- 2019年07月08日 10:30
日本の財政が破綻しない数多くの理由 - 塚崎公義(久留米大学商学部教授)
1/2今回は、久留米大学商学部教授の塚崎公義が、財政破綻の可能性と増税の必要性について考えます。
消費税の増税が迫って来ました。「財政赤字が巨額だから増税しないと」という緊縮財政派の主張に基づくものでしょうが、増税しなくても財政は破綻しません。一方で、無理に増税して景気が悪化してしまえば税収は減り、景気対策は必要となり、財政はむしろ悪化してしまうかもしれません。
そこで今回は、増税の必要性を考える一助として、増税しないと財政が破綻するのか否かを考えてみましょう。

日銀に借りる選択肢は考えない
理論的に日本の財政が破綻することはあり得ません。政府が日銀から借金して国債を全部償還してしまえば良いからです。しかし、それはハイパーインフレをもたらしかねませんから、本稿では考えないことにしましょう。
日本の家計金融資産は1800兆円ありますから、これに60%の資産課税をすれば、1000兆円の借金が返せます。しかし、これも暴動が起きそうですから、本稿では考えないことにしましょう。
では、1%の資産課税を60年間課すというのは、いかがでしょうか。あるいは、相続税率を100%にすれば、数十年の間に家計金融資産はすべて政府に入るはずです。それなら一つの選択肢でしょう。
ただ、本稿では、そうしたことも考えないことにしましょう。政治家には資産家が多いので、資産課税には積極的でなさそうですから。しかし、それでも財政は破綻しないのです。
投資家が日本国債を買うから政府は破産しない
日本人投資家にとって、日本国債は安全な投資対象です。円の資産を持つなら、日銀やメガバンクに預けるより日銀券で持つより安全です。円ではなく外貨で持つならば、たとえば米国債は日本国債よりも信用リスクは小さいかもしれませんが、今度は為替リスクを負うことになりますから。
そこで、投資家たちは活発に日本国債を買っているわけです。この点については拙稿『財政破綻を予想する人でも日本国債を買っている理由』をご参照いただければ幸いです。
投資家たちが日本国債を買っている間は日本政府は破産しません。そのことを知っている投資家たちは、「他の投資家も買うだろうから日本政府は大丈夫だろう。それならば自分も日本国債を買おう」と考えるわけです。したがって、余程のことがない限り、財政は破綻しないでしょう。
10年後には容易に増税できる時代が来る
少子高齢化による労働力不足は、今後も一層深刻化して行くはずです。10年後には「景気が良いと超労働力不足、悪くても少しは労働力不足」といった時代が来るでしょう。
そうなれば、「増税して景気が悪化しても失業が増えないから、気楽に増税できる」時代になるわけです。
今の増税は「増税で景気が悪化して失業が増えたら、失業対策の出費が嵩むから、財政はむしろ悪化しかねない」といった反対を受けているわけですが、それがなくなるわけですね。
もしかすると、労働力不足による賃金上昇がインフレをもたらすため、増税でわざと景気を悪化させてインフレを止める必要が出て来るかもしれません。そうなれば、増税が財政再建とインフレ抑制の一石二鳥になるわけですね。
数千年後には、問題は自然に解決する
もしも、増税が何らかの事情でうまく行かず、財政赤字が続いてしまっても、大丈夫です。数千年後には、問題は自然に解決しますから。
一人っ子と一人っ子が結婚して一人っ子を生むと、その子は大勢から遺産を相続することになります。そして、ついに日本人が最後の一人になると、その子は家計金融資産1800兆円を相続し、その子が死ぬとそれが国庫に入ります。つまり、何の問題もなく財政赤字問題は自然に解決するのです。
財政赤字は我々が作った負担を子供達に引き継がせる「世代間不公平」だと言われます。狭い視野ではそうですが、子供達が相続する遺産まで考慮すれば、世代間不公平など存在しないのです。
存在しているのは、遺産が相続できる子と、できない子の「世代内不公平」なのです。そこで筆者は相続税の増税を提唱していますが、本稿の主題から逸れますので、この点は触れずにおきましょう。
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