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原発避難の高校生、ローマ法王と謁見「多くの福島の人々が傷つき、分断されています」現在も続く事故の被害を訴える

「日本政府と東京電力は事故の責任を認めず、そのことで多くの福島の人々が傷つき、分断されています。どうか福島に来て、人々のために祈り、励ましてください」。福島県いわき市から東京都に避難している高校生が実名で立ち上がった。高校2年生の鴨下全生(まつき)さんだ。

昨秋、法王に手紙をしたため送付。
3月、家族や支援者とバチカンへ

3月20日にバチカン(ローマ教皇庁)から招待され、家族や支援者とともに、ローマ法王(キリスト教・カトリックのフランシスコ教皇)と謁見。2011年から8年が過ぎても、原発事故後の被害が続いている現状を訴えたカードを手渡した。ローマ法王は今秋にも来日し、広島、長崎を訪れると報道されており、福島訪問については特に触れなかったが、鴨下さんの手を取り、何度もうなずきながら温かく励ました。



きっかけは首都圏への避難者を支援する「きらきら星ネット」(岩田鐵夫代表)や信者らの支援で、鴨下さんが昨秋、ローマ法王に手紙を送ったこと。放射能で環境が汚染された現状や、都内に避難後、学校などで受けたいじめなど、それまでの自らの体験を交えながら、原発事故がどれだけ悲惨な状況と被害をもたらしているのかをしたためた。約1ヵ月後に返事が来て、この日の謁見が実現した。鴨下さんは小学校5、6年生頃から「自分の体験や原発事故の被害を伝えなければ」と思い、全国各地で開かれた市民集会に参加。そのたびに会場で自分の体験を話してきた。また、国と東電に損害賠償を求める東京地裁での集団訴訟でも原告として証言した。だがその時はいずれも匿名で、写真撮影もNGだった。

匿名では何も変わらなかった
リスクあるが実名での訴えを決意

今回、原発の被害を訴える集会などに参加するため欧州を訪問することになり、あわせてバチカン訪問も実現したことから、実名で訴えることを決意した。「8年が経って、原発事故が風化してしまうのはまずいと思いました。実際には、何も解決していないし、今でも被害を生み出し続けています。それなのにいい加減な扱いで、まるで終わったことのようにされてしまうことだけは何としても止めたい。それまで匿名では発言していたけど何も変わらなかったので、もう実名で話すしかないと思いました。原発事故で、僕を含めたくさんの人が傷ついています。でも、被害を訴える人はとても少ない。公の場で被害を訴えることは、リスクもあるし、とても大変ですが、つらくても当事者が言わなければ、なかったことにされてしまうから」と鴨下さん。

「法王は優しい雰囲気でした。緊張しましたが、『福島のために祈ってほしい』と伝えることができました。法王との謁見や自分の発言で、何が変わるのかはわからないですが、世界や日本国内に対して何らかのインパクトがあればと思います。そして、原発被害が風化されてしまう前に、僕のように声を上げる人が一人でも増えたらいいなと思っています」

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同行した「きらきら星ネット」代表の岩田さんは「今回の謁見は多くのカトリック関係者の『つながり』で実現しました。国が福島原発事故被害者をさまざまな形で分断している中、それに対応するにはやはり『つながり』が大切なこと、また小さな声でも勇気をもって発信することの大切さを感じました」と、被災者、支援者が連携して国際社会に訴えることができた経緯とその重要性を語る。

被災者が自らの被害を訴えられない原発事故後の日本社会。廃炉作業や環境汚染、生活再建など、問題は長期化している。そして、そのツケが回されようとしている若者世代が実名で声を上げた。原因者である大人たちの行動が問われている。(写真と文 藍原寛子)

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