- 2019年07月12日 17:00
税のベスト・ミックスの最適解はないのです
1/2実売部数から言えば全く採算の取れない高価な電車の中吊り広告を、野党批判オンパレードの右派雑誌が大量に出しています。同時に、特定枠に2名の障害者を立候補させ、数百万の票を集めるとも予想されている反緊縮を訴える小集団は、テレビ局によってほぼ無視されています。不思議なことが連日続く参議院選挙たけなわです。
<「消費税=悪」なのか?>
ネットの世界で多くの人たちから喝采を浴びている反緊縮派の「消費税廃止!」は、日々の暮らしに不安を持つ若年層や年金暮らしの高齢者の心には、深く浸透するものであると思います。退路を絶って、仲間を増やそうと連日各地で人々に語りかけるリーダーの演説力は、これをなお促します。
ここで今回の参議院選挙の中心的テーマ(「公約」とは言いません。公約と綱領の区別がされていないのが日本の政治だからです)である「ゼニカネ」の話に水を差すつもりはありませんが、やはり少し付言したいのは、「税のベスト・ミックスは、国ごと時代ごと経済の流れごとに異なるから最適解はありません」ということです。
「消費税は廃止しかないじゃないですか!」という言葉を連日聴き続けると自ずと「消費税=悪」とすり込まれてしまいますが、ここはちょっとだけ立ち止まる必要があります。なぜならば、消費税をめぐる政策判断とは「そのものが本質的に善か悪か?」で決めるものではないからです。
政策への評価とは、「この時期に」「そういう政策を打ち出すと」「こういう影響が出て」「それは将来に悪しき影響を与える」からとか、「そもそも税の直間比率の在り方に学問的決着はついてないのだが」という留保をつけたり、つまり「定冠詞」(この、その、今の、この時期の、こういう流れで考えた時の、みんなの状況がこうなっている時の等)が付いているものなのです。「このやり方で当分行けるのか?」と「そもそも税制とは?」は、異なる議論だからです。
<本来「税=社会の貯蓄」である>
税は、消費税であろうと、所得税であろうと、法人税であろうと、国庫に入った途端それは「社会の貯蓄」です。これを「人々の不可欠な基本ニーズに応える」ことを最優先にして、残りを順位をつけて適切に使うわけです。これは政府の仕事であって、市場だけでは調達できないものです(「基本ニーズ」とは、人が尊厳を持って暮らしていけるために必要な最低条件という意味です)。
私たちは、前世紀に政府のやった無謀な戦争で国が焦土と化し、310万人を死なせてしまったという後悔、そしてそれをきちんと反省しなかったという歴史の宿題があるため、「税は社会の貯蓄なのだ」と冷静に考えるための「政府に対する基本的信頼」というものを育みにくい経緯で、今日を迎えています。ですから、どうしても税のあり方を「取る・取られる」「収奪する・逃れる」という考える心の習慣が変わりません。
しかし、私たちは「税金とはすべて悪」とする、税を善悪や正邪で考える心の習慣から早く健全に脱却しないと、今回の選挙で叫ばれている「消費税は悪だ!」という政治的メッセージを、そのまま「そもそも消費税というものが極悪非道なものなのだ」と脳内転換してしまいます。
その結果、場合によっては、「消費税がなくなり、法人税は巨大企業の税回避によって集まらず、不況とデフレのため下がる賃金ゆえ所得税も目減り」して、結局のところ格差がなおも広がり、基本ニーズを満たせない大量の人たちを地獄に突き落とすことだって起こりかねません。



