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NHKや安楽死を名乗る党派が出てくるワケ

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なぜ諸派の党派名はやけに分かりやすいのか

今回の参院選を見ると、諸派にくくられる政治団体の名前にこのポピュリズムがよく表れている。

たとえば「安楽死制度を考える会」や「NHKから国民を守る会」が、それだ。党派名がそのまま主義や主張を表していて有権者は判断しやすいだろう。しかし、これでいいのだろうか。

「安楽死制度を考える会」は、比例選1人、選挙区選9人を擁立した。法整備が進まない安楽死や尊厳死について「議論を始めよう」と主張している。

安楽死とは、毒物を注射したり、飲んだりして積極的に死を迎えることだ。安楽死法が制定されたオランダでも実施されることは少ない。これに対し、人工呼吸器や胃瘻、透析などの延命治療を中止して消極的に死を選ぶことを尊厳死と呼んでいる。重要なのは安楽死と尊厳死を区別することだ。

代表者の佐野秀光氏は政治団体「支持政党なし」の代表を兼任し、この党派は前回2016年の参院選では候補者を10人擁立し、当選者ゼロだった。獲得票数は、60万票余りだった。

「NHKから国民を守る党」(比例選4人、選挙区選7人)は、元NHK職員が2013年に設立した党派だ。「NHKに受信料を払わない方を全力で応援してサポートする」との政策を掲げ、契約者だけが視聴できる「スクランブル放送」の導入を訴えている。国会に議席はないが、31人の地方議員が所属している。

「安楽死制度を考える会」「NHKから国民を守る党」という党派名が有権者へのアピールだけを狙ったものだとしたら、ポピュリズムそのものではないか。

2億円超を集めた山本太郎氏の「れいわ新選組」

一方、諸派のなかで人気が出ているのが、44歳の参院議員で元タレントの山本太郎氏が旗揚げした党派の「れいわ新選組」だ。比例選で9人、選挙区選1人の計10人を擁立した。

過激な言葉と行動で独特的な存在感を示しており、山本氏がネットで呼びかけた寄付金は2億円を超えた。

4月の統一地方選では、東京や千葉、埼玉など全国で26人の区議、市議を誕生させた。6月現在で31人の地方議員が所属している。無党派層や若者の支持を得ているようだ。だが、沙鴎一歩は大衆に迎合しようとするポピュリズムとの関連も熟考する必要があると思う。

参院選がこの先数年の日本の進路を決める

7月4日付の朝日新聞の社説は「参院選きょう公示 安倍1強に歯止めか、継続か」との見出しを掲げてこう指摘する。

「首相が政権に復帰して6年半余。この選挙で問われるのは、異例の長期政権となった安倍1強政治のありようそのものだ」

「昨年の自民党総裁選で、首相は3選され、任期は21年9月まである。ここで歯止めをかけて、政治に緊張感を取り戻すのか。それとも、現状の継続をよしとするのか。有権者の選択が、この先数年の国の進路を決めることになる。」

安倍政権を嫌う朝日社説らしい指摘でもあるが、沙鴎一歩はこの指摘の通りだと思う。有権者はそこを認識すべきでる。

朝日社説は主張する。

「官邸主導の行き過ぎによる弊害が指摘される今、論ずべきはむしろ、首相による衆院解散権の制約や国会の行政監視機能の強化ではないか」

「首相は衆参の国政選挙で5連勝中だが、有権者は諸手をあげて支持しているわけではない」

安倍首相はこうした朝日社説の主張や訴えをどう考えているのか。

アベノミクスは成功してはいない

日本記者クラブ(東京・内幸町)で、3日に行われた党首討論会で安倍首相が記者が質問もしていないのに一方的にしゃべりまくるところなど、「1強」の驕りがそのまま出ていた。安倍首相を支持する一部のマスコミや支持者は、そんな安倍首相に拍手喝采するのだろう。

これではアメリカのトランプ氏とその支持者層との関係とまったく同じだ。ポピュリズムそのものではないかと沙鴎一歩は不安になる。

読売新聞の社説(7月4日付)は「きょう公示 中長期の政策課題に向き合え」との見出しを掲げてこう書き出す。

「深刻な人口減少にどう向き合い、国力を維持するか。不安定な東アジア情勢への対処も問われよう。与野党は現実を直視し、建設的な政策論争を展開しなければならない」

読売社説の性格上、のっけから安倍政権を擁護するのかと思いきや、かなり客観的である。しかも参院選の大きな争点を把握して具体的に主張していこうとの意思が表れている。

「憲法を論議する政党と、拒む政党のどちらか」

「安倍首相は『380万人の新しい雇用が生まれて、正規雇用の有効求人倍率は1倍を超えた』と述べ、アベノミクスの成果を強調した」

「企業業績や雇用が改善し、景気は緩やかに回復を続けているが、デフレから完全に脱却したとは言えない。企業収益を賃上げにつなげ、消費を増やしていく経済の好循環を実現するには、政策を補強する必要がある」

読売社説は「デフレから脱却していない」「政策の補強を求める」ときちんと安倍政権を批判している。これこそ新聞の社説である。ただし、最後に読売社説らしさが顔を出している。

「衆参両院の憲法審査会の機能不全が続く。首相は憲法を論議する政党と、拒む政党のどちらを選ぶかを参院選で問いたいとする」

「野党は、憲法改正手続きを定める国民投票法改正案の審議を求めたが、与党が拒んだ、と反論している。憲法本体の議論を先送りする理由とは言えない」

「議論を先送りする理由とは言えない」と野党を断罪するが、これでは安倍首相を驕り高ぶらせるだけである。刺激のある調味料を添加した言い方があるのではないか。

それができないのは、保守層の読者に迎合しようする姿勢があるからだろう。

(ジャーナリスト 沙鴎 一歩 写真=時事通信フォト)

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