- 2019年07月13日 11:15
アパ社長が挨拶に全エネルギー注ぐワケ
2/2重要な話の前に「……」と沈黙を置く
一方、谷原氏は管理職が挨拶やプレゼンなどスピーチをする際、話の前後に沈黙を置くといい、と語る。

「よどみなく話をしていたのに突然、シーンと静かになったら、部下は『何事か』と思い、それまで以上に注意を向け、より集中して話を聞くようになるでしょう。だから、ここだけはしっかり気持ちの中にとどめてほしいという内容の話があったら、一度、沈黙を置くと効果的です」(谷原氏)
実はこのテクニックは、多くの著名人が実践している。例えば、元アップル社長の故スティーブ・ジョブズは「iPhone」発表のプレゼンの場において、多くの関係者や内外のメディアの前で、冒頭に「2年半この日が来るのを待っていた」と切り出したあと、驚くべきことに7秒間も沈黙した。
これは頭が真っ白になって言葉がでてこなかったわけではない。戦略的な沈黙だ。7秒の空白の時間をつくったことで聴衆の中にいい意味での緊張感と期待感が一気に高まったこともあり、そのプレゼンは大成功となったのだ。
世界的なベストセラー『人を動かす』の著者であるデール・カーネギーも『話し方入門』という本の中で、「沈黙の効能」を語っている。アメリカ合衆国の大統領だったリンカーンは演説の中でしばしば重要な話をする前にしばらく沈黙を置いて、重要な話をして人々を引き付けたと説明しているのだ。
とはいえ、ジョブズでもリンカーンでもない一般人にとって、話の途中で沈黙するのは勇気がいる。しかし、挨拶やプレゼンの途中に「えーと」「えー」と無意味な言葉をつなぐのはかえって聞き苦しい、と谷原氏は語る。
菊原氏も話の中に「間」を入れることで挨拶やプレゼンに緩急やリズムが生まれ、同じ話が何倍も面白く感じられる効果があるという。
立て板に水の営業トークに顧客があまり耳を傾けないのと同じように、一本調子の挨拶というのはどこか退屈に感じられてしまうものなのだ。
「例えば、挨拶する中で、『(業績が)○○となったのは、ある理由がありました。その理由とは……』と少し間を置く。すると聞いている人は『なんだ?』という顔で前のめりになる。あるいは、大事な話をする直前に、『これから〇〇の話をしてもいいですか?』とひと言前置きして、聞き手に心の準備をしてもらうのも効果的な挨拶の方法ではないでしょうか」(菊原氏)
謎かけをして聴衆の想像力や思考力を誘発
「謎かけ」も挨拶の中に入れ込むと聴衆を引き付けることができる。谷原氏も講演やセミナーで使っているという。
例えば、「今回は○○という結果になりましたが、実はある方法を使えばその結果を回避できるのです。なぜでしょうか。その方法をお話ししましょう」といった形で誘導するのだ。
「心理学にツァイガルニック効果という言葉があります。人は達成できなかった事柄や中断している事柄のほうを、達成できた事柄よりもよく覚えているという現象のことです。謎かけや問いかけをしたあとの『結果』を人々は知りたい。想像力や思考力を誘発することで、話をより充実したものとすることができるのです」(谷原氏)
挨拶にはこうした戦術も必要だ。
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営業サポート・コンサルティング代表取締役
関東学園大学経済学部講師。豊富な営業経験をもとにした『営業1年目の教科書』(大和書房)など、著書多数。

弁護士法人みらい総合法律事務所・代表者社員弁護士
税理士。企業法務、交通事故訴訟などを扱う。『「沈黙」の会話力』(フォレスト出版)など、著書多数。
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(フリーランス編集者/ライター 大塚 常好 撮影=原貴彦 写真=AFLO、PIXTA、iStock.com)
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