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ネタバレについて哲学者がガチバトルする「ネタバレのデザイン」

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ネタバレは悪か?


ネタバレは悪という人は、作品から得られる楽しみが減ってしまうからだという。作品を堪能する前に、結末が分かったら、面白くないでしょ? 2018年に南極で起きた殺人未遂の動機は、読んでる本のネタバレをされたからだという[参考]

一方、ネタバレ許容派は、「作品の理解が進む」とか「ハラハラせず安心して楽しめる」という。「野外コンサートでいつ花火が上がるか」知らずにトイレに行っていたという具体的な例が出てくる。

このように、ネタバレをめぐる様々な主張は、各人の芸術観や価値観により変わってくることが分かる。

こうした背景を受け、日本を代表する哲学者が、ネタバレについてロジックで殴りあう。リング外の観客も、のんびり見てられない。マイクを放られて、「言いたいことあるでしょ?」と煽られる。恐怖の前置き「素人質問で恐縮ですが」から始まる素人離れした知識に震える。

前回の議論は[「ネタバレの美学」が最高に面白い]で紹介したが、詳細なのは『フィルカル vol4.2』をどうぞ。

今回は、代官山のおしゃれな蔦屋書店で、「ネタバレのデザイン」と称し、ガチ度を上げてこの3名が闘った。

森功次さん
美学・芸術哲学の第一人者。ネタバレ許せん派。映画館の予告編も許せないので、トレーラーが流れている間は下を向いているとのこと(想像すると微笑ましい)。

松本大輝さん
倫理・分析哲学のプロ。ネタバレ許容派というより、ネタバレ不寛容が許せん派。学会発表レベルの緻密なハンズアウトを作ってきて無事タイムオーバー。

仲山ひふみさん
精鋭批評家。「デュオニソス的な秘密のアポロン的パッケージング」など、難しい言葉が頻出し、よく分からなかったが、分かる所は凄く面白い。

ネタバレは倫理的に悪

まず森功次さん。「ネタバレは倫理的に悪」という立場から、ネタバレ許容派を攻撃してくる。きちんと用語を定義し、前提を整理する。というのも、ネタバレ議論が発散しがちとなった前回の反省を踏まえてである。

「ネタバレ」という言葉には様々な意味が込められている。対象となる「ネタバレ情報」、それを暴露させる「ネタバラシ行為」、そして対象への接近が意図か事故かという「ネタバレ接触」と分ける。

その上で、作品を鑑賞する前に、ネタバレ情報に対し、自分から接触しに行くことは、倫理的に悪いと主張する。(1) 作者への敬意(リスペクト)を欠いており、(2) アートワールドを腐敗させるという(結果、芸術文化として重視された価値観を狂わせることになる)。

さらに、ネタバレ許容派の「豊かな作品の理解」なんて、要するに「効率的な鑑賞」の方便にすぎぬと斬る。2回目以降に批評を参考にして何回も見ればいいのであって、初めて作品に触れたときだけに味わえる「清新な感動」を捨てるのはおかしいというのだ。

非本質ネタバレならOK

一方、ネタバレ許容派の松本大輝さんは、ロジックの隙を衝く。

まず、ネタバレ接触を2種類に分ける。物語の結末など「それを味わわないと作品を鑑賞したとはいえない」本質ネタバレ接触と、それ以外の、演出上の工夫やオマージュといった非本質ネタバレ接触の2つである。

そして、本質ネタバレ接触については「ネタバレ=悪」を受け入れた上で、非本質ネタバレから、ロジックの切り崩しにかかる。

「豊かな作品の理解」のため、2回目以降は批評などネタバレOKにしているが、2回目以降だって、「発見の楽しみ」はあるのではないかと問う。そして、この楽しみがある限り、ネタバレに接触するのは悪という理屈が成り立ち、主張に一貫性がないというのだ。

さらに、「アートワールドを腐敗させる」というまさにそのアートワールドって、理想化しすぎじゃね? とツッコむ。現実として、その作品の全ての芸術的工夫を見出せる鑑賞者なんて、存在しない。何回も見ればいいというが、実際のところ、そんなに何回も見れるものじゃない。

むしろ、各人が発見した作品の「見どころ」を持ち寄って、みんなで共有するという分業こそが、現実のアートワールドじゃないかというのだ。

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