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海洋プラごみ問題—G20大阪サミットに足りなかった具体的策とは


2050年までに海洋に流出するプラスチックごみをゼロにするという「大阪ブルー・オーシャン・ビジョン」が6月末、G20大阪サミットで発表された。NGOなどがその不十分な内容を指摘しているが、どのような宣言であれば具体的な進捗を促せたのか。「パリ協定に基づき『2050年までに石油由来のプラスチックの流通をゼロにする』という宣言であれば、必要な行動が明白になった」――。東京農工大学環境資源科学科の高田秀重教授はそう指摘する。(サステナブル・ブランド ジャパン編集局=沖本啓一)

抜け落ちた「パリ協定に根差した視点」

環境分野の課題として「海洋プラスチック(以下、海洋プラ)問題」に大きな焦点を当てたG20大阪サミットが6月28-29日に開催された。「大阪ブルー・オーシャン・ビジョン」を含む首脳宣言が各国の合意を得、その実現のためのアクション「マリーン(MARINE)・イニシアチブ」も発足したものの、その実効性への疑問、内容の不足がNGOなどに指摘されていることは広く報道されている。

「そもそも海洋流出をゼロにするためには、地上での使い捨てプラの削減は必須。具体策どころか、そこに言及が一切ない」と、長年マイクロプラスチックの問題を研究している東京農工大学環境資源科学科の高田秀重教授は指摘する。

パリ協定を遵守すれば2050年にはガソリンなどの石油由来燃料の使用が不可能になる。中国や欧米ではEV車が急速に普及し、ガソリン車の乗り入れを禁止する都市も増えている。石油を分解すると重油、軽油、「ナフサ」と呼ばれるプラスチックの原料となる成分など多種の製品が同時に取り出される。ガソリンなどを精製しなくなれば、石油を掘り出す理由が大幅に減り、プラスチックの精製もできなくなるはずだ。

「G20大阪サミットの成果では、このようなパリ協定に根差した展望を持てておらず、使うものは今までどおり使い、焼却処分するだけという印象を受けた。将来の社会像を読み切れていないのではないか」と日本政府の方針に危惧を抱く。

熱回収という逃げ道

「(大阪ブルー・オーシャン・ビジョンがこのような内容になった)根本的な要因は日本政府が『プラ削減』よりも『焼却処分』に力点を置いていることに起因している」と高田教授は分析する。国内で出される廃棄物のうち実に57%が「リサイクル」の名目で熱回収にまわされ、単純焼却も含めると71%もの廃棄物が焼却処分されている。

「熱回収の問題点は、焼却炉稼働時のダイオキシン発生や、焼却した量のバージンマテリアルの市場投入など多岐にわたる。温室効果ガスを実質的に増大させており、パリ協定と相いれるものではない。熱回収という逃げ道が問題を停滞・悪化させている」(高田教授)

単に「海洋への流出を減らす」という宣言であれば、「焼却しているから海洋流出していない」という論が成り立つというわけだ。

実効的な枠組みとは

ではどのような戦略、アクションプランを持てば前進したのか。高田教授は「プラスチック自体の使用量削減はもちろんのこと、最低限、必要なプラについては石油由来製品をゼロにすることを目指すべき。生分解性のバイオプラが望ましいが、まずはバイオ由来であることが最重要」と話す。

バイオプラであれば、必要に迫られ最低限を焼却したとしても原理的にはカーボンニュートラルとなる。一方で「今と同じ使用量のまま石油由来からバイオ由来に置き換えても森林の吸収量が足りないため、植林や林業の課題に向き合うことも必要」と高田教授は強調する。

「G20で『2050年までに石油由来のプラスチックの流通をゼロにする』ことをビジョンとして持てていれば前進を促せた。そのビジョン達成のためには地球規模の大きな視点で低炭素社会の構築を展望する必要がある。『海洋プラごみ』と問題を特化して考えても、根本的な解決は難しいが、物流や資源や環境の問題も含め、高エネルギー一点集中型ではなく低エネルギー分散型の社会を目指せば解決の見込みも出る」(高田教授)

「プラスチック・フリーに取り組む個人の努力にはもちろん意味があり、限界もある」と高田教授は話す。そこで消費者が声をあげれば各業界が動く。特に包装に関する業界は影響力が高く、課題解決への積極的な姿勢もあるという。

実は環境省は今年5月「プラスチック資源循環戦略」を打ち出し、マイルストーンの一項目として「2030年までにバイオプラ200万トンを導入」を明記している。「大阪ブルー・オーシャン・ビジョンよりも進んだ戦略。企業はこの流れに乗ればいいのではないか」(高田教授)

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