長の姿勢への重大な疑問~「日本郵政のガバナンス問題」としての保険不適切販売問題

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西日本新聞報道で明らかになった「弁解の余地のない不適切販売」

7月7日、日本郵便で、保険の乗り換えにおいて、新規契約から7カ月以上、旧契約の解約をせず、顧客に新旧の保険料を二重払いさせているケースが、2016年4月~2018年12月だけで、約2万2千件(2016年度約6400件、2017年度約8500件、2018年4~12月約7千件)に上ることを西日本新聞が報じた。

日本郵便では、内部規定で、新しい保険を契約後、6カ月以内に旧保険を解約したケースを「乗り換え」と定義し、契約した局員に支払われる手当金や営業実績は「新規契約の半分」と規定していた。しかし、通常、顧客にとって保険料を二重払いをすることの合理性はない。二重払いのケースの多くは、郵便局員が、満額のインセンティブを得るために、強引な営業で、旧保険の解約時期を意図的に遅らせたことによるものとしか考えられない。

また、内部規定では、顧客が旧契約の解約から3カ月以内に新契約を結んだ場合も「乗り換え」と定義されているので、満額のインセンティブを得るためには、新規契約の4カ月以上前に旧保険を解約させる必要がある。しかし、その場合、顧客は解約から新規契約までの間、無保険状態となり、何かあっても保障を受けられない。

まとまった金銭を一時的に必要とするような例外的な場合をのぞき、旧契約の解約は、次の契約と同時にするのが通常であるが、日本郵便では、新規契約の4カ月以上前に旧保険を解約させるケースも多数あり、契約前の4~6カ月間に無保険だったケースが2016年4月~2018年12月の契約分で約4万7千件(2016年度約1万7100件、2017年度約1万6600件、2018年4~12月約1万3千件)であった。

このような「乗り換え潜脱」は、内部規定上、「乗り換え」に当たらないため、新旧契約の比較表を用いて丁寧に説明するといった「乗り換え」におけるルールが適用されていなかったとされており、顧客が不利益となる事実を理解せずに、事実上乗り換えをさせられていたという重大な問題が発生していた可能性が高い。

こうして、郵便局員がインセンティブを得るなどの動機で、意図的に不適切な販売を行っていた可能性が高いことが判明するに至り、日本郵政グループの保険販売をめぐる問題は大きく拡大し、7月10日に、両者の社長が謝罪会見を開くに至ったのである。

指摘され続けていたかんぽ保険の不適切販売

郵便局員の不適切な保険販売の問題への指摘は、今に始まったことではない。「保険業法違反の営業」として金融庁に届け出た件数は、2015年度16件、2016年度15件、2017年度20件である。また、「説明不十分」「不適切な代書」など、内部で「不祥事故」と呼ばれる不適正な営業は、2015年度124件、2016年度137件、2017年度181件と、一向に減少していない。総務省は2019年6月19日に、日本郵政に対し、傘下のかんぽ生命等の不適切営業について、グループ全体のコンプライアンスの徹底と、活動の適正化を指導した。

また、2018年4月24日のNHKのクローズアップ現代では、「郵便局が保険を“押し売り”!? ~郵便局員たちの告白~」と題してこの問題を特集した。1か月で400通を超える情報提供を受け、高齢者に対し不適切な手続きで保険を販売する実態が放送されていた。

さらに、東洋経済や西日本新聞などは、関係者からの告発や、内部資料を入手するなどして、郵便局員の保険の営業手法について、問題提起を度々行っていた。

これらの各所からの指摘に対しては、日本郵便も、改善策として、2017年度から、80歳以上の顧客と契約を結ぶ際、必ず家族にも保険内容を説明するルールを導入。2018年度には、販売目標が高すぎるとして、会社全体の目標を1割引き下げ、2019年度からは、80歳以上の新規客に対する勧誘を自粛するなどはしていたようだ。しかし、保険の「乗り換え」が内包する様々なリスクについては、「違法ではない」、「不適切な販売とは考えていない」といった発言を繰り返していたのである。

記者会見での不適切販売への謝罪と対応方針の公表

7月10日記者会見では、かんぽ生命の植平社長と日本郵便の横山社長が不適切販売を認めて謝罪した。そして、郵便局員への過剰なノルマが不適切販売につながったとして、新契約をとった販売員に対する評価体系や目標設定を見直すこと、二重に徴収していた保険料の返還を進め、乗り換えの推奨もやめるなどの改善策を明らかにした。早期に第三者委員会を設置すること、社内の調査結果について年内に経過を報告することなどの方針も明らかにした。しかし、今後の調査で販売職員の法令違反などが判明すれば「厳正に対処する」と明言する一方、経営陣のノルマ設定や、現場管理者のノルマ管理などの問題解明については、消極的な発言に終始し、経営陣の責任については、「みずから問題の解決をやり遂げることが責任」などと述べて引責辞任を否定した。

日本郵便の横山社長は、不正の原因について、超低金利など販売環境が激変し、郵便局がこれまで多数販売してきた貯蓄型の商品は魅力が薄れているにもかかわらず「営業推進体制が旧態依然のままだった」と述べた。

貯蓄型商品中心の営業では、従来のような保険販売は見込めなくなっているのに、営業目標やノルマを重視する従来の営業推進が行われていたことが原因だとする見方自体は、誤ってはいないだろう。しかし、問題なのは、なぜ「営業推進体制が旧態依然のままだった」のか、それについて経営トップとして、どのように考え、対応をしていたのかを明らかにしなければならないはずだ。ところが、会見では、今後の改善の方策は示すものの、旧態依然の営業体制のままであった原因についての言及も、それに対する反省も全くない。

そのような横山氏の姿勢を象徴しているのが、会見で「経営者であれば、施策を打った段階で、ある程度こういうことが起こるんではないか、現場でどうなっているかを確認すべき」「わかったのはいつ頃なんですか?まずいことが起きているんじゃないかと気づいたのはいつ頃なんですか?」と質問されたのに対する次のような答え方だ。

いつ頃かというのはですね、あのー・・・、えーっと・・・、商品の募集品質の改善は常に現場の実態を確認しながらやっておりますので、これは常にやっておるところでありますけれども、目標の体系が実態にふさわしいのかどうかという疑問を持ち始めたのは、最近のことです。

しかし、横山氏が、2016年6月に日本郵便社長に就任するずっと前から、「超低金利」「貯蓄性商品の販売不振」の状況は続いていたはずだ。その横山氏は、社長就任後、2018年に日本郵政グループの中期経営計画で、生命保険業について「保障重視の販売、募集品質向上による保有契約の反転・成長」を打ち出していた一方で、その1年も後になって、目標の体系が実態にふさわしいのかどうかという疑問を持ち始めた、それまでは、現場の状況に気づかなかったというのである。メガバンク三井住友銀行の元幹部の言葉とは思えない。

しかも、前述したように、日本郵便での不適切な保険営業に関しては、総務省の指導やマスコミの追及を受けるなどをしており、気づかなかったわけがない。会見で横山氏の説明は不誠実極まりないものと言わざるを得ない。

「日本郵政のガバナンス問題」としての不適切販売問題

今回のような不適切販売問題が発生した要因として、かんぽ生命の保険商品では、民業圧迫の懸念などから保険金の上限額が2千万円と決まっていて、一般的に保険の「転換」の際に用いられる「新旧の契約の一時的併存」ができず、旧契約を解約した後に新契約に入り直す「乗り換え」で新旧の契約に切れ目が生じることから、問題が生じやすいということが指摘できる。

確かに、他の保険会社とは異なる条件であることは確かだ。しかし、一般の民間企業とは異なる条件による制約を受けることは、法的にもユニバーサルサービスの確保義務を負う日本郵政グループにおいては致し方ないことだ。西川社長時代の日本郵政の問題に関して専門委員会報告書で「A専務」として指摘を受けた立場でありながら、敢えて日本郵便の社長に就任した以上、そのような困難な条件を克服していく覚悟が求められるのは当然のことと言えよう。

記者会見で横山社長は、「お客様本位がすべてに優先するという考えが全局に徹底すれば、ユニバーサルサービスの一環として、全国津々浦々で郵便局員が保険を適切に販売することは十分可能」と言い切った。しかし、これまで、「乗り換え」に関しての問題が生じやすいというリスクにすら気付かなかった、或いはそれを無視していたとしか思えないことを棚に上げて、どうして「郵便局員が保険を適切に販売することは十分可能」などと言い切れるのだろうか。

9年前の専門委員会報告書においては、日本郵政のガバナンス問題について、「西川社長時代の日本郵政においては、政治情勢の激変の中、『郵政民営化を後戻りさせないように』との意図が背景あるいは誘因となって、拙速に業務執行が行われたことにより多くの問題の発生につながった」との基本認識に基づき、「日本郵政の事業をめぐる環境は、外部要因に強く影響される。そのため、今回の個別検証でも明らかになったが、これまでの日本郵政の経営をみると、その変化を見越し、環境が大きく変化する前に短期的に結果を出そうとして拙速に経営上の意思決定が行われ、事業が遂行される危険性を有しているものと推察される。」と述べている。

不動産売却やゆうパック事業とペリカン便事業との統合等、経営上の意思決定に関する問題であった西川社長時代の日本郵政の不祥事と、営業の現場で発生した今回の保険商品の不適切販売に関する問題は、性格が異なる問題だ。しかし、日本郵政グループには、とりわけ非上場である日本郵便という組織には、全国の郵便局網を活用し、日本社会全体に対してユニバーサルサービスを提供する組織として、一般の民間企業以上に、業務の公正さ、適正さが求められる。そのような要請に十分に応えるべく経営陣として適切な意思決定・対応をしていたと言えるのか、という点において、今回の問題も、「日本郵政のガバナンス問題」であることに変わりはないのである。

「反省のない横山氏」の日本郵便社長就任の是非

横山氏の日本郵便社長就任の問題を指摘した2016年【前掲FACTA記事】は、以下のように述べている

JPEXや接待疑惑に関しては、総務省が10年に公表した「日本郵政ガバナンス問題調査専門委員会報告書」にも明記されている。民主党政権下でまとめられた報告書ゆえに菅は信ずるに足らないと見たのか。あるいは、過去の罪は西川にのみあって、横山に責任はないと判断したのか。

しかし、全国2万4千の郵便局長、40万人(臨時職員含む)の郵便職員には、横山に対するトラウマが残っている。西川時代のような「上から目線」では必ず現場の抵抗に遭い、改革の歯車が逆回転する。一騒動も二騒動も起こるだろう。

そのような懸念は意に介さず、社長就任後の横山氏は、オープンイノベーションの考え方を前面に打ち出し、改革指向の積極経営指向を鮮明にしていった(日経ビジネス【第23回:市場主義とオープンイノベーションが成長を生む:「仕事がなくなるかもしれない」危機感がバネに】など)。

しかし、日本郵便という巨大組織で本当のイノベーションを実現しようと思えば、まず「足元の不安要素」を慎重に検討し、十分な対処を行った上で積極的な施策を行うというのが当然であろう。

ユニバーサルサービスの現場の郵便局で起きている問題に目もくれず、「イノベーション」に向かって突き進もうとしている横山氏の姿は、西川社長時代の日本郵政と本質的に変わることがないように思える。

このような「反省のない経営者」に委ねられた日本郵便という会社にも、それを中核とする日本郵政グループにも明るい展望は描けないように思う。

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