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税のベスト・ミックスの最適解はないのです

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<「今、消費税は下げねばならない」というスクラム>

 つまり、反緊縮的「消費税廃止!」、「消費税値上げ凍結せよ!」という主張は、「消費税というものが本質的な悪だから」叫ばれているのではありません。「今、そこをちゃんと調整しないと、実際に暮らしが立ち行かなくなって死ぬ人が出てくることになるから」という判断です。

 ということは、自公政権は「このまま秋に消費税を10%にしても、人々は耐えてくれるはずだ」という判断をしたということです。政権内部には「2%アップとは、事実上25%の値上げとなって消費が徹底的に冷え込む」と反対している人もいるようです。しかし、本当に反対するなら党を割って出るべきですが、それもしません。

 だから野党各党は、自公政権とは異なる「立ち行かなくなるだろう」という大枠でまとまれば、選択肢はシンプルになったのですが、その調整は成功しませんでした。本当は、こういう判断の根拠を考慮しながら、微妙にニュアンスの違う各党派の考えをまとめて、シンプルかつ力強い選択肢を示す司令塔をするのが野党第一党の責任なのです(「リベラル勢力は、ゼニカネに本気にならず、大人の連帯ができない」と近著で私は訴えました。『なぜリベラルは敗け続けるのか』、集英社インターナショナル)。

 もちろん税に対する「政府への不信感」がベースにある日本社会ですから、野党側もあまり迂闊なメッセージは出せません。だからどうしても心を合わせて「10%にはしない。廃止という議論もあり凍結という主張もある。だから野党共闘として、我々は緊急避難的に5%まで減税する」という着地点になります(増税は旧民主党も言ってではないか、という批判を前に萎縮したりもします)。それは強い反緊縮グループからすれば「腰抜け」と映り、なかなか一本化できないのです。

<政策議論と政治判断を切り分けねばならない>

 私は、大企業の法人税の下げすぎは問題だけれど、彼らの税逃れの抜け穴を埋めるような法改正がわずかな時間でできるとは思えず(アンタッチャブルな「聖域」ですから、手をつけたら文字通り血みどろの戦いとなります)、所得税アップはデフレ低賃金の現状では中間層の痛税感をあまりに強くさせてしまい、政治的に困難だということなどを考慮すれば、消費税を無くしてしまうことはできないと考えます。1%で2.8兆円の財源です。

 しかし、働く人たちの半分が年収300万以下で非正規被雇用者で、ロスジェネ世代の経済基盤が脆弱な時に、これを値上げすることは「今」を生きている人たちを追い詰めるだろうと考えます。コンビニ弁当の万引きをする人の中には、たくさんの老人が含まれているそうです。

 だから「消費税というものは本来的な悪なのである」とは決して考えず、それでいて「今、それは棚上げにしないといけない」という「政治判断」を採用しています。目の前で溺れている人を見て「最良の救命方法とは何か?」などという議論をしている暇はありません。まずは「浮き輪を投げよ!」です。

 過日、自民党の中で「反安倍」派として気を吐いている石破茂議員と対談をさせていただきました(『週刊金曜日』7/12号に掲載)。ネオ・リベ的な国家観(市場競争プラス強い国防)を持っていると予想していた石破議員は、「リーマンショック以降の悲惨な状況を前にして、”市場に任せよ”などと言うのは政治家ではない」と主張していました。追い詰められている人たちを「今」どう救うかを訴えていました。

 つまり彼は「今」、反緊縮的指向性を持っています。そして、「もともと税のベスト・ミックスとはどう考えて決めるべきなのか?」という議論をすることは、「この秋の消費税値上げをどう評価するか?」とは別なのだと考えているはずです。

 なぜならば、その区別こそが「政治」の仕事だからです。選挙が終わった後に、石破議員が党内でどう発言するかに注目しています。

 私自身も、反緊縮派の熱い訴えを聞き、ハートに力をもらった多くの人たちに共感するところはたくさんあります。しかし、定冠詞のついた「消費税」と、「そもそも税とは?」という議論の違いを考えないと、また日本の政治は、ドタバタ騒ぎとその帰結としての「言論と政策論争の焦土」となり、その記憶が薄れたところで、「またまたゼロベースで同じ議論」を繰り返すことになります。成長がないという意味です。

 私は、世界の反緊縮を掲げる国家が消費税を税体系の中心にしていることを見ても、消費税を「ちゃんと活用すれば人々を幸福にできる税」だと思っています。しかし、「今、この状況で消費税を上げること」には、反対しています。

 消費税には反対しません。しかし、この消費税上げには反対します。

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