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読売が報道したソーシャルゲーム中の人の本音とは

コンプガチャ規制に関する報道をいち早く行った読売新聞が、また話題になりそうな記事を公開しています。

「コンプガチャ、カギはネトゲ廃人・搾り取り加減」

◆「数字がすべて」◆

 「掲示板に『最後のカードが当たらない』って書き込みが殺到してる。次は少し当てやすくしてやろう」

 東京・港区のソーシャルゲーム開発会社。冒険ゲームを管理するプログラマーの男性(30)はパソコンのキーボードをたたき、コンプガチャでアイテムが当たる確率を調整し始めた。

「『いいゲーム』と言えるかどうかは、どれだけアイテムを買わせるかにかかっている」と話す男性は、「決め手は『ハイジン(廃人)課金者』に、いかに長く続けさせるかだ」と明かす。「ハイジン課金者」とは、月に数万円は使うユーザーを指す隠語。ゲームにのめり込む様子を揶揄(やゆ)してこう呼ぶという。「課金者が全体の1割を超えるのが目標。搾り取り過ぎるとユーザーが離れてしまうから、加減が大切だ」

 社内のコンピューターが課金状況を常時監視し、多い時で1時間に1回、メールでデータが届く。「アイテム課金が足りない」「アクセスユーザーが少なすぎる」。急いでプログラムを書き換え、通常300円のアイテムを急きょ100円にするキャンペーンを始めることもある。「数字がすべてだ」と男性は話す。

http://www.yomiuri.co.jp/net/news/20120514-OYT8T00783.htm

当ブログが「コンプガチャは景品表示法違反」とエントリにしたのは、消費者庁が規制を明らかにした1ヶ月前の4月8日の記事です。コンプガチャ確率調整の記事は、さらにその前、3月18日の記事ですね。その時にも言及しましたが、「人の出入りを監視し、逃げられないように確率を調整する。「生かさず、殺さず」でカラカラになるまで絞り取る。」これは正真正銘の詐欺です。読売新聞だってそれがわかって書いてるとは思うんですが、恐ろしい内容をサラッと書いてしまっていますね。


■「ネトゲ」では調整は当たり前

「ガチャ」のシステム自体は、いわゆる「ネットワークゲーム」で普通の存在でした。ネットワークゲームでは普通に遊ぶ一般ユーザーの他に、RMT(換金市場)で稼ぐ業者まがいのユーザー、不正手段をしてでもレベルを上げ、イベントをクリアする重課金者など様々な人達がいます。ネットワークゲーム管理者は、一般ユーザーから上がってくる不正手段の通報や、業者のルール違反に、直ちに介入する必要があるんですね。そうでないと、一般ユーザーはどんどん流出し、結局サービスは長続きしません。ですからアイテムの出現率や、レベルの調整を入れることは、変なことでなく、むしろ管理者の通常業務だったんですね。

この頃のネットワークゲームの運営形態は、月額課金が主流でした。だからできるだけ多くの人に、長ーく遊んでもらう必要があったわけです。これが変質し始めたのが、現在のソーシャルゲームの形態である「基本料無料、アイテム課金」の「フリートゥープレイ」が主流になってからです。

まぁ、もちろん最初は「基本料無料、アイテム課金」もフツーの課金の一形態でした。圧倒的多数の無料プレイユーザーと、わずかな課金ユーザーに分かれたホノボノとした光景が広がっていたわけです。残念ながら最初はどの会社も、なかなか思うような収益を上げられず、零細運営が続いていました。収入のメインは、主に広告ですから、大きな収益になるはずがありません。旗色が変わったのは2008年。アバタービジネスが開花してからです。


■アバタービジネスで課金誘導に目覚めたソーシャルゲーム業界

「「こんなところに金脈が」 SNS各社「アバター」が大収入源」2008年12月11日

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若年層に人気の「モバゲータウン」では、同時期に46億700万円を売り上げているが、その内訳を見ると、広告が27.3%で、成果報酬型広告(アフィリエイト)が25.8%。確かに広告関連の収入が過半数だが、その一方で、44.9%を占めるのが「アバター収入」。つまり、利用者が支出する「着せ替え代」がSNSの運営を支えている形だ。

この背景について、「モバゲー」を運営するディー・エヌ・エー(DeNA)の広報グループでは、

「『着せ替え』という側面もあるが、アバターというのは、自らの感情を表現したり、他のアバターと会話をするためのコミュニケーションツール。デフォルト(初期設定)では半分裸に近いこともあって、(デフォルトのままだと)『人格に対して手を抜いている』と思われる文化が定着しているのでは」

と分析。

http://www.j-cast.com/2008/12/11032070.html?p=all

画像は、モバゲーに登録すると強制的に作られるアバターです。これ、作らないという選択肢はありません。そして見てのとおり服装が「下着」なんですね。モバゲーの広報が「半分裸に近い」と言及しているとおり、確信犯です。

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ちなみに左が、グリーの基本アバター。これももちろん強制的に作られます。でも一応タンクトップに半ズボンですから、モバゲーより良心的な気がします。

が、この服のアイテム名に注目してください。

[整形]スタンダードフェイス
[髪型]ぼさぼさヘア
[背景]背景
[インナー]くたくたの肌着
[ボトムス]ダサめのズボン

あっはっは。性格悪いですよね。なんでわざわざ、ぼさぼさだの、くたくただの、ダサめだのになっているんでしょうか?

実はアバターは、知り合い通しでコミュニティを組んでると、物凄く威力を発揮するんです。顔見知りですと、くたくただの、ダサめだのが、実生活でもリンクされてしまいます。そういう状態で1人でも課金を始めて、アバターの服を揃え始めると、全員アバターに課金し始めることになるんですね。

これはコミュニティが狭く、人間関係が制限されているほど起きやすい現象です。たとえば小学生から高校生までの未成年ですね。1日のほとんどを顔を突き合わせて生活しているコミュニティで、みんなでモバゲーやグリーを始めると、「ダサめのズボン」なんぞをアバターに着せるわけにいかないんですよ。そして1回でも課金してしまうと、もう歯止めが利きません。

しかも最新の服飾のアイテムは、ショップでは買えないのです。ではどうやって手に入れるのか?

「ガチャ」なんですねぇ。ご丁寧にガチャに入っている服飾アイテムは、カタログが参照できるようになっています。「あのスカートが欲しいな」とか「帽子がいい」などと思っても、なかなか出ないんですね。それだけでなく、上から下まで「ホスト系」とかシリーズを集めてコンプリートすると、レアアイテムが貰えるという、「コンプガチャ」の側面までありました。

 

アバタービジネスの莫大な収益によって、ソーシャルゲーム各社は狂ってしまいました。

「無料ユーザーに如何に課金させるのか?」

そのことだけを追求する、集金システムの道に突入してしまったのです。読売新聞の記事のインタビューのように、「決め手は『ハイジン(廃人)課金者』に、いかに長く続けさせるかだ」という、士農工商でいう農民を「生かさず殺さず」で搾取したそのままの発想が、ビジネスモデルになってしまいました。


■この道を選んだのは、ソーシャルゲーム各社自身

コンプガチャ規制では、「成長企業を規制で叩くな」的な意見をする人がいます。しかし規制上等のビジネスモデルを選択したのは、ソーシャルゲーム各社です。彼らは金という麻薬に狂ってしまった。それも金欲しさに老若男女、それこそ小学生だろうが中学生だろうが斬りつけて回る、最悪の麻薬患者です。

サイバーエージェントの藤田社長が言っています。「もともと高収益だったソーシャルゲームが、“異常”が付く高収益になった。みんなやらざるを得ない。」

彼らは「やらざるをえない」んです。なにしろ一瞬で数億儲かるんです。規制が入るのが半年遅れれば、数百億。1年保てば数千億稼げてしまう。その後の業界の信用低下や、規制の壁なんか目に入らないんです。金の麻薬患者だから。

 

おそらくまた、何かやらかすでしょう。そして再び規制の枠がかかるに違いありません。その時に批判を向けるべきは政府でも、官庁でも、批判的なブロガーでもありません。その道を選んだのは、ソーシャルゲーム各社自身です。

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