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【読書感想】メディアのリアル

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『踊る大捜査線』シリーズの本広克行監督は、「監督料」について、こう仰っています。

吉田正樹:今、映画のチケットは1800円くらいですね。このうち半分は映画館の収入で、残りの半分が映画配給会社の取り分となります。この配給会社の取り分から製作費を引いた残りが利益ですから、その一部ですね。もし通常の監督料だったら500万円くらいですか。

本広克行:そうですね。そのくらいで三谷幸喜さんクラスだと言われました。

吉田:500万円と聞くとかなりもらっているような気がしますが、シナリオを書いて演出もするということを考えると、決して十分とは言えない気がします。

本広:しかも、ギャラは一年くらい先じゃないと入ってきません。だから、みんな食べていくために、テレビに出たり、講演をしたり、ワークショップで教えたり、あるいは本を書いたりしています。映画監督というのは、それくらい厳しい職業なのです。

 ハリウッドの著名映画監督はこんな金額ではないと思いますが、日本では、ヒットメーカーの三谷幸喜さんでも500万円くらいなんですね、監督料って。

 そりゃ、監督専業でやっていくのはけっこう厳しそう。

 この監督、なんかやたらといろんな映画撮ってるなあ、というのは、そのくらい撮らないと食べていけない、ということなのでしょう。

 ちなみに、吉田さんは、映画『踊る大捜査線』の監督をやるときに、それまで撮った2本の経験を踏まえて、「成功報酬として利益の何パーセントかをもらえる契約にした」そうです。

 これ、かなりもらえたのではないかなあ。

 また、評論家の宇野常寛さんが登壇した回には、こんなやりとりがありました。

吉田:『PLANETS』(宇野さんたちが創刊した紙の批評誌)をインターネットではなく雑誌にしたのはどうしてですか。

宇野:『PLANETS』を創刊した頃は、インターネットではブログがブームになっていました。当然、評論をブログでやることも可能だったし、自費出版に比べればブログのほうが、はるかに費用も手間隙も少なくて済んだのは間違いありません。

 でも、どうしても僕は紙に印刷する形にこだわりたかった。

 一番の理由は、ブログというメディアが僕にはどうも魅力的に見えなかったのです。

 お役立ち系はともかく、お金や思想について書いているブログで、ブックマークがたくさん付くようなものって、人間のコンプレックスを助長するか、目立っている人を叩くかのどちらかで、そんなの人々の興味は引いても、商品価値はほどんないに等しいし、僕には全然面白くなかった。

吉田:インターネットに絶望したということですか?

宇野:絶望したというわけではありません。それはそれでひとつの文化のあり方だと思います。ただ、僕はひとつの作品をじっくり掘り下げて、その魅力を理論的に語るような、もっと中身のあることを真面目にしたかったのです。それはブログじゃ絶対にできない。ネットと切り離したところで行わないとダメだと思ったのです。

 二号、三号とつくっていくうちに、その気持ちはますます強くなっていきましたね。インターネットで言論を流通させると、絶対に悪い方向に引きずられる、これは間違いありません。だから、ネットは宣伝には使いますが、文章を読ませるのは、紙でなければならないのです。

 宇野さんは1978年生まれで、70年代はじめの生まれの僕よりは、若い頃にネット文化に接してきているはずです。

「紙媒体」へのこだわりも、少し薄れている世代と思われます。

 にもかかわらず、宇野さんは、「インターネットで言論を流通させると、悪い方向に引きずられる」という感覚を持っていたのです。

 実際のところ、宇野さんが新しい世代の評論家として評価され、支持されているのには「インターネット世代」の理解が大きいと思うんですよ。

 彼らは、ネットが身近なもので、その利点と弱点を知り尽くしているからこそ、「文章を読ませるのは紙のほうがいい」と感じているのだろうか。

 たしかに、紙媒体にすると、ネットですぐに読めるより間口は狭くなるけれど、「本当に読みたい人だけが読んでくれる」面はありそうです。

 ネットの場合「茶々を入れたいだけの人」が、少なからず入ってきてしまいますし。

 テレビ、映画、ネットなど、さまざまな「メディア」のトップランナーたちの話は、なかなか面白い。

 それと同時に、こうして大学の講義に名前があがるような人というのは、けっこう大御所になってしまっていて、「今」を切り取っているとは言いがたくなってしまっているとも感じました。

 メディアの世界で「今」を切り取るというのは、本当に難しい。 

   メディアで働きたいとか、人に何かを伝えるような仕事をしたい、という人にとっては、参考になる言葉が詰まっている講義だと思います。



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