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閉鎖中

やはり今年もゴールデンウィークはなく、というか昨年度に獲得した大型経費の執行と今年度の応募の両方を同時期に同一人物にやらせるのはどうなんだと思ったのだが出勤して打ち合わせと会議の3件連続を処理したら夜とかいう生活を続けていてますます自分が何なのかわからない。そういう次第で原稿面の不義理を続けているので閉鎖モードに入ってはいるのだが、余計なことの説明をちょっと一つしておきたいと思ったので、書く。

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まず前提を書くと、私は国立大学法人N大学に所属する教員であり、法人化の際に(公務員法上の)国家公務員の地位は失っている。保険・年金が相変わらず文部科学省共済だったり、刑法上は公務員であったりして中途半端ではあるのだが、少なくとも「国家公務員かくあるべし」という理念なり規定なりが直接に適用される対象ではない。ないはずなのに給料を減らせとかわけのわからない「要請」が東京から来たりしてどっちなのかはっきりしろとか思うわけではあるが、ここでは措く。さてその私に何らかの仕事をさせたい外部の方がいたとすると、その方法は大きく二種類ある。

第一はN大学に依頼する方法で、それを受けてもいいと大学が考えれば私に職務命令が出されてその仕事をすることになるだろう。この場合、それは「大学の仕事」なので費やした時間は大学に対する労働時間としてカウントされ(実際には裁量労働制なのであまり関係ないが措く)、逆にその仕事から生じる報酬があったとしてもそれは大学に入ることになる(大学が「無償でいいから引き受ける」と決めることもあるだろう)。仕事の内容・進め方についてもあくまで大学が決めて私に命令するのであり、まあ労働法上適法なものであるかぎり私はその命令に従わなくてはならない。

例としては助成事業の成果報告会を開催するのでプロジェクトの名代を来させて報告しなさいと文科省からN大学が言われるようなケースがあり、じゃあお前行ってこいと大学が私に命令すると勤め人であるので行かざるを得ず、その際の報告・発言内容もその立場による制限や大学からの指示を守る必要があるということになる。もちろん出張に関する経費と手当は大学から支給されるが、それ以外の報酬のようなものはない。

第二は私個人に依頼する方法で、私は大学の職務外でその仕事を行なうことになる。職務外なので勤務時間外に行なうか・休暇を取得するかしなくてはならないが、報酬についても大学とは無関係に私個人が受け取ることになるし、職務上の立場や大学の意見による制約は受けない。もちろん、報酬を受ける場合には(大学から見れば)「兼業」ということになるので基本的には服務規程で禁止されており、事前に許可を受ける必要が出てくるが、詳細は組織ごとに違う可能性があるもののN大学の場合1日だけで終わる兼業(単発の講演とかな)については届出だけで済み、複数回あるいは定期的な兼業についても教育目的のもの(他大学の非常勤講師とか)や公益性の高いもの・研究成果の社会還元という性質の強いもの(官庁の審議会・研究会の委員とか)については度が過ぎていて本業の遂行に支障があるようなものでない限り容易に認められている。

昨年度後半に総務省関係の研究会委員を引き受けていたのはこれで、大学からは勤務時間外に行なう兼業としての許可を得ていた。勤務外なので開催地に向かう旅費なども大学から支給されるのではなく、依頼者である総務省からもらうことになる。

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さてこれを踏まえて。ポイントは、独立行政法人たる研究所に所属する人が「職務でそのような場に呼ばれたり、コメントを求められた場合は、専門外のことを話すことは許されていません」と述べるとすればそれは第一の場合にのみ当てはまることなので、それ以外の部分にわたる自由な意見交換とかがしたければ第二のパターンで呼べばよいという点にある。適切な場所・機会を設定し、知見・意見を披露してもらうことを本来の職務以外の仕事として依頼すればよろしい。もちろんそれを引き受けるためには兼業許可が必要になるだろうし、休暇ないし勤務時間外のプライベートな時間を費やすことになるのだからその代償としての報酬や、旅費などの必要経費はお支払いするべきだろう。しかし、そのような準備ができればという条件付きではあれ、それは可能である。もちろん依頼された側で「やりたくない」と思って断る可能性はあるし、そうするのも自由だが、それはあくまで「できるけどやらない」のであり、「できない」のとは違う

なお産業技術総合研究所のウェブサイトにある「職員の兼業の取り扱いについて」というページを見ればわかる通り同組織においてもN大学と同じく二つの仕事の仕方が認められており(当たり前で元々は同じ政府の規制なのである)、うち一般兼業については「研究所の成果普及等に資するもの」であり「必要な知見を有する」場合に認められることになっているが(同研究所兼業等規程15条、ただし他にも職務遂行に支障が生じないことなどの要件があるので詳細は規程自体を参照されたい)、報酬を得ない場合には手続きを要しない(同研究所兼業等規程13条但書)。

あるいは、職務内容に関する指示はあくまで所属機関の意思決定によりなされるものであるので、所属機関を説得して従来とは違う職務命令を下してもらい、第一のパターンで処理することも十分可能である。仮にご本人はやりたいのに従来の職務命令が禁止しているようなケースであればそうするのはご本人にも喜ばしいことであろうし、やりたくないのだとしても労働法上許される範囲であれば別段問題はない。本人は嫌がっているが社長を口説いて出向命令出させちゃうとか、民間企業でもありそうな話である。

逆に言うと、広い範囲での意見交換がしたいという相手に対して引用部分のように応答することは、(その根拠となる職務命令等が実在しているのであれば)第一のパターンでは正しいので「虚偽」ではないが、第二のパターンがあり得ることに触れていないので「不十分」であり、それによりそれが不可能だという印象を相手ないし聴衆に与えることを意図していたのであれば「不誠実」だということになろう。

念のために言えば、対立の契機となった問題それ自体に対して私は十分な知識がないので論評を差し控えるが、「図書館の自由」については重要な理念だと考えているし、確かに部分社会のものではあるが公序良俗に反しない限り部分社会固有の理念は尊重すべきではなかったろうかと思っているし、いろいろなセクターの情報が結合されることがそれぞれの和を超えた新たな問題を引き起こしかねないことについては著書でも指摘している(かといって何でも情報収集だの結合だのを否定してもどうにもならんだろうとも書いているのではあるが)。しかしまあそれとは別の話として高木浩光氏が「門外漢のことを自分の言葉でつぶやいた例もあまりないはずです。ブログでは門外漢のことはほぼ書いていないはず。」と書いているのは爆笑もので、岡崎市立中央図書館事件の際には専門でもなければまともに勉強もしていなければ理解もしていない刑法解釈の問題についてあれだけ書き散らしたじゃねえかとは思うわけである(なお参考)。その後に拙劣な隠蔽工作までして自己弁護を図ったことも含めて考えると上記の問題についてもああまた不誠実なことしてやがんなあと思うわけではあるが、もちろん一方当事者を不誠実であると評価することは他方当事者を誠実とか有能とか正当とか言うことを含意しないのでそのようにな。何のことかわからない人はこのあたりを参照されたい。

***

というわけで、今回のやり取りを見る限りではもちろんこういう絡まれ方をするのも大変だなと思うわけであるが、高木浩光氏ご自身が「誤解を予測しながら防止すべく話を構成するのがプロであるし、誤解が出ているならば、個々の誤解に対して直接打ち消す言論をすればいいだけの話」と主張しておられたので、ぜひとも新世紀の言論態度を実践して健闘されることをお祈りしておきたい。どっとはらい。

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