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韓国の〝告げ口外交〟いまだ健在、輸出規制で米に泣きついたけれど… - 樫山幸夫 (元産經新聞論説委員長)

韓国得意の告げ口外交を久々にみた。以前にもまして派手、活発というべきか。

康京和外相が7月11日、日本からの輸出規制に関連して、米国のポンペオ国務長官に電話で韓国の窮状を訴えた。米国に日本を説得させようという思惑があからさまだが、大量破壊兵器に転用可能な戦略物資を、韓国企業が違法に輸出していたと日本の各紙が報じたことで、状況が大きく変わった。

これら物質の流出先は、シリアやイランなど北朝鮮の友好国。各国の安全保障に大きな脅威を与える恐れがあり、このことが日本の輸出規制決定の大きな要因になったようだ。ことは深刻であり、韓国にとっては告げ口外交など憂き身をやつす次元の問題ではもはやなくなった。

米政府にとっては迷惑?

康外相はポンペオ長官に対し、「(輸出規制強化は)グローバルな供給網を混乱させ、米企業はもちろん、世界の貿易秩序にも否定的な影響を与える」として、外交的解決に向けて努力すると伝えた。そのうえで「韓米日3国協力の側面から見ても好ましくない」と強調した(7月11日読売新聞夕刊)。

韓国側によると、ポンペオ長官は「理解を示した」というが、米国務省の発表は、「北朝鮮の非核化での協力、日米韓3国の連携強化を確認した」と述べるにとどまっている。ポンペオ長官が、輸出規制に関して康外相の説明に「理解」を示したなどということには一切言及されていない。

オータガス同省報道官も11日の記者会見で「発表文以上に立ち入ることはしない。米国は日韓との2国間関係、日米韓3国の関係強化のためには、あらゆることをする」と述べただけ。ステイウェル次官補(東アジア太平洋担当)はNHKのインタビューで「日韓の仲介をする考えはない」と明言した。

韓国は外相電話協議に加え、青瓦台(大統領官邸)、外務省の高官をワシントンに派遣、米政府高官と接触させて協力を要請したという。告げ口外交もここまでもくれば徹底している。 

他国同士の争いの尻を持ち込まれたとあっては、ポンペオ氏だけでなくほかの米高官も迷惑千万だったろう。日本政府高官のなかには「日米韓3か国の問題などにはなりえない」と冷笑する向きがあるという。

半導体原料の規制で反発

今回の〝告げ口〟のきっかけとなった輸出規制問題については、すでにくわしく報じられている。

7月5日に日本政府が発動した対韓輸出規制は、半導体やディスプレーの原材料となるレジスト(感光材)、エッチングガス(フッ化水素)など3品目が対象。輸出の際、これまでの優遇措置、「包括許可」が取り消され、今後は個別契約ごとに日本政府の許可をとることが必要になった。

この措置は当初、韓国人元徴用工の訴訟をめぐる韓国側対応への対抗措置とみられていた。また半導体は韓国の輸出の2割を占める主力産業であり、それだけに韓国側の激しい反発は当初から予想されていた。日本政府は、「不適切な事案が発生した」として、安全保障を損なう問題があったことを示唆していたが、その内容について説明を避けていた。

生物・化学兵器原料輸出で摘発142件

その内容を明らかにしたのが、7月11日の各紙の記事だった。いち早く報じた産経新聞は、韓国産業通商資源省の「戦略物資無許可輸出摘発現況」に基づき、2016年1月から19年3月まで間に、142件が処分対象になったと伝えた。サリン原料の「フッ化ナトリウム」がイランに、生物兵器製造に転用可能な「生物安全キャビネット」がシリアに、化学兵器原料となる「ジイソプロピルアミン」がパキスタンにそれぞれ不正輸出されたという。

関与した企業名、それら各社が刑事訴追されたのか明らかにされていない。流出した物資が北朝鮮の手に渡ったのか、という最大の懸念ついてもに不明だが、今回の日本による輸出規制強化は、徴用工訴訟での単なるしっぺ返しなどではなかったことになる。

日本国内でも、経済界を中心に、輸出規制が関連企業に悪影響を与えるという懸念、世界貿易機関(WTO)に提訴された場合、日本が不利になるのではないかとの危惧もあったものの、それらは勢いを失っていく可能性がある。

安全保障を揺るがす

日本政府は不正輸出疑惑について、「報道は承知しているが、お答えすることは事案の性質上、避けたい」(野上浩太郎官房副長官、7月11日会見)と実質的に認めるかのようなコメントをしている。今後、不正輸出の実態について先方に照会していくというが、これを通じて、物資の最終目的国がどこだったのかなど、日本の懸念事項、疑念に対する十分な回答を得られるか。   

韓国産業通商資源省の当局者は7月11日、韓国の輸出管理制度の実効性について疑問を提起した国は日本しかいないーと指摘。世界で最も強力な輸出管理制度を運用する米国でも不正輸出が多いことに言及、「米国の制度を批判するのと同じだ」と反論した(7月12日づけ産経新聞)。自分が批判されている問題とは何の関係もない米国を引き合いに出し、議論をそらそうとするのは噴飯ものといわざるをえない。 

韓国はすでに7月9日の世界貿易機関(WTO)の物品貿易理事会で、「自由貿易の原則からはずれている」と日本を批判、強い態度で即時撤回を要求。国連安全保障理事会の専門家委員会に調査を要請する構えも見せているが、今後はむしろ守勢に立たされ、説明を求められることになろう。

7月12日に経済産業省で行われた双方の事務レベル4会合は延々5時間に及んだが、双方の主張は折り合わなかった。韓国の態度も堅かったようだ。

今回の事態は、日本だけでなく米国の安全保障にも影響を与える由々しき問題だろう。米国は、児戯に等しい告げ口外交などは相手にしないだろうが、核開発をめぐって北朝鮮と駆け引きを展開しているさなかだけに、そうした視点から、韓国に強い態度で説明を求めてくる可能性がある。韓国には、米国に仲介要請などしている暇はない。日米への明確、誠実な説明に専念すべきだろう。

〝告げ口〟体質今も変わらず

余談ながら、「告げ口外交」の起源を振り返ってみる。

2017年に弾劾で職を追われた朴槿恵前大統領の〝得意技〟だった。就任した2013年、慰安婦問題など歴史認識に関連し、欧米各国との首脳会談や各国メディアのインタビューで、「日本は正しい歴史認識をもつべきだ」などと日本批判を展開した。

自らに関係のない問題について憤りぶつけられた各国首脳の面食らった表情が目に浮かぶようだが、日韓両国間で処理することなく、第3国へ悪宣伝を展開することは日本にとって容認しがたいことだった。当時一部日本の有力政治家らが「女学生の告げ口」と表現、日韓関係を悪化させる原因となった。

見かねた米国のオバマ大統領が仲介に乗りだし、2014年3月、核セキュリティー・サミットがオランダ・ハーグで開かれた機会に、自らと安倍首相、朴大統領の3者会談を実現させた。この時、安倍首相がにこやかに韓国語で話しかけたのに対し、朴女史は仏頂面でろくに挨拶も返さず日本国民を唖然とさせた。

20⒔年6月、中国を訪問して習近平国家主席と会談した時には、あろうことかハルピンに安重根(1909年、前韓国統監の伊藤博文を暗殺した犯人)の記念碑設立を求めた。習主席は、記念館という要望を上回る計画で応じたから、これまた驚く。

朴大統領が解任された後、文在寅政権になってこうした告げ口外交はとりあえず影を潜めていたが、今回のケースで、再び頭をもたげた。伝統的な韓国の対日外交の姿勢には全く変化のないことをあらためて示したというべきだろう。

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